7 / 23
6話 醜聞
しおりを挟むアッ… という間にマリオンが2度目の婚約を解消したことが、社交界で醜聞となって広がってしまう。
醜聞にまみれたスリンドン子爵家が非難される中、ノエル様は… 『あれだけ献身的に子爵家につくしたのに裏切られた』と人々から同情を誘った。
スリンドン子爵家の醜聞を利用し、自分の誠実さを社交界でじょうずにアピールすることができたノエル様は、すぐに次の婿入り先を見つけて婚約したそうだ。
私もノエル様にすてられたショックに耐えて、継母のローザ様に付き添い役となってもらい、お母様が亡くなってから中断していた社交活動を再開したが……
『ほら見て、あの令嬢… ノエル卿と婚約解消をしたスリンドン子爵家のお嬢さん』
『隣にいるかたは誰? もしかして、新しいスリンドン子爵夫人かしら…』
『まぁ…… 本当に令嬢と年がかわらないわ。 よく顔を出せたわね。 私なら恥ずかしくて、神殿で毎日お祈りを捧げていたでしょうね』
『子爵夫人だけではないわ。 あの令嬢はノエル卿が、2度目の婚約解消だったそうよ』
『あら嫌だ! なんて惨めな令嬢なの? あの令嬢は夜会に出るよりも、神殿で女神様に仕える道へ、今すぐ進むべきよ』
どこへ行っても、私と継母のローザ様はヒソヒソと陰口をたたかれ… 嘲笑でむかえられた。
適齢期の男性は1人も私に寄りつこうとしない。 予想通り、子爵家の相続人ではなくなった私に魅力を感じなくなったからだ。
それどころか学園で友人だった人たちまで、私と目を合わせようともしない。
一応、義理で招待状は来るけれど、私は社交界で孤立してしまった。
「マリオンならすぐに次の婚約者が見つかるさ。 そんなに暗い顔をしないでくれ」
お父様は腕の中に愛らしい息子を抱きながら、陽気な声で私を慰めた。
「…でもお父様、私は社交界で2度も婚約を解消された、惨めな娘だと言われているのよ? 3人目の婚約者なんて… 見つからないわ」
若く美しい妻のローザ様と、産まれたばかりの可愛い息子ティエリーに囲まれて、お父様は幸せの絶頂にいる。 …だから私の苦悩なんて、何も理解できないのね。
醜聞だけじゃないわ… 私は子爵家の財産を継ぐ、女相続人という魅力まで失ったから… 誰も私を見ようとしない。
私の価値は地に落ちてしまったのよ。
「それならハンケロウ伯爵に、もう1度お前の婚約者候補を紹介してくれるよう、頼んでみよう」
「お父様…」
1人目の婚約者アルフレッド様のお父様に、またお願いするの? そんなずうずうしいお願いを、ハンケロウ伯爵様が聞いてくれるとは思えないけれど……
お父様がハンケロウ伯爵に、私の婚約者候補を紹介して欲しいと頼みに行くと… 私の予想よりも、はるかに状況は悪くなった。
「スリンドン子爵、君は私の面目をつぶしたと… わかっているのか?」
「伯爵は何をそんなに怒っておられるのですか?」
「君が子爵家の後を継ぐ後継者が欲しいと言うから、それに相応しい有能な男を説得して、私は君に紹介したのだ。 それを息子のが可愛いからと、簡単に切りすてるとは… 君はもう少し、恥を知り誠意を持つべきだ!」
婚約契約を破ったお父様がノエル様から継承者の座を奪い、私と婚約を解消する原因となったことに、ハンケロウ伯爵は激しく怒っていた。
「ですが伯爵… 実の息子が産まれたら、いくら優秀でも他人を後継者にするなんて…」
「そういう問題で迷わないよう、はじめに婚約契約で決めたのではないか!」
「そ… それはそうですが…」
「信用できない君に、これ以上、有能な男を紹介する気は無い。 2度と私のところに来ないでくれ!」
その後、スリンドン子爵がハンケロウ伯爵の怒りを買ったという話題が、社交界の醜聞に加わった。
ハンケロウ伯爵家は武門に秀でた家系で、歴代の当主は全員、近衛騎士団に所属して王族の身辺警護を担当するような血筋である。
ハンケロウ伯爵自身も、国王陛下が王太子時代に身辺警護をつとめ… 能力を認められて最終的には、近衛騎士団の騎士団長にまでのぼりつめた人物だ。
名誉と誠実さを重んじることで有名な、ハンケロウ伯爵に嫌われたのなら、社交界でスリンドン子爵家が嫌われ者になるのも当然だった。
114
あなたにおすすめの小説
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~
朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。
婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」
静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。
夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。
「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」
彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!
h.h
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
完結 女性に興味が無い侯爵様、私は自由に生きます
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる