御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Act.08 指輪から始まる非日常について。②

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 悪い夢にうなされたかのように動悸が激しく、寝巻きをベタベタにするほどに凄い量の寝汗をかいていた。

 着替えようと布団から上半身を起こすと、両目から頬を伝う熱い滴が膝の上にポタポタと落ちて、寝巻きのズボンと布団を濡らした。

「――あれ? 泣いている? ――オレが? なんで?」

 寝巻きの袖で目頭を拭うオレ。

 濡らしたのが解るほどに、仄かな桃色の灯りが部屋全体を優しく包んでいた。


「寝る時はいつも部屋は真っ暗にするのに? この淡い灯りはなんだ――」

 怪訝に思って光源を探してみると、枕元に置いてあった小箱が、仄かに桃色に光っていた。

「――なんだろうね?」

 徐に手に取って、そっと箱を開けてみる。

 中を確認すると、昨日貰った対なる指輪が、其々、紅く白く仄かに光っていた。
 蓋を開けて暫くすると、ナニ事もなかったの如く沈静していった――。

 いつも通りの真っ暗に戻ってしまったので、部屋の照明を手元のリモコンを使って点けるオレ。

「――夢? ――にしては不思議な感じがしたけど? ――ナニ?」

 右手で頬杖をつき、左手で指輪の収まった箱をポンポンとお手玉しつつ見やり、たった今起きた摩訶不思議な現象を、思考を巡らせ考察してみるオレだった。

「昔、義父とうさんが言っていた――宿ってヤツを体感したとかなのかな?」

 当時、聴いた時は面と向かって否定せず、摩訶不思議な現象だねって軽く笑い飛ばそうとした。


 現代――現実にもそれは


 そう義父とうさんが真面目に言うもんだから、聴いた時は流石に驚いたんだっけ?

 義父とうさんほどには未だ詳しく理解できてはいないけど、確か……。
 現代科学的に解釈すると、電気信号が水に溶けてうんたらかんたら、とか――。


 そんな難しいことをオレに理解しろなんて無理!


 まぁ、秘宝中の秘宝って義祖父じーちゃんも言ってたからね……そんなこともあるんじゃないの?


 ――伏木家では、こう言った類いの摩訶不思議現象なんてのは日常茶飯時だと、義父とうさんはいつも笑って言ってたし、実際、オレもそう思う。

 歳を取らない義祖父じーちゃんとか、結構、良い歳の筈なのに幼女姿のままのアリサさんとかが解り易くて良い例だね。


 普通だったら絶対に有り得ない事例だから。


 現代で――現実に不老不死で病気にも無縁って時点で、妖怪とかモノの怪、歴史に名高い吸血鬼とか悪魔とかじゃないのかって、本気で思った頃もあったし――。
 改めて思い出すと笑えるけど。


 この程度のことでいちいち驚いてたら身が持たないと言うより、伏木家には絶対に出入り出来ないと思うよ。

 実際、もう慣れっこなので気にするだけ無駄だと思うね。

 義父とうさんの口癖――、


 疑問に思ったら負け。


 ――を適用するとしますか?

 事実のみを受け入れて、あとは放っておくに限る――だっけ?

「……寒っ⁉︎」

 考えることに夢中で、着替えるのをすっかり忘れてた――。
 風邪でも引いたら大変だよ!
 
 部屋の箪笥から即効で替えを取り出して着替え、さぁ寝ましょうかと布団に入ろうとして――、


 嫌なことにふと気付く。


「えー⁉︎ オネショしたみたいになってんじゃん⁉︎