御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Act.09 会議から始まる非日常について。①

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 昨日、義祖父じーちゃんと打ち合わせた点を更に煮詰める為に、今日の午前中からとっても大事な会議がある。

 昨夜、自宅に戻って一生懸命に構想を練った企画を発表する場でもあるね。

 現場――店舗勤めばっかりで久しぶりだったのもあり、解り易い資料を準備するのに、若干、手間取ってはしまったけど、なんとか無事に纏めることはできた。

 摩訶不思議現象がなければ、やりきった感で熟睡してただろうほどには会心の仕上がり。
 発表するのが今から凄く楽しみだよ。

 店舗ではなく支社の重役会議に出席するので、久しぶりにリクルートスーツに袖を通す。


 そして――。
 袖を通してビックリした。
 

「――オレのスーツが……カッターにネクタイまで……パリッとしている?」

 カッターシャツとネクタイにアイロン掛けがしてあって、とってもパリッと仕上がっているだけでなく、スーツ自体も新品同様に清潔かつ綺麗になって、仄かに良い香りがしていたんだね。

「一体、いつの間にこんな……」

 疑問に思いつつも身支度をサッサと済ませて迎えを待った――。


 否、待つまでも無かった。


「お早う御座います、そーぢ様。お迎えに参上致しました」

 見てたんじゃないのかと言う絶妙のタイミングで、静かに玄関に佇んでいたから。


 大事なことなのでもう一度言う。
 玄関に佇んでいたの!


「あのね、義祖父じーちゃんが用意してくれた家だから合鍵ぐらいは預かっているんだろうけど……気配なくヒトんの中に無言でしれっと立ってるのだけは本気で止めて下さい。――本気でビビるから。怖いから」

 そう。玄関――家の中に気配なく佇んでいたんだね。
 オレを呼ぶでなく静かに押し黙ってね。


 心臓の弱い方なら、になってたところだよ?


「――存分に休養なされなかったご様子。もしお許し頂けるのでしたら、今晩からでも私が身の回りのお世話を致しましょうか?」

 オレの苦情を意にも介さず、寝不足なオレの表情を読み取って、オレを気遣う言葉を掛けてくれるメイドさん。


 後光が差していると錯覚するほどの素敵な笑顔でね。
 そう思うのなら、少しは常識的に動いてよね。


「あー、うん、大丈夫。昨日の夜中にちょっと――色々あって……ははは」

 直視出来ないほどに素敵な笑顔だったので、不覚にも照れてしまって目線を逸らした。


 それがいけなかった。


「――そーぢ様はお若いですしと御座いますのでしょうね。僭越ながら、私のこの駄肉などでしっぽりぬっぽりとご奉仕させて頂いて、天にも昇る安眠を貪って頂けますよう、誠心誠意にお手伝い致しましょう。夜伽に御座いましたら依存するほどご満足させて差し上げれるかと自負致しておりますゆえ」

 息を飲むほどに凄く艶っぽい笑顔とあざとい仕草で、美人さん――しかもメイドさんが言うと洒落にならない不穏当な台詞を並べまくる金髪メイドさん。

「――ナニか勘違いしてません? 違うからね? 姉さんが居なくて悶々とナニかしてたわけではないからね? ――ホント、勘弁して下さい」

 当然、呆れた口調になりつつも真剣に否定するオレ。
 
「――冗談に御座います。そのような情事が万一にでも華奈子ハナコの耳に入れば……私などは軽く消されてしまいますゆえ。――そーぢ様が内密にして頂けるのでしたら……勿論、冗談で済ませたりは致しませんけれど」

 茶目っ気のある悪戯っ子の可愛いらしい笑顔になって――ではあるけれど、やっぱり押して引かない金髪メイドさん――くっ、中々に手強い!


 それに姉さんの名は『かなこ』であって、『ハナコ』ではありませんよ?


「だ~か~ら~! 年下を揶揄わないで下さいって! その素晴らしきメイドの奉仕精神の気持ちだけ、有り難く受け取っておきますから!」

 姉さんにバレるバレないの問題ではないから!
 そんなことはオレは望んでませんから!

「あら残念。――その気になればいつでもお呼び付け下さいませ、そーぢ様。私は、いつでもどこでも若い殿方の渦巻くリビドー性的衝動を、この駄肉は元より全身で受け止めて差し上げる所存で御座いますゆえ。――さて、そろそろ参りましょう」

 豊満な胸を寄せて上げて見せつけて、どうあってもソコに誘導してくる金髪メイドさん。


 真面目に話を聴いて下さい!
 お願いだから聴きなさい!
 オレは年上――それも女性に良く揶揄われたりするけど、此処まで容赦のないパターンは貴女だけですって――とほほ。


「あのね、渦巻いていから! ――ホント、もう、勘弁して下さいって!」

 肩を落として両手を合わせ、ごめんなさいの仕草で懇願するオレ。


 義祖父じーちゃんトコのメイドさんだからと諦めて気を取り直し、玄関からそそくさと出ていくオレ。


 そして――。


 目の前に止まっている車を見やってビックリした!


「どうでしょうか、そーぢ様? 折角ですので、私の自家用車でお迎えに参上致しました」

 優雅な佇まいは一切崩さずに、しれっと右座席――助手席のドアを上に持ち上げてエスコートするメイドさん。


 ナニが折角なのか教えて欲しいね……。


「コレを自家用車と言っちゃいますか? ホント、貴女は規格外のメイドさんで確定ですよ」

 やっぱり呆れた口調で話すオレ。

「お褒めに与り光栄に存じます――あとは陸自払い下げの戦車なども所有しております」

 優雅な佇まいで和かに礼を述べるメイドさん。


 いや、全く褒めてないからね?
 何処のメイドさんが世界のカウンタック、しかもクソ高い真っ赤なランボルギーニ・ディアブロって言うスーパーカーを、自家用車として平然と所有できるんですか?
 確か、数千万円はくだらない車ですよね?

 更に、戦車ってなんです?
 オレはナニも聴いてはいないですよ?
 軍の払い下げを買い取るにしても、相当なお金が必要ですよね?
 そこまでして買い取って、一体、ナニやらかす気ですか? 
 何処かと戦争でもする気ですか、貴女は?


 それよりも――御給金いくら貰ってんですか、貴女は?



 ―――――――――― つづく。
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