君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん

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3話 2人目の婚約者

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 2度目の婚約もぶじにまとまり、ようやくホッ… と一息ついたのもつかの間。 スリンドン子爵家は突然の悲劇に襲われた。

 夕暮ゆうぐれ時にふりだした激しい雨の中で子爵家の馬車が横転おうてんし、頭を強く打ちつけたお母様が数日間、眠り続け… そのまま帰らぬ人となった。


「お父様… お母様をりっぱなお葬式で女神様のもとへ送ってあげましょう」
「ああ… そうだな」
「これからは私も… お母様のかわりにお父様のお手伝いしますから」
「ああ… 頼むよマリオン…」

 私と同じく、両親も子供の時に決められた婚約で結婚したが、2人は誰の目から見ても仲の良い夫婦だったから……
 愛するお母様を失ったお父様は、まるで別人のように無気力になってしまった。

「お父様… この悲しみを一緒に乗り越えましょう。 私がお父様を支えます」
 お母様がいなくて、さびしくてたまらないけれど… でも、私がしっかりしないと! 悲しんでばかりいられないわ。 

 スリンドン子爵家の家政かせいをすべて引き継ぎ、私は執事や親戚しんせきの力を借りて葬儀をすすめた。


 ―――そんな時、私を助けてくれたのが、2人目の婚約者ノエル様だった。

「マリオン… 僕にできることがあったら、何でも言って欲しい。 君の力になりたいんだ。 …だから1人で無理をしなくて良いからね」

「ありがとうございます。 ノエル様… とても心強いわ」
 お父様を頼れない今は、婚約者のノエル様がそばにいてくれて本当に助かるわ。

 4歳年上の婚約者ノエル様はハンケロウ伯爵の親戚しんせきで、アルフレッド様のはとこ(※親同士が従妹)にあたる。
 アルフレッド様のようにたくましさや雄々おおしさは無いけれど… かわりにとても社交的で細やかな気づかいができる優しい人だ。

「僕はマリオンの婚約者だからね。 君と結婚したら、僕がこのスリンドン子爵家を継承することになるし、当然のことだよ」

「はい。 頼りにしていますわ、ノエル様」
 私は女性だから爵位は継げないけれど。 ノエル様が婿養子むこようしとなってスリンドン子爵家を継ぐまでは、私がしっかり守らないと!




 私の決心とは裏腹に、お葬式が終わってもお父様の落ち込みは日に日にひどくなってゆき… お医者様から田舎での療養をすすめられた。

「お父様… 何も気にしないで、ゆっくり療養して下さい。 子爵家のことはノエル様が手伝ってくれるので、未熟な私でも何とかなりそうだから……」
「そうか…」

「子爵、どうかこちらのコトは僕にお任せ下さい。 しっかりマリオン嬢を支えてスリンドン子爵家を守りますから」

 お父様が無気力になり、手を付けなくなった領地の運営に関することも、ノエル様が面倒を見てくれるようになり… 私の心にかなり余裕ができた。

「ああ、頼むよノエルきょう…」

「あと半年で私が学園を卒業したら『成人の儀』を受けられるし。 ノエル様との結婚は、お母様のが明けるのを待たなければ、いけないけれど…」
 さすがに私が結婚するころまでには、お父様も気力を取り戻して、元気になってくれるでしょう?

「うん。 そうだな…」
「しっかり療養して、早く元気になった下さい。 お父様…」

 お父様の変わり果てた姿を見るのが辛くて、実質的に当主の代行となった私とノエル様は、お医者様の助言にしたがい、お父様を田舎の領地に送り出すことにした。

 だが……
 この時の決断が、私たちの人生を大きく変えることになるとは… 少しも予想していなかった。



 田舎での療養を終えたお父様が、以前よりもはつらつとした生気をみなぎらせて、王都へ帰って来た時… 隣に若い女性をつれていた。







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