これは報われない恋だ。

朝陽天満

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番外編5

魔大陸開墾編 6

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 店の前でルーチェさんと別れ、俺たちは雄太たちの言うシークレットダンジョンまでユイの魔法陣で跳んだ。
 場所は大陸の南側の国。『エピ』という名の国の端のほうだった。
 代り映えのしない景色の中、ブレイブが一点を指さした。

「まんまる、そこの次元の裂け目、見えるか?」
「……信じらんないけど、見える。お宝の匂いがする……」
「あるぜ、お宝。たんまりと」

 ブレイブがニヤリと笑うと、まんまるさんがキャーと奇声を上げた。

「でもでも、どうやってここに入るの? 見えるだけじゃだめでしょ」
「だからこその、魔法陣魔法」
「フィットちゃん、やってみる?」

 ユイにそそのかされて、フィットさんが頷いている。全員で十人という大所帯。この人数での転移は大変そうだな、なんて思っていたけれど、さすがは前線で魔術師を張っているフィットさん、無事全員シークレットダンジョンの中へと転移していた。
 周りを見渡すと、うっそうと茂るジャングル。
 鑑定眼で目を凝らしてみると、確かに全てが錬金素材だった。
 垂涎のお宝である。

「本当にすべて錬金素材ね。マック、ここはエルフの里と違って取り放題よ。早速採取しましょ! 周りにはこんなに魔物護衛してくれる人たちがいるんだもの!」

 サラさんが嬉しそうに素材に手を伸ばす。
 確かに、俺以外の全員が魔大陸の魔物を対処できる人たちだから、護衛としてはピカ一。

「採取に時間かけていいの?」
 
 周りに聞けば、皆すごく目を輝かせて頷いていた。

「錬金素材って……謎素材って錬金素材だったの?」

 まんまるさんが早速ゲットした蔦を覗いている。
 でも、あの蛇紋石のついたアクセサリーを使えるまんまるさんでも、ここの素材は『謎素材』と出るらしい。徹底してるよ、謎素材。

「えっと……じゃあ、薬師マックの副業って、あの激レアの錬金術師?」
「激レア……う、うん。もしかして錬金術師ってもう巷に出回ってたり?」
「あの新ジョブチャレンジあったじゃん。あれがじつは錬金術師なんじゃないかって推測が出回っててさ。『グランドメーテル』っていうMMOやったことある? あれの錬金術師がまさにあんな感じの釜を掻き混ぜてアイテムを作るやつだったのよ。面白いのよ」

 私たちもチャレンジしたんだけどダメだったのよねー、とまんまるさんとルルーさんが頷き合っている。

「ああ、だからあの時門番さんが錬金釜の前にいたのね」

 なるほど納得、と頷かれて、ルルーさんたちは俺たちの方じゃない方でチャレンジしたことがわかった。

「マックの旦那君も錬金術師の卵だものね」
「まあ……」

 実際には鑑定を身に着けていないから謎素材の判別は見た目でしかできないんだけど。釜は扱えるからそうなのかな。
 さすが俺のヴィデロさん、と一人ホクホクしていると、早速魔物が現れた。
 そして、雄太たちに瞬殺されていた。
 サラさんが出る間もない。というかサラさんは嬉々として素材採取をしている。
 戦力は全く問題なさそうなので、俺も採取に勤しんだ。
 進んでは採取、進んでは採取と、かなりのゆったりペースで進んでいた俺たちだったけれど、何やらいわくありげな遺跡が目の前に出て来た。
 そこまで広くはなさそうだけれど、何やら雰囲気が怪しいその建物に、皆が目を輝かせる。

「こういうの待ってた!」
「すっげわくわくする」

 ルルーさんと雄太のセリフである。
 俺は建物自体より建物の周りに生えている鉱石みたいな錬金素材の方が正直気になる。
 だってあれ、初めて見る素材だから。ここまでの道にはなかった素材だから。
 そして今までの道中でわかったことだけど、『副業薬師』の皆さんはだいぶ好戦的。
 でも前衛が魔物を倒している間に後ろの方で調薬とかしてるの見ると大分面白い。色んな人がいるよね。

