君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん

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5話 2度目の婚約解消

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 お父様がローザ様をつれて療養からもどる前に、私は学園を卒業して成人の儀をすませていた。

 婚約者のノエル様とも話し合い、お母様のがあけたらすぐに結婚しようと計画していが… お父様が妊娠したローザ様をつれてきたことで、私たちの計画が大きく狂いだした。


「マリオン… ローザ嬢が子爵の子を妊娠しているのなら、僕たちの結婚は延期えんきしよう……」

延期えんき? ノエル様、どうしてですか?!」
 結婚は人生を左右する、大きな決断だから慎重になって当然だけど。

「僕たちが結婚したらすぐにお父上が、僕に子爵位を継がせてくれるのなら… 何も問題はないけどね」

「それは……」
 つまり私たちの結婚をきっかけに、お父様には当主の座から退しりぞ隠居いんきょして欲しいと、ノエル様は考えているのね。

 でもローザ様と出会い、今は生気がみなぎるお父様が、老人のように隠居いんきょ生活を選ぶとは思えない。
 私たちが頼んでも、子爵家をノエル様に渡すつもりはないだろう。

 1年前なら、私とノエル様が頼めば… 無気力だったお父様は、よろこんで子爵家をノエル様に継がせていたはずだけど。 


「ローザ嬢から産まれるお父上の子が男子だったら… お父上はその子をスリンドン子爵家の後継者にしようとするはずだ…」

「…っ?!」
 そんなこと、考えてなかったわ。

「だから僕は入り婿むことして、スリンドン子爵家にむかえ入れられることは無くなる」

「……で、でも! 婚約契約で私と結婚したノエル様に、爵位を継がせることになっていたはずだわ」
 その契約があるから、ノエル様は今まで子爵領の運営をお父様の代行で関わってくれた。

「君のお父上は、たぶん… 僕に違約いやく金を払ってすませるだろうね」
「そんな…!」
「だから僕たちの結婚は延期えんきして、ようすを見たほうが良いんだ」

延期えんきしてようすを見る? …ノエル様は私に弟が産まれたら、私と結婚はしないつもりですか?」
 ああ、嫌だ。 ウソでしょう?! 継母に息子が産まれたら、私はまた婚約を解消されるの?

「財産も爵位もない僕と結婚したら、君が苦労するだけだしね。 なんだよ」

 動揺する私から、ノエル様はサッ… と視線をそらした。

…?」
 私のためなんて嘘だわ。 ノエル様は嘘をついている。 今までノエル様の優しさを、私への愛情からくるものだと思っていたけれど、本当は違ったのね!

 2度目の婚約がすぐに決まるほど、ノエル様や未婚の男性たちにとって、私が魅力的な結婚相手に見えたのは、スリンドン子爵家の財産を継ぐ、たった1人の女相続人だったからだ。
 …でも弟が誕生して私が相続人ではなくなると、未婚の男性たちを引きよせていた魅力が消えてしまう。
 ノエル様の態度を見て、初めて気がついた。


 ずっと親切だったノエル様の計算高い一面を知り、胸の中がヒヤリと冷たくなる。

 



 お父様とローザ様が結婚して、数ヶ月後に私のが産まれた。

 スリンドン子爵の後継者の座は、ノエル様から生まれたばかりの弟ティエリーへと代わり、私はたった1人の相続人という立場も失い、婿養子むこようしをとる必要もなくなる。

 お父様はノエル様の予想通り、違約いやく金を払って済ませようとした。

 でもノエル様は……

「婚約契約を守っていただけないのなら、僕はマリオン嬢と婚約は解消します」
「爵位は渡せないが、マリオンには持参じさん金をつけるつもりだが… それでも婚約を解消するのか?」

 お父様は交渉したが… ノエル様が提案を受け入れることは無かった。
 持参金を出すと言っても、特別裕福でもない子爵家が嫁ぐ娘に用意する金額など、たかが知れている。

「僕にはマリオン嬢を幸せにする自信がありません。 ですから、にも僕が身を引きます」
「そうか… ノエル卿、残念だよ。 に仕方ない、婚約は解消しよう」

 
 私は2度目の婚約解消を経験する。





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