これは報われない恋だ。

朝陽天満

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450、なんだただのミーハーか

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 草花薬師のプレイヤーに訊くと、すでに中和剤が切れてしまって一旦最初の村に戻ろうと言ってた矢先にさっきのカマキリの魔物に会ってしまったらしい。

 実を食べると毒性が強くなるらしいからそれを阻止しようと実を潰したら、魔物が怒りだしてああなったんだとのこと。実を潰した匂いで獣人さんは具合が悪くなって動けなくなるし、戦闘職の人たちは中和剤がなくなって中毒症状が出てきてヤバかったらしいしで切羽詰まっていたらしい。

 俺はインベントリから中和剤を取り出すと、軽度中毒症状に陥っている草花薬師に渡した。

 そしてぐったりとしている獣人さんの所に走る。

 獣人さんたちにはヒイロさんが作った中和剤を渡して、回復させると、今度は前線に向かった。

 走っていると、足元の蔦がサアッと枯れて行くのが目に入る。

 回復した草花薬師の人が蔦に枯死薬を使ったらしい。

 蔦が枯れたことで、蔦と繋がっていた部分の実は枯れて、匂いが大分抑えられたのが救いだった。

 さっきまでこの魔物と戦っていた人たちはいったん後ろに引いて、ヴィデロさんと『マッドライド』が前に出ていった。

 その間に俺は回復回復。

 ムコウダさんが魔物のヘイトを引き付けるスキルを使って、その間に他の人たちが攻撃する。連携がかっこいい。

 ミネさんは魔物よりも周りの人の回復に当たった。俺が中和剤で中毒症状を消したらミネさんが回復魔法を飛ばす。回復したプレイヤーは剣を構えて前線に戻っていった。

 乙さんはつぎつぎ魔法の矢を飛ばして援護している。



 戦闘参戦から程なくして、魔物は光となって消えていった。

 猛毒にやられた人には毒消しを渡して、まだ残る実の匂いで中毒になった人には中和剤を配って、草花薬師にアイテムをわけた。

 クエスト欄を見ると、バイ村のパーセンテージは82%まで増えていた。ってことは、あと一か所か二か所くらい蔦があるってことだ。



「二手に分かれるか?」

「そうだな。村の向こう側はもう見たから、今度はこっち側だ。俺たちはこっちから森に入るから、お前らは向こう側を頼む」



 プレイヤーが指さした方向に顔を向けて、地図と照らし合わせながら確認する。



「俺らはこっちを行くから、マック、門番さんはそいつらと向かえよ。そっちの薬師、俺らと行くぞ」



 ハルポンさんの指示に、誰も文句を言う人もなく従う。

 『マッドライド』と別れた俺たちは、獣人さんの鼻を頼りに、道なき道を進んだ。

 途中出てきた魔物をヴィデロさんが先制し、その状態に顔を顰める。



「中毒症状が出てる」

「だね」



 切った場所から出ている血がドロドロしているからすぐわかる。

 目も濁りきってるのがかなり気持ち悪い。

 全く痛みを感じていないみたいで、自分が切られたこともわかっていないかのように、俺たちを見下ろしていた。



「何なんだよこいつら。ほんと気味悪いな!」



 一緒に歩いていたプレイヤーの一人がぼやく。

 まだそこまで中毒の進行はしてないらしく、魔物はしっかりと俺たちに狙いを定めていた。



 一斉に攻撃しているのを見ていて思う。

 ヴィデロさんの強さがやっぱりというか他のプレイヤーより全然強い。

 雄太たちとかと一緒になることが多かったせいかあんまり気にしてなかったけど、なんていうか、俺の周りにいるプレイヤーって強かったんだな、なんて改めて思った。

 ここにいるプレイヤーさんたちも俺なんかより全然強いんだけどね。

 一撃で与えるダメージ量が全く違う。

 プレイヤーたちもヴィデロさんの攻撃をたまに手を止めて「すげえ……」なんて見惚れてるし。ヴィデロさんは凄いよ。かっこいいし強いし。好き。

 そこまで苦労することなく魔物を倒し終えた俺たちは、さらに先に進んだ。そして見つけた、リルの蔦。

 少しだけ食べカスがあったから、もしかしてあの魔物が食べたのかなと思いながら枯死剤で枯らす。

 枯らしたことで、またも村パーセンテージが増えた。残り5%。

 獣人さんが顔を上げて、辺りを見回して、「ここら辺にはもうねえな」と呟く。

 あと5%は蔦か、魔物か。なんて思ってる間に100%になった。『マッドライド』たちがやってくれたんだ。



「村に戻ろう」



 ステータス欄を閉じてヴィデロさんにそう言うと、ヴィデロさんは「もう大丈夫なのか」とホッとしたような顔をした。







「さっき使ったアイテム、あれなんだったんだ? あの一撃で俺、HP削り取られたんだけどよ」

「俺が師匠に教えて貰った調薬アイテムです」

「すげえなあ。生き返るアイテムあったんだ。どこかに売ってねえの?」

「まだ売りに出してはいないです」

「そっか。それにしても、門番さんほんと強すぎな。どうやったらそんだけ強くなれるんだ?」

「毎日の鍛錬」

「鍛錬か。だからそんなガタイしてるんだな。ところでお二人さん、何で獣人の村に来てるんだ? 指名依頼受けたのか? 門番さんも実は冒険者ギルドに登録してるとか? 薬師マックは草花薬師だったのな。あ、わかった。薬師マックが指名依頼でここに来ることになったから心配でついてきたんだろ。当たりか?」