「ねえマック、ツルハシ持ってる?」
「ショボい奴でよければ一応」
「貸してもらえると嬉しいわ。これ、新しい素材よね」
「ですよね。俺も採取しよ」

 どうぞとツルハシを出してサラさんに渡すと、何故か慣れた手つきでツルハシを振るい始めた。
 皆が建物に夢中になっている中、カーンと硬質な音が響く。
 サラさんが二度ほどツルハシを振るうと、その鉱石はボロッと砕けて地面に落ちた。

「『紅蓮水晶クリムゾンクォーツ』ね……いい色ね。このままアクセサリーに加工しても人気でそうね」
「ですね。全部採掘しちゃっていいのかな」
「ふふ、シークレットダンジョンはボスを倒して外に出れば消えてなくなるのよ。そのダンジョンの魔力が維持できなくなるから。だから、手に入れないと損よ! 沢山採りましょ!」

 気合いを入れた超美人は、ガテン系のようなノリで力強くツルハシを振るう。
 周りの人たちが笑っているけれど気にせずいい笑顔で次々と鉱石を崩してはカバンに詰め込んでいく。
 二人で建物の周りにあった『紅蓮水晶』を全て取りつくすまで、雄太たちは出てくる魔物を次々切り刻んでいた。たまに魔法で爆散してる魔物もいたけれど。犯人は知ってる。
 俺とサラさんが満足したところで、建物の内部に入ることにした。
 一歩足を踏み入れると、サラさんが首を傾げた。
 
「ここの地下に大物がいるわね」
「わかるんですか?」

 ユイに訊かれて、サラさんが頷く。

「魔素の流れを感じない? ユイちゃんほどの子なら絶対にわかるはずよ。下から濃い魔素の残滓が沸き上がってきているのが。目を閉じて、そう、全身で感じて」

 サラさんの言葉通りに行動したユイは、しばらくの間動かずじっとしていたかと思うと、ハッと目を開けた。

「サラさん、わかりました。やった。魔力感知が上位変換された」

 新しいスキルになったらしい。ルーチェさんもそうだけど、新しいスキルを獲得する手伝いをしてくれるサラさんたちって凄すぎる。

「それね、マップを見るよりも便利なのよ」
「え、サラさんマップって知ってるんですか?」
「ええ。クラッシュに詳しく教えて貰ったの。あれは便利ね。敵対心を持ってる者は赤くなるのね。ここで私が殺気を出したらあなたたちのマップに映る私が赤くなるのかしら」

 そういうのやってみたいわよね、なんていうサラさんに、苦笑する。
 クラッシュと言えば、よく俺たちの世界に遊びに来るんだけれど、この間ヴィルさんからギアを借りて会社の汎用アカウントでADOにログインしていたっけ。
 あの時の大興奮はなかなかに面白かった。
 クラッシュじゃないクラッシュと一緒に歩いてきたヴィルさんは、クラッシュのアカウントキャラがちゃんと古代魔道語と魔法陣魔法、上級魔法などを使えることを確認して満足していた。あれも仕事と好奇心の一環だったらしい。
 一度死に戻りをしてみたいというクラッシュは、本当に一度魔物にやられてキラキラとした状態でヴィルさんの家に戻って来ていた。すごく複雑な顔をして。
 その話はまあ置いといて。
 皆で建物を地下に向かって下りていくことにした。
 建物の中にある宝箱はどれもランクの高いレアアイテムばかりで、素材でホクホクしている俺とサラさん以外の人たちで山分けすることにした。
 作り方がめっちゃ気になるエクスポーションなんかも出てきて、俺はブツよりレシピが欲しいと叫んだ瞬間『副業薬師』の人たちの同意を得てしまった。
 そこから少し休憩することにして、休憩中に薬師講義が始まった。

 

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