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19話 つかの間の平和
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アルフレッド様のおかげで婚姻無効が正立し、私は無事にベントレー伯爵家から逃げ出すことができた。
今はハンケロウ伯爵家にお世話になりながら、半年後に決まったアルフレッド様との結婚にむけて準備をしている。
「良い新居が見つかって良かったわね、マリオン。 小さいけれど、王宮にも近いからアルフレッドも通いやすいでしょうね」
「ええ、お義母様」
「うふふっ… それに素敵なお庭がついていたし、子育てにも良い環境だわ」
「そうですね、お義姉様。 あの家で暮らすのが楽しみです」
国王陛下よりも多くの公務をこなしている、王太子殿下の護衛騎士となったアルフレッド様は… 毎日、自宅に帰るヒマが無いほど激務に追われている。
私の婚姻無効の申し立てをするために、アルフレッド様は自分が所属する近衛騎士団から、かなり強引に休みをもぎ取ったらしく、そのしわ寄せが来ているのもあるらしい。
ハンケロウ伯爵夫人と義理の兄嫁は、そんな忙しいアルフレッド様にかわり、よろこんで結婚の準備を手伝ってくれた。
「あの家ならアルフレッド様も文句は言わないでしょうね」
「うふふっ… うちの無骨な息子はたぶん、マリオンと一緒ならどこでも良いと言うわよ」
「ああ… 確かに、義弟ならそう言いそうだわ。 ふふふっ…」
楽しそうに笑うお義母様とお義姉様を見ていると、少しだけさびしくなる。
「……」
お義母様とお義姉様と一緒に、亡くなったお母様もここにいたら… もっと楽しい時間になったのに… 残念だわ。
私の醜聞が社交界でいまだに燻っているから、婚姻の儀式はひっそり行うのだと思っていたけれど… ハンケロウ伯爵夫妻の考えは違った。
『いや、それではダメだ。 今まで醜聞の中にいたマリオンが、ハンケロウ伯爵家の庇護下に入ると、世間に広めなければならないからな』
社会的に地位が高いハンケロウ伯爵家が、マリオンにケンカを売る者は許さないという意思表示だ。
『そうよ、マリオン。 スリンドン子爵家とは縁を切っても、娘のあなたは私たちに愛されていると、貴族たちに教えてあげないとね』
『ありがとうございます… お義父様、お義母様。 この御恩をどうお返しすれば良いのか…』
実の父の恥知らずなおこないのせいで、私も伯爵に嫌われていると思っていたのに… こんなに親切にしてもらえるなんて。
『マリオン… あの頑固で無骨者の息子を、結婚する気にさせただけでじゅうぶんだよ』
『あなたがアルフレッドの求婚に応じてくれなければ… あの子は結婚どころか、褒賞の男爵位と領地も面倒だから辞退すると言ってたのよ』
アルフレッド様は騎士の仕事以外のことには興味が無いらしい。
そんなおだやかな日々は、つかの間の平和となった。
珍しく晩餐の時間に間に合うよう、帰宅したアルフレッド様は食事を終えた後…
伯爵夫妻と長男夫妻、そして私の前で、昼間アルフレッド様に会いに来た招かれざる客の話をした。
「スリンドン子爵が離婚したそうだ」
アルフレッド様に会いに来た、招かれざる客は私のお父様だった。
「……え、お父様がですか?!」
「そうらしい」
「離婚? あのローザ様と離婚した? どうして……」
アルフレッド様の話に私はひどく驚いたけれど… 伯爵夫妻と長男夫妻は私ほど驚いたようすではなく、顔を見合わせて気まずそうにしている。
私のお父様、スリンドン子爵が離婚したことを、ハンケロウ伯爵家の人たちはみんな知っていたのだ。 私だけが何も知らなかった。
「スリンドン子爵はマリオンとの面会を求めて、何度かこの屋敷にやって来たが… また、ろくでもないことをマリオンに押しつけると予想できたから、私が追い払うよう指示していたんだ」
「お義父様が…?」
「ごめんなさいね、勝手なことをして… でも、ようやくおだやかな生活を取り戻したマリオンに、嫌な思いをさせたくなかったの」
お父様はハンケロウ伯爵家に来ても追い払われるから… 相手の迷惑など考えず、アルフレッド様の職場に押しかけたのだ。
手段を選ばなくなったお父様の態度に、アルフレッド様はこれ以上、私に隠しておけないと判断した。
「でも… なぜ私に会いに来たのかしら? ベントレー伯爵家にいたときは、手紙の1つも送ってこなかったのに」
気分が悪いわ。 私をすてたお父様が、今さら会いに来るなんて… それにいくら私への配慮でも、私だけ何も知らされなかったなんて……
私のことを誰かに決められるのは、もう嫌。
親切にしてくれる人たちの前で、今の気持ちが顔に出てしまわないよう、表情を消した。
今はハンケロウ伯爵家にお世話になりながら、半年後に決まったアルフレッド様との結婚にむけて準備をしている。
「良い新居が見つかって良かったわね、マリオン。 小さいけれど、王宮にも近いからアルフレッドも通いやすいでしょうね」
「ええ、お義母様」
「うふふっ… それに素敵なお庭がついていたし、子育てにも良い環境だわ」
「そうですね、お義姉様。 あの家で暮らすのが楽しみです」
国王陛下よりも多くの公務をこなしている、王太子殿下の護衛騎士となったアルフレッド様は… 毎日、自宅に帰るヒマが無いほど激務に追われている。
私の婚姻無効の申し立てをするために、アルフレッド様は自分が所属する近衛騎士団から、かなり強引に休みをもぎ取ったらしく、そのしわ寄せが来ているのもあるらしい。
ハンケロウ伯爵夫人と義理の兄嫁は、そんな忙しいアルフレッド様にかわり、よろこんで結婚の準備を手伝ってくれた。
「あの家ならアルフレッド様も文句は言わないでしょうね」
「うふふっ… うちの無骨な息子はたぶん、マリオンと一緒ならどこでも良いと言うわよ」
「ああ… 確かに、義弟ならそう言いそうだわ。 ふふふっ…」
楽しそうに笑うお義母様とお義姉様を見ていると、少しだけさびしくなる。
「……」
お義母様とお義姉様と一緒に、亡くなったお母様もここにいたら… もっと楽しい時間になったのに… 残念だわ。
私の醜聞が社交界でいまだに燻っているから、婚姻の儀式はひっそり行うのだと思っていたけれど… ハンケロウ伯爵夫妻の考えは違った。
『いや、それではダメだ。 今まで醜聞の中にいたマリオンが、ハンケロウ伯爵家の庇護下に入ると、世間に広めなければならないからな』
社会的に地位が高いハンケロウ伯爵家が、マリオンにケンカを売る者は許さないという意思表示だ。
『そうよ、マリオン。 スリンドン子爵家とは縁を切っても、娘のあなたは私たちに愛されていると、貴族たちに教えてあげないとね』
『ありがとうございます… お義父様、お義母様。 この御恩をどうお返しすれば良いのか…』
実の父の恥知らずなおこないのせいで、私も伯爵に嫌われていると思っていたのに… こんなに親切にしてもらえるなんて。
『マリオン… あの頑固で無骨者の息子を、結婚する気にさせただけでじゅうぶんだよ』
『あなたがアルフレッドの求婚に応じてくれなければ… あの子は結婚どころか、褒賞の男爵位と領地も面倒だから辞退すると言ってたのよ』
アルフレッド様は騎士の仕事以外のことには興味が無いらしい。
そんなおだやかな日々は、つかの間の平和となった。
珍しく晩餐の時間に間に合うよう、帰宅したアルフレッド様は食事を終えた後…
伯爵夫妻と長男夫妻、そして私の前で、昼間アルフレッド様に会いに来た招かれざる客の話をした。
「スリンドン子爵が離婚したそうだ」
アルフレッド様に会いに来た、招かれざる客は私のお父様だった。
「……え、お父様がですか?!」
「そうらしい」
「離婚? あのローザ様と離婚した? どうして……」
アルフレッド様の話に私はひどく驚いたけれど… 伯爵夫妻と長男夫妻は私ほど驚いたようすではなく、顔を見合わせて気まずそうにしている。
私のお父様、スリンドン子爵が離婚したことを、ハンケロウ伯爵家の人たちはみんな知っていたのだ。 私だけが何も知らなかった。
「スリンドン子爵はマリオンとの面会を求めて、何度かこの屋敷にやって来たが… また、ろくでもないことをマリオンに押しつけると予想できたから、私が追い払うよう指示していたんだ」
「お義父様が…?」
「ごめんなさいね、勝手なことをして… でも、ようやくおだやかな生活を取り戻したマリオンに、嫌な思いをさせたくなかったの」
お父様はハンケロウ伯爵家に来ても追い払われるから… 相手の迷惑など考えず、アルフレッド様の職場に押しかけたのだ。
手段を選ばなくなったお父様の態度に、アルフレッド様はこれ以上、私に隠しておけないと判断した。
「でも… なぜ私に会いに来たのかしら? ベントレー伯爵家にいたときは、手紙の1つも送ってこなかったのに」
気分が悪いわ。 私をすてたお父様が、今さら会いに来るなんて… それにいくら私への配慮でも、私だけ何も知らされなかったなんて……
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