 さっき蘇生薬を使ったプレイヤーが、俺たちの隣に陣取って質問攻めにしてきた帰り道。俺とヴィデロさんが困った顔で視線を合わせた瞬間、その人のパーティーメンバーに「お前突っ込みすぎ! 遠慮しろよ!」「そうよ、邪魔しちゃダメでしょ。共闘出来て薬師マック特製のポーションを貰っただけでもありがたいんだから!」と引っ張られていた。

 ありがたいって……。なんか俺が偉い人か有名人みたいな扱い受けてる気がする。

 苦笑しながら村に戻っている途中、『マッドライド』たちと合流出来た。



 取り敢えずオランさんの所に報告に行くぞと獣人さんが森の中を先導する。

 後ろでは俺たちにひたすら質問してきた人が「どうやったらそこまでレベル上げれるんですか? つうかその鎧、もしかして長光製? すっげかっこいい! やっぱトップランカーは違うなあ」なんて騒ぐ声が聞こえてくる。ああ、彼はミーハーなんだな。そう結論付けて、俺たちはオランさんのもとに向かった。



 ヒイロさんの村、もといナム村に戻ってくると、他の所を殲滅していたプレイヤーたちもその村に集まっていた。

 中には『白金の獅子』と『高橋と愉快な仲間たち』もしっかりといて、俺とヴィデロさんを見るなり、よ、と手をあげた。



「皆駆り出されてたんだ」

「まあな。モロウには世話になってるからやっぱ手伝わねえとだろ。ギルドから指名依頼入ったしな。マックは……いるのは知ってた」

「あのさ、知ってたって」

「もしかしたらこのクエストの原因がマックなんじゃないかって思ってた」



 ニヤリと笑ってそんなことを言う雄太に、ヴィデロさんが笑いをこらえている。

 「ここまでマックのことを把握してるなんて、ちょっと嫉妬するな」なんて笑いながら呟かないでヴィデロさん。

 でも全然嫉妬してる顔じゃないよその顔。楽しんでるよね。そんな顔も好き。



「で、婚姻の儀は」

「次の機会に」

「しばらくは神殿がいっぱいだから、少し待ってた方がいいかもな」

「なんで?」



 雄太の言葉に、そういえば神殿がいっぱいだったから婚姻の儀を受けるのを諦めて獣人の村に来たんだってことを思い出した俺。

 何であんなに神殿がいっぱいだったんだろう。

 雄太は理由を知ってるみたいだけど。



「あのね、皆、成人の儀を受けて大人のアイテムを買いたいのよ。爆発的ブームになっちゃって。だからきっとトレに戻ったら、店主さんに大人のアイテム納品お願いされると思うわよ」



 海里が真面目な顔でそんなことを言うので、思わず「へ?」と間抜けな声を上げてしまう。

 大人のアイテム、って、アレだよね。固形媚薬とか潤滑剤とか。何でまたそんなピンポイントの物がブームになってるんだろう。世の中の流行はわからない。





 ナム村の広場に、獣人の村に助っ人に来た人たちが集まった。 

 そして周りには、今まで洞窟の中で石像になっていた4人の獣人さん、一緒に探索してくれた獣人さんが立っている。

 正面には、用意された椅子に座ったオランさんと、発案者のエミリさん、そしてヒイロさんがいた。



「皆のおかげで、我が獣人の住処が平穏を取り戻した。感謝する」



 オランさんが口を開いた瞬間、ピロンとクエスト欄に通知が来た。クリアだ。 

 途端に皆が「おおおおお!」と歓声を上げる。よかったな、と口々に言いあうプレイヤーと獣人さんたちの間には、種族的な隔たりは全くなかった。

 長かった一日がようやく終わった、とホッと息を吐いた俺は、裾をくいくいと引っ張られていることに気付いて、そっちを向いた。

 ヒイロさんだった。



「なあマック、モントと一緒にちょっと来てくれねえか?」

「あ、はい」



 ヴィデロさんは獣人さんたちに捕まっていたので、ヒイロさんの所に行ってくると声を掛けてから、モントさんを探す。

 草花薬師の集まっていたところに一緒にいたモントさんに声を掛けると、モントさんは頷いて俺の後をついて来てくれた。

 ヒイロさんとモントさんと一緒にヒイロさんの家に行くと、ヒイロさんは徐にドアに鍵をかけて、外の様子を窓越しに見てから、カーテンを閉めた。

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