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541、リザの生態?
しおりを挟む「すげえな……一体どんな体のつくりをしてるんだ……」
リザの一連の行動を見ていたセイジさんは、感嘆の声を上げた。
「リザは聖地で生まれた聖獣の赤ちゃんだって言われたぜ。そのうち育てば話し出すって言われたけど、ついさっきから話し始めたんだ。可愛いだろ」
「可愛いどころか……あの硬い魔物を喰っちまうなんて、逆に怖いぜ」
「確かに言われてみれば。俺らの手なんてバリバリ食いそうだよな。でもまあ、食わねえし」
「ほう、確信してるみてえだな」
「ああ。普通の魔物は絶対に口にいれねえのは今まででわかってる。食うのは、花とか鉱石とかあとはさっきの茶ばっかりだ」
なるほど、と皆が頷く。
ってことは、石っぽい魔物じゃないと食べないんだ。
でも花を食べるのは、もしかして嗜好品?
ますます生態がわからなくなってくるね。そのうちしっかりと話せるようになったら教えてくれたりするのかな。
自分のことが話題にのぼってることに気付いたのか、リザはエリモさんの首に巻き付いて、チロチロと舌を出した。
「なあリザ。さっきの、何で食っちまったんだ?」
『ゴハン』
「ご飯? いつもくってる花とか石とか茶とかは?」
『オイシイノ』
オイシイノ、と応えながら、ちらりとこっちを向くリザ。
えっと、もしかして、俺は美味しいものを出す人って認識かな。そうかな。知らない間に餌付けしてたってことか。リザは可愛いから否やはないけど。
「魔物はご飯で美味しいのは嗜好品か何かなのか?」
『ワカラナイ』
「そっかわからねえか。じゃあ、理解したら教えてくれな」
リザの喉を指で擽りながら、エリモさんがにっこりと笑う。それにつられるように、リザの目も細くなった。
なんてやってる間に、次の魔物が顔を出した。今度は昆虫の魔物だ。立派な角がカブトムシを彷彿とさせるけれど、大きさが俺くらいでかなり見た目的にヤバい。ユイがいたなら瞬殺されそうな魔物だった。すぐさまヴィデロさんが剣を抜き去り、一撃で魔物を半分にする。魔物はキラキラと光になった。ユイじゃなくても瞬殺だった。
セイジさんが口笛を吹く。
「すげえな。ここまで鮮やかとは思わなかった。さすがアルが指名するだけある」
「魔物が弱いだけです」
キリッとヴィデロさんが返すけど、今の魔物、HPバー黄色だったよ。二本分のHPを一撃で刈り取ったんだよ。俺から考えるともう別次元の強さと言っても過言じゃないよ。
その後は魔物に襲い掛かられ、囲まれたりしながらも、誰一人致命傷を負うことなく先に進むことが出来た。
俺なんかとは比べ物にならないくらいのバフがつくセイジさんの魔法陣魔法を密かに参考にさせて貰ったり、短剣を構えて聖魔法を唱えたり。
でも聖魔法を唱えると、攻撃をしていたはずのリザがこっちに来ちゃうのがちょっと困る。
一度攻撃の聖魔法を唱えた時、リザが飛び出して一緒になって魔法を受けちゃって、めちゃくちゃ焦った。けれど、リザは満たされたような顔をして、全くダメージを受けていないことが判明した。聖魔法は吸収する子なのかな。
それからは躊躇いなく聖魔法を打つようにしたんだけど。
後方で魔法使いさんとセイジさんと並んで魔法攻撃を繰り返す。
前衛は崩れることなく、後ろに攻撃を通すこともなく、安定の強さで魔物を屠っていく。
リザもちゃっかり前に陣取っていて、岩系の物が出て来た瞬間噛みついていた。他の人たちが攻撃を仕掛ける前にものすごいスピードで食いついていくので、リザの獲物は手を出さないという暗黙の了解が出来上がってきているくらいだ。
そしてリザは、魔物を食べると必ず聖水茶を所望した。もしかして不味いから口直しとか。だったら食べなきゃいいのに。と思ったら、エリモさんも思ったらしく、リザに「腹壊さないか?」と訊いていた。いやならぺっしなさいとか。
そんなエリモさんに、リザは一言。
『ゴハン』
やっぱり意味が解らなかった。
魔物を蹴散らしながら進んでいくと、とうとうボス部屋に付いた。
明らかに今までとは違う雰囲気の岩場があり、感知で向こう側からビンビンに強い魔物がいることが伺える。
「さあてと。ここまでは順調すぎるくらい順調だったな。ほんとお前ら強すぎだろ。俺の出番ほぼなかったぜ」
コキコキと首を鳴らしながら、セイジさんが視線を一巡させた。
ちょっとした怪我を自前のハイポーションで治していた皆は、セイジさんの言葉に苦笑した。
確かに。俺は聖魔法オンリーでほぼハイパーポーションを出さなかった。聖魔法は回復する魔法もあるからね。それを使ったらすぐ治るような怪我しかする人がいなかった。
魔物はきっと強かったんだと思う。壁の色が青から緑に変わった辺りで魔物のHPが一段階高くなったから。それでも前衛組4人プラス一匹でほとんどの魔物を倒しちゃったし。確かに後衛組はほぼ出番はなかった。
前衛組と言えば、クラッシュもしっかりと前衛組として善戦していた。
剣に魔法を纏わせて、魔法剣として魔物をザクザク切っていたのを見た時は、皆が手を止めてびっくりした顔をしていた。
普段のクラッシュからは想像もつかない攻撃力だったから。しかも魔物の弱点を即座に見抜き、それに合った魔法を剣に掛けていたから、魔物に対する知識もさらに増えたと思われる。まるでヴィルさんみたい。
そう呟いたら、こういうのを覚えたのは、ヴィルさんと一緒に色々歩いた恩恵なんだそうだ。
魔物が出てくるたびにその魔物の特性と弱点を説明してもらっていたら、いつの間にやら魔物の弱点が見えてくるようになったとか。うわあ、って感じだ。普通だったら毎回の説明がまだるっこしいとか感じるのかもしれないけど、クラッシュはそれを面白いと感じたらしい。さすが知を求めただけはある。実は頭いいんだよね。赤ちゃんの時から記憶が鮮明だっていうし。
「とりあえず皆の力を底上げしとくか」
セイジさんは無造作に魔法陣を描いた。それがそれぞれに飛び、ステータスに補正が付く。
体力、魔力、器用さ、防御力にかなりの補正が付いて、皆の口から歓声が上がる。
「今の魔法陣、右下のワードってなんて描いたんですか?」
「右下……『対外魔力吸収』だな」
「ありがとうございます。俺も使えるかな」
今必死で覚えた魔法陣を描くと、魔法陣は途中で霧散した。難しい。どこかのワードが間違えたのかな。セイジさんって古代魔道語に精通してるよね。俺が知らない単語をバンバン使ってるから、見ただけじゃ覚えきれないよ。
「今のは左外側の言葉が間違えてたな。『屈折割合減少』ってのが『折衝割合』なんていう変な言葉になってた。確かに単語は似てるんだけどな」
「まだまだ勉強しないとですね……」
間違えた文字を指摘されて、思わずため息が出る。
すると、セイジさんがポン、と肩に手を置いた。
「これだけ書けりゃ上出来だ。これからいくらでも学べるんだ。応援するぜ」
「ありがとうございます」
「それよりも俺はマックの聖魔法の方が気になるんだけどな。かなりすげえ聖魔法使ってなかったか?」
ちらり、と腰の剣に視線を向けられる。
「あの時貰った短剣に聖剣の宝玉を付けて貰ったら聖短剣になっちゃったんですけど。俺もともとあんまり魔法の才能がないみたいで、これがないと聖魔法が発動しないんです」
剣を抜いて見せると、セイジさんはほう、と息を吐いた。
「手にしてみてもいいか訊こうかと思ったけど、どうも拒否られてるみてえだな。持ち主を選ぶ剣だな」
「わかるんですか? これ『ルミエールダガールーチェ』っていう名前なんです。希望の光を意味するらしくて」
「ルーチェ……」
セイジさんは短剣の名前を聞いて、口を噤んだ。そして、ボス部屋の方に視線を向ける。
もう一つで透明なオーブは揃うわけで。でも本当は一つクラッシュが持ってるわけで。たとえ今回のボスが落としたのが違うオーブだとしても、セイジさんの望んでいた全ては揃うわけで。
ちらりとクラッシュの方を見ると、クラッシュもセイジさんと同じような顔つきでボス部屋を見つめていた。
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