3 / 24
Act.03 会社から始まる非日常について。①
しおりを挟む
自転車で走るには絶好の天気の中、交通渋滞に巻き込まれることもなく、愛車のマウンテンバイクで市内を爽快に走り抜けていくオレ――。
繁華街はヒトが多く集まる場所だけに車通りも比例して多い。
当然、信号なんかもめっさ多い。
万年渋滞ってほどではないにしろ、混む時は異常なくらい混むからね。
なので、オレは高校のバイト時代からずっと、移動手段として自転車を愛用している。
マウンテンバイクって言うのは山を走る自転車とはいえ、こう言った状況下では車やオートバイよりもずっと快適で移動も早いからそうしているのさ。
予想通り、約一時間程度で会社に到着できた。
但し、いつも勤務している店舗の方ではなく、支社ビルの方になる。
勤めている会社の元締めが、世界シェアでも巨大企業の分類に入るほどにデカい。
姉さんが勤めているとある派遣会社ってのも、この傘下にある。
支社ビルにしても、当然、この繁華街では一番デカく、設備にしても凄いんだよね。
お金を持ってる会社って、ホント、凄いと思う。
オレも良くそんな大企業に就職、あまつさえ会社の良いポストに居られるって嘘みたいだけど。
これも一重に、義父さん達の助けがあってこそのお陰だね。
「――よっ!」
入館許可を貰う為、結構なヒト達が行き交うエントランスを通って、突き当たりに設置されている受付にやってくると、そこに座って仕事をしていた女性にお気楽な態度で声を掛けて、持って来た社員証を手渡した。
「お早う御座いま――なんだ、御手洗くんか。――あれ? 今日は公休になってるけど? 何故に支社に出勤してるの? はは~ん、さては私に会いに来てくれたとか? ――なんてね」
オレから社員証を預かり、専用のリーダーに翳す。
すると、オレの個人情報や予定なんかが、手元の端末モニターに表示されるって仕組み。
情報を見て確認したあとで、冗談を言いつつ和かに笑って社員証を返してきた。
――姿勢を正し、両手で丁寧に受け取って素敵な営業外スマイルで冗談混じりに応対してくれた彼女は、こう言った会社の窓口には必ず居る受付嬢だよ。
宣伝の為にテレビに出演させられることもあるだけあって、下手な芸能人やモデル顔負けの超絶我儘ボディで凄い美人さん――確か、今年で二一歳だった筈?
元々、広報部所属だった彼女は、当然、営業スマイルも天下一品。
物腰も柔らかくて素敵との評判で、社内外に老若男女問わずの大人気の女性だ。
――ま、姉さんには敵わないけどね。
オレも結構な頻度で支社に呼び出されたりするので、当然、彼女とは顔見知り。
他の社員からやっかみを喰らう程度には、良好な友達関係を築いている。
「言ってろ。――打ち合わせがあるとかないとかで支社に直ぐ来いって言うから、休みだけど来たんだけどさ? 連絡とかって入ってない?」
「そうなんだ、残念。ちょっと待ってね。――あ、確かにアポイントが入ってるね。えーと、御手洗くんは直接、社長室へ向かうようにと記載されてるよ? ――ま~た、なんかやらかしたの?」
「――え? 会議室と違くて? 応接室とも違くて?」
「――うん。社長室に通すようにってここに書いてあるよ……ほら、ここね?」
目の前の端末モニターをクルリと回転させて、記載されている所を指差してオレに見せてくれる。
「さよかー。あの社長室は異空間と言うか異世界と言うか、ある意味で魔界だから……ちょっと気が進まない」
「――ぷ。なんとなく言い方が、斗店長にそっくりになってきたね? 御手洗くん」
「――うっせ。オレの義父さんに等しいからね、あのヒトは。――時々、口癖とか感染って困るって」
「そう言うことにしておいてあげるよ。――あ、お客さんだ……またね、照れ屋な御手洗くん♪ ――こんにちは。御来館、誠に有り難う御座います。本日はどのようなご用件で御座いましょうか――」
オレを茶目っ気たっぷりの営業外スマイルで見送ったあと、素早く接客モードに移行する彼女。
新しく訪れた来賓に向き直り、姿勢を正して礼を尽くした挨拶に加え、完璧過ぎる営業スマイルで応対を始めた――。
邪魔をしても悪いので、とっととその場を去ることにして、魔界――社長室へと脚を運んだ。
受付窓口の差し向かいにエレベーターがあって、そこから行ける最上階の一室が魔界――社長室。
義父さんに言わせると、重鎮が最上階に居座るのは、なんでもお約束だとかなんとか。
なんとかと煙りは、高い所云々って良く言うからね。
◇◇◇
高速エレベーターなので、あっという間に最上階フロアに辿り着いた。
エレベーターを出て奥に進んだ突き当たりに、ちょっと重々しい観音開きの扉がある。
そこが、この支社の魔界――社長室となっている。
「ちゃ~っす! 社長居る?」
「御機嫌好う、そーぢ様。勿論、お見えになります」
「御機嫌好う、そーぢ様。お話は伺っております。どうぞ中へお入り下さい」
その扉の前には、姉さんとはまた違った由緒正しきメイド服に身を包んだ二人の女性が優雅に佇んでいた。
当然、何方も超絶美人。
容姿で採用してるのではないかと疑ってしまうくらいのね。
それにオレは知っている。
この二人が単なるメイドさんではない、只者ではない女性だと言うことを――。
――ま、それでも姉さんには敵わないけどね。
「あのさ、様呼びは止めて下さいって、ホント。――せめて……君とかで、ね?」
「大変、申し訳御座いませんが、承知致しかねます。そのような無礼な振る舞いは私共が折檻、或いは仕置きされますゆえ。――どうか諦めて下さいませ、そーぢ様」
反論を許さない威圧を纏って、両手を下腹部に添えた優雅な仕草で傅く。
「さよかー。悪いのは全部、ウチの社長なんだよね――はぁ……全く」
額に手を当てて天井を仰ぎ見ると、深い溜息を吐いたオレだった。
観音開きの重々しい扉を二人が静かに開けてくれたあと、左右に別れてオレに傅いた。
中へと促されたオレは社長室――魔界へと、意を決して足を踏み入れたのだった――。
―――――――――― つづく。
繁華街はヒトが多く集まる場所だけに車通りも比例して多い。
当然、信号なんかもめっさ多い。
万年渋滞ってほどではないにしろ、混む時は異常なくらい混むからね。
なので、オレは高校のバイト時代からずっと、移動手段として自転車を愛用している。
マウンテンバイクって言うのは山を走る自転車とはいえ、こう言った状況下では車やオートバイよりもずっと快適で移動も早いからそうしているのさ。
予想通り、約一時間程度で会社に到着できた。
但し、いつも勤務している店舗の方ではなく、支社ビルの方になる。
勤めている会社の元締めが、世界シェアでも巨大企業の分類に入るほどにデカい。
姉さんが勤めているとある派遣会社ってのも、この傘下にある。
支社ビルにしても、当然、この繁華街では一番デカく、設備にしても凄いんだよね。
お金を持ってる会社って、ホント、凄いと思う。
オレも良くそんな大企業に就職、あまつさえ会社の良いポストに居られるって嘘みたいだけど。
これも一重に、義父さん達の助けがあってこそのお陰だね。
「――よっ!」
入館許可を貰う為、結構なヒト達が行き交うエントランスを通って、突き当たりに設置されている受付にやってくると、そこに座って仕事をしていた女性にお気楽な態度で声を掛けて、持って来た社員証を手渡した。
「お早う御座いま――なんだ、御手洗くんか。――あれ? 今日は公休になってるけど? 何故に支社に出勤してるの? はは~ん、さては私に会いに来てくれたとか? ――なんてね」
オレから社員証を預かり、専用のリーダーに翳す。
すると、オレの個人情報や予定なんかが、手元の端末モニターに表示されるって仕組み。
情報を見て確認したあとで、冗談を言いつつ和かに笑って社員証を返してきた。
――姿勢を正し、両手で丁寧に受け取って素敵な営業外スマイルで冗談混じりに応対してくれた彼女は、こう言った会社の窓口には必ず居る受付嬢だよ。
宣伝の為にテレビに出演させられることもあるだけあって、下手な芸能人やモデル顔負けの超絶我儘ボディで凄い美人さん――確か、今年で二一歳だった筈?
