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連載
726、上級錬金クエスト
しおりを挟む『【NEW】上級錬金アイテムを納めよう
依頼人の目の前でいずれかの上級錬金術を成功させ
上級錬金で出来上がったアイテムを納品しよう
タイムリミット:5時間
クリア報酬:上級錬金用素材 蒼獣卵専用アイテム レシピ
クエスト失敗:時間内に錬金成功しなかった 納品が出来なかった 納品物が規定以下の物だった 蒼獣専用アイテム入手不可』
クエスト欄を開いてみると、レガロさんが言った言葉がそのまんまクエストになっていた。仕事が早い。
俺は目の前に置かれた籠の中に入っている卵を手で撫でながら、インベントリから上級錬金のレシピが書かれているレシピ集を取り出した。
工房に置いてある錬金用素材を思い浮かべながら、ページを捲る。
真っ白だったはずの紙が埋まっているところは、素材も手に入れてあるってことだから、ととりあえず出来そうなアイテムを探していく。
もしかして5時間っていうタイムリミットは、魔大陸に素材を取りに行く時間とかも入ってるんだろうか。そうなんだろうなあ。
とりあえず上級錬金術の素材ってほとんどが魔大陸産なんだもん。辺境で入手したりエルフの里に行く途中の道で手に入る素材は、ほぼ普通の錬金術用だから、使うとしてもメインは魔大陸産。
これは雄太たちが手伝ってくれる余裕がなかったら一気に難しくなるクエストかもしれない。
とにかく、魔大陸の薬草や調薬にも使える素材はあらかた使っちゃったから。
何か出来ないかなあ。
としばらく探していて、ふと手が止まる。
すべての素材の名前が並んでいて、すぐに作れそうな物があった。
何が出来るのかは作ったことが無いからわからない。でも、女神がいたところにあった素材を使って作れるもの。
女神の力を、とレガロさんは言ってたから、多分普通の錬金を上級錬金釜でやったところで納得してもらえないと思う。
ってことは、これくらいのレベルのアイテムじゃないとだめかな。
まだ女神錬金術師になってレベルがほとんど上がってないけど出来るかな。
俺は素材をチェックすると、顔を上げて、レガロさんに「素材を取りに行ってきます」と声を掛けた。
その場で工房まで転移して、選んだページに載っていた素材を次々取り出す。数はそれなりにあったけれど、また取りに行くのは多分無理な素材。あそこに女神のいる所に通じる道があったとしても、それはやっぱりブレイブとユイがいないと行けないという代物だから。錬金失敗イコールクエスト失敗ってことだ。
なんとしてでも成功させて、ブルーテイルのふわふわベッドを手に入れるぞ。
工房で密かに気合いを入れると、俺はドイリーを巻き直して呪術屋に跳んだ。
マジックハイパーポーションを数本用意して、テーブルに上級錬金釜をセットする。
透明な釜は、前のものと形はほぼ変わらないのに、とてもスタイリッシュに見えた。
素材を並べてレシピと交互に確認して、「よし」と気合いを入れる。
MPを注入し始めて、はて、と首を傾げる。この間は二回分のMPで満たされた釜は、一度MPを回復してからさらにすべてを注ぎ込んでも、まだ満たされていなかった。いまだにMP注入になる。何でだ、と思いながらマジックハイパーポーションを飲み、もう一度MPを入れる。ギリギリ残り19までMPを注いだところで、ようやくMP注入欄がなくなった。
ホッとしつつMPを回復させる。ほんと、すぐ揮発するアイテムで良かった。普通にこの瓶を三本も飲んだらお腹ちゃぽちゃぽ音がしそうだもん。
空の瓶は、すぐさまレガロさんが片付けてくれたので、そのまま素材を手にする。
一つ入れて撹拌棒で掻き混ぜ、消えたら次。やっぱり今回の釜は筋肉が唸らなくてもすんなり溶けていく。
並べたすべての素材が溶けた辺りからようやく重くなっていく棒を回して、粘度の高くなった謎液体を棒に絡めていく。
棒に絡められた謎液体は、そのまま凝縮するようにまとまっていき、最後、カラン、という音と共に、透明な釜の底でキラキラと光っていた。
「出来た」
周りから見える釜って実は作りやすいのかも。状態を逐一確認できるから。
これはいい釜だな、と思わず顔を綻ばせながら中から出来上がった宝石の様なそれを取り出した。
鑑定眼で見てみると『乙女の雫:女神の祈りの染み込んだ魔石 装飾用素材 そのまま身に着けても何も効果はない レア度8 魔力値1208』となっている。魔力値。何この魔力値。しかも今まで見てきた中で断トツ一位のレア度。でもそのままじゃ使えないんじゃ持っていても意味がない系素材だね。
謎液体そのままの、薄い紫色をした『乙女の雫』という名の魔石は、そのままでも十分見た目が楽しめるような綺麗さだった。
「素晴らしいものを見せてもらいました。マック君なら使いこなせるとは思いましたが、ここまで女神の御使いが手に馴染んでいるとは、少々驚きました」
「手に馴染んでる? でもこれを使ったの、まだ数回なんですけど」
「その女神の御使いというものはとことんまで己に忠実でして。例え欠片の一つでも、馴染まないと多大な力を必要とするのです。前に使っていた釜は、最初は他の方が所有していた物ですので、使えはしてもなかなかに不便だったでしょう。しかし、今回は初めからマック君の手に合わせて作られたようなものですので、馴染むのは早いはずです。その女神の御使いも、あなたのことをとても信頼しているように見えますし。私には御使いが歌っているように聞こえます」
馴染んでいる、という所に、なんていうか、ストン、と何か納得できた。
そっか。だからこんなにもスムーズに掻き混ぜられるのか。するすると錬金できるのは、俺と釜との相性とかそういうのだったんだ。確かに、前の釜はサラさん仕様で滅茶苦茶重くなったりしてたけど。サラさん一人で掻き混ぜられるのは腕力が凄いからだと思ってたら、相性の問題だったんだ。ちょっとホッとした。
それにしても錬金釜が歌ってるって。それってレガロさんにだけ聞こえるアーティファクトアイテムの声ってことかな。
なんとなくだけど、あの女神の祈りがそのまま釜から聞こえてるんじゃないかな、なんて思ってしまった。
俺はしげしげと出来上がった魔石を見たあと、それをそっとレガロさんに差し出した。
「お納めください」
俺の手の上に載った薄い紫色の魔石を見下ろしたレガロさんは、少しの間それを手に取ることなく、俺を見下ろした。
じっと、深い深いその瞳が俺を射抜くように見る。
レガロさんはまるで俺のすべての思考を読み取ろうとしているかの様に視線を俺に固定し、無言の時間である一瞬がとても長い物に感じた俺の眉が寄った瞬間、フッと笑った。
張りつめていた空気が霧散した気がした。
「確かに、いただきました」
恭しく俺の手から両手で魔石を受け取ると、レガロさんは綺麗な笑顔でクエストクリアを宣言した。
「思った以上に素晴らしい物を納品していただいてしまったので、私から過剰分をお渡ししますね」
レガロさんはそう言うと、最近入るようになったという素材を取り出してきた。
それは魔大陸産の錬金用素材で、クラッシュが買い取ったそれをレガロさんが入手したんだそうだ。
既にクラッシュには専属買取契約を持ちかけたそうで、もし魔大陸の錬金素材を手に入れたいときは店に買いに来てください、と言われてしまった。
ぜひ買いに来させてもらいます。ある物全部売ってください。
勢い込んでそう言うと、レガロさんは笑いながら「喜んで」と、俺が貰った物以外の在庫を全て俺に売ってくれた。ホクホクだ。
「それとですね。最近とても素敵な物を入手したのですが、きっとマック君なら作れるんじゃないでしょうかと思いまして」
そう言ってレガロさんが出してきたのは。
前にエルフの森で長老様お付のエルフさんが作っていた和洋折衷のお菓子のレシピだった。
「最近里帰りいたしまして。そこで出会ったお菓子がとても秀逸だったのです。満足のいくものが完成したそうで、そのレシピを頂いてきてしまいまして。素材はエルフの里限定になるようですが、マック君ならきっと大丈夫だと思いまして」
差し出されたレシピは全部で5枚。
俺は喜んでそれを貰うことにした。錬金レシピかと思ったら、クリア報酬はお菓子のレシピだったよ。嬉しい。ヴィデロさんに作ろう。でも、このレシピだともしかしたらヴィルさんの方が喜ぶかもしれない。
そんなことを思いながら、俺は籠を片手に工房に戻ったのだった。すごくいい籠が手に入ってよかった。
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