私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス

文字の大きさ
41 / 42

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになりました!

しおりを挟む
 話を終えたヴァルターは荷物の中から一枚の絵を取り出し、コルネリアに手渡す。それは古びた絵で、コルネリアたちが川で遊ぶ姿が描かれていた。

「き、気分を悪くしただろうか?」

「そんなことはありませんわ!ごめんなさい。思い出せなくて」

「そうか」

「でも、嬉しいですわ」

 コルネリアは手渡された絵をぎゅっと抱きしめて、嬉しそうに微笑む。嫁いだその日から、何でヴァルターがあれほど優しかったのかが不思議だった。他の聖女が嫁いでもこれだけ優しいのか、と胸が痛んだこともあった。

「法国から聖女が来ると聞いたとき、正直君が来ると期待はしていたが、本当に来てくれるとは思ってなかった。喜びすぎてマルコやクルトにからかわれたくらいだ」

 コルネリアが来ると知ったヴァルターは、ドキドキしながら迎えに行く馬車の準備を念入りにした。コルネリアが座るかもしれない、と布から自分で厳選したほどだ。

「他の方が来たら、どうなさるおつもりでしたの?」

「そうだな。帝国との戦争が完全に終結すれば、法国へ返そうと思っていたからな。おそらく夜の営みはせず、できるだけ快適に過ごしてもらうようにはしたと思う」

「夜の営みを?」

「ああ。離婚をする前提であれば、相手にとってもそれがいいだろう」

 うんうん、とうなずくヴァルターにコルネリアがさっと顔色を悪くする。

「わ、私とそういったことがないのも、もしかして?」

「それは違う!」

 コルネリアの勘違いに気が付いたヴァルターが大きな声を出し、コルネリアの両手をぎゅっと握る。

「結婚式で女神様に君を幸せにすると誓ってからにしたい。大切にしたいんだ」

 ヴァルターが真っ赤な顔でそう言うと、コルネリアもぼっと頬を赤く染めた。

「そうしないと、女神様に嫌われて君を失ってしまう気がするんだ」

「ラウラ姉さまは結婚式前には、そういうことをしてらっしゃったわ」

(――大切にしてくださるのは嬉しいですけれど、私はいつでも大丈夫ですわ!)

「ヴァルター様が女神様に嫌われたとしても、私が何とかしてみますわ」

 きりっとした表情で言ったコルネリアに、思わずヴァルターが噴出した。

「君は相変わらず、見た目に似合わず男前なことを言ってくれるな」

「お嫌ですか?」

 コルネリア自身見た目と中身にギャップがあることは自覚していた。嫌だったのだろうか、と不安そうにするコルネリアに、ヴァルターは笑顔で首を振る。

「まさか!そこにも俺は惚れたんだ!」

 そう言うと座っていたコルネリアを抱きしめて立ち上がり、抱っこしたままくるくると回った。わわ、とバランスを崩しかけたコルネリアが、慌ててヴァルターの首に手を回す。

「ヴァルター様!危ないですわ!」

「すまん。すまん。嬉しくてじっとしていられないんだ」

 そう言うとヴァルターは足を止め、ちゅっとコルネリアの頬に軽いキスを落とした。

「愛してる、コルネリア」

「私も。愛していますわ」

 にっこりと見つめあい、自然と唇を重ねた。そっとコルネリアはキスをしながら目を開け、ヴァルターの精悍な顔を見つめる。

(――二束三文で売られたときはどうなるかと思いましたが、私は今が一番幸せだわ!)

「ん?どうした、コルネリア?」

「いいえ。なんでもありませんわ!」

 視線を感じたヴァルターが唇を離して問うと、コルネリアはにっこり笑顔で答えて顔をヴァルターへ近づけた。

 

 一か月後。ネバンテ国で盛大に二人の結婚式が行われた。二人の幸せそうな姿に、国民や各国の王、聖女から祝福の声が届いた。
 
 聖女を王妃とし、女神に愛されたレオンハルトの王位を支持したネバンテの国王ヴァルターは、愛妻家として広く知られている。二人はそれこそ、死が二人を分かつまで仲睦まじく過ごした。

「ヴァルター様。私、幸せですわ!」

「そうか。俺も君がそばにいてくれて嬉しいよ」

 かくして、私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになりましたとさ。おしまい。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】アラフォー聖女、辺境で愛されます。~用済みと追放されましたが私はここで充実しています~

猫燕
恋愛
聖女エレナは、20年間教会で酷使された末、若い新聖女に取って代わられ冷淡に追放される。「私の人生、何だったの?」と疲れ果てた彼女が流れ着いたのは、魔物の呪いに苦しむ辺境の村。咄嗟に使った治癒魔法で村人を救うと、村の若者たちに「聖女様!」とチヤホヤされる。エレナの力はまだ輝いていた――。追放されたアラフォー聖女が、新たな居場所で自信と愛を取り戻す、癒やしと逆転の物語。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

『義妹に婚約者を譲ったら、貧乏鉄面皮伯爵に溺愛されました』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」 そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。 代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。 世間は笑った。けれど、私は知っている。 ――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、 ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚! 鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...