君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん

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2話 1度目の婚約解消

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 お母様は動揺する私の腕をなでてなだめようとするが… こんなに衝撃的な話を聞いたあとでは、どれだけ優しくされても落ちついていられない。


「だってお母様! 私にアルフレッド様以外の男性と結婚しろと言うの? 幼い頃に婚約して以来、ずっと恋して来た人なのに! 私はアルフレッド様と結婚することを、ずっと心待ちにしていたのよ?!」

 私の顔を見ていたお父様も困った顔で、私の肩をトンッ… トンッ… とたたいた。

「それで、マリオン… アルフレッドきょうのお父上ハンケロウ伯爵が、お前のために次の結婚相手を紹介してくれるそうだ」

「でも、お父様! 私は彼が帰国するまで待ちたいわ」
「だがマリオン… お前が行きおくれの年齢になっても、アルフレッドきょうは帰国できないかも知れないと、手紙には書いてあるんだ。 だから婚約は解消するしかない」

「お父様…! 行きおくれになっても良いわ。 何年でも待つから…」
 他の男性を紹介されたって、私は絶対に嫌!

「お父様の言う通りよ、マリオン…」
「でも、お母様…!」
「残念だがあきらめなさい。 マリオン、お前ならすぐに良い婿養子むこようしが見つかるさ」 

「お父様とお母様が心配するのはわかるけれど… 私はアルフレッド様が良いの」
 アルフレッド様が帰国するまで待ちたい。 たとえ婚約を解消しても… 私は彼としか結婚したくないわ。

 どれだけ私が抵抗しても… お父様は『お前のためだ』 …と婚約解消の手続きを始めてしまった。

 私にもアルフレッド様から手紙が届いた。 内容はお父様から聞いた話とほぼ同じ内容で、それ以外は謝罪の言葉がならんでいただけ。

『仕事を優先することになってすまない、マリオン。 不義理ふぎりなオレのことなど早く忘れて、幸せになってほしい。 だから君のためにも婚約の解消を受けいれてくれ』

「私も手紙を送らないと! アルフレッド様が好きだから何年でも待つと… 私は婚約解消を受け入れられないと… 私の気持ちをしっかりつたえないと!」

 すぐに手紙を書いて送ったが… アルフレッド様の返事が私に届くことはなかった。  



 そんな私の思いは、1ヶ月後に最悪のカタチで裏切られた。

「マリオン様… 隣国に新婚旅行へでかけた1番上の兄が、あちらの夜会に出席したのですが… そこで偶然、マリオン様の元婚約者のアルフレッドきょうに会ったそうです」
 
「…え? アルフレッド様にですか?」

 親しい友人の口からヒソヒソと耳打みみうちされ、私の心臓がドクンッ…! とはねた。

「とても言いにくいのですが… マリオン様…」
「何ですか?」
「実は… アルフレッド卿が夜会に連れて来たパートナーの女性を…… 自分の『婚約者』だと… 兄は紹介されたそうです」

 友人は気まずそうに私から視線をそらして、うつむいてしまう。

「……アルフレッド様の婚約者? そんな… 何かの間違いでは?!」 

「私も兄にこの話を聞いた時は、何かの間違いだと思いました。 でも… 兄はアルフレッド様の1歳年下ですが、学園生時代は同じ騎士課で顔見知りだったから、本人からくわしく話を聞けたと…」

 友人の長兄は私がアルフレッド様の元婚約者だと知っていたから、驚いて事情を聞きだそうとしたらしい。

「そんなこと… ありえないわ。 婚約解消して、まだ一ヶ月しかたっていないのよ? アルフレッド様はとても真面目な人だから… こんなに早く次の婚約を決めて、醜聞になるようなことをするとは思えない」
 だって私との婚約解消が正立してすぐにだなんて… あのアルフレッド様が? 信じられない!

「それはたぶん… アルフレッド卿はマリオン様と婚約を解消する前から、その女性と… その… 親しかったのではないかしら…?」

「…っ?!」
 ア… アルフレッド様が浮気をしていたというの? ありえない!


 私は学園から帰宅してすぐに、執務室で仕事をしていたお父様に、友人から聞いたアルフレッド様の話をつたえた。

 お父様はその話が嘘か本当か真偽しんぎを確かめるため、ハンケロウ伯爵家に訪問して伯爵に問いただしたそうだ。

 アルフレッド様が隣国の貴族女性と婚約した話は本当で、相手は王弟殿下から紹介された女性だから… 私と婚約解消をしたアルフレッド様は断れなかったと聞かされる。





「マリオン… アルフレッド卿には新たな婚約者がいる。 それならお前も彼をあきらめて見合いをしなさい」

「……お父様、アルフレッド様が私との婚約を解消したのは、本当に私のため? もしかして… 他の人と結婚するためだったの?」
 王弟殿下に紹介された女性は、私よりも美しい女性かしら…? それとも、すぐに結婚できる、大人の女性だったから? 私のような未熟な子供では嫌だったの?

 残酷ざんこくな真実をすぐに受け止められず、私は思わずお父様にたずねてしまった。

「あんな不誠実な男のことなど、早く忘れるんだマリオン。 お前ならきっとすぐに良い相手が見つかるはずだ。 ハンケロウ伯爵がすでに何人かの候補者に、手紙を送ってくれたそうだから……」

「……お父様」
 お父様は私の質問には答えてくれなかった。 …それはきっと、婚約者にすてられたみじめな私への思いやりからなのだろう。


 ―――そして、爵位は継げなくても… 私はスリンドン子爵家の財産を継ぐ、女相続人という魅力があるから、すぐに新しい婚約者があらわれた。






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