元々、広報部所属だった彼女は、当然、営業スマイルも天下一品。
物腰も柔らかくて素敵との評判で、社内外に老若男女問わずの大人気の女性だ。
――ま、姉さんには敵わないけどね。
オレも結構な頻度で支社に呼び出されたりするので、当然、彼女とは顔見知り。
他の社員からやっかみを喰らう程度には、良好な友達関係を築いている。
「言ってろ。――打ち合わせがあるとかないとかで支社に直ぐ来いって言うから、休みだけど来たんだけどさ? 連絡とかって入ってない?」
「そうなんだ、残念。ちょっと待ってね。――あ、確かにアポイントが入ってるね。えーと、御手洗くんは直接、社長室へ向かうようにと記載されてるよ? ――ま~た、なんかやらかしたの?」
「――え? 会議室と違くて? 応接室とも違くて?」
「――うん。社長室に通すようにってここに書いてあるよ……ほら、ここね?」
目の前の端末モニターをクルリと回転させて、記載されている所を指差してオレに見せてくれる。
「さよかー。あの社長室は異空間と言うか異世界と言うか、ある意味で魔界だから……ちょっと気が進まない」
「――ぷ。なんとなく言い方が、斗店長にそっくりになってきたね? 御手洗くん」
「――うっせ。オレの義父さんに等しいからね、あのヒトは。――時々、口癖とか感染って困るって」
「そう言うことにしておいてあげるよ。――あ、お客さんだ……またね、照れ屋な御手洗くん♪ ――こんにちは。御来館、誠に有り難う御座います。本日はどのようなご用件で御座いましょうか――」
オレを茶目っ気たっぷりの営業外スマイルで見送ったあと、素早く接客モードに移行する彼女。
新しく訪れた来賓に向き直り、姿勢を正して礼を尽くした挨拶に加え、完璧過ぎる営業スマイルで応対を始めた――。
邪魔をしても悪いので、とっととその場を去ることにして、魔界――社長室へと脚を運んだ。
受付窓口の差し向かいにエレベーターがあって、そこから行ける最上階の一室が魔界――社長室。
義父さんに言わせると、重鎮が最上階に居座るのは、なんでもお約束だとかなんとか。
なんとかと煙りは、高い所云々って良く言うからね。
◇◇◇
高速エレベーターなので、あっという間に最上階フロアに辿り着いた。
エレベーターを出て奥に進んだ突き当たりに、ちょっと重々しい観音開きの扉がある。
そこが、この支社の魔界――社長室となっている。
「ちゃ~っす! 社長居る?」
「御機嫌好う、そーぢ様。勿論、お見えになります」
「御機嫌好う、そーぢ様。お話は伺っております。どうぞ中へお入り下さい」
その扉の前には、姉さんとはまた違った由緒正しきメイド服に身を包んだ二人の女性が優雅に佇んでいた。
当然、何方も超絶美人。
容姿で採用してるのではないかと疑ってしまうくらいのね。
それにオレは知っている。
この二人が単なるメイドさんではない、只者ではない女性だと言うことを――。
――ま、それでも姉さんには敵わないけどね。
「あのさ、様呼びは止めて下さいって、ホント。――せめて……君とかで、ね?」
「大変、申し訳御座いませんが、承知致しかねます。そのような無礼な振る舞いは私共が折檻、或いは仕置きされますゆえ。――どうか諦めて下さいませ、そーぢ様」
反論を許さない威圧を纏って、両手を下腹部に添えた優雅な仕草で傅く。
「さよかー。悪いのは全部、ウチの社長なんだよね――はぁ……全く」
額に手を当てて天井を仰ぎ見ると、深い溜息を吐いたオレだった。
観音開きの重々しい扉を二人が静かに開けてくれたあと、左右に別れてオレに傅いた。
中へと促されたオレは社長室――魔界へと、意を決して足を踏み入れたのだった――。
―――――――――― つづく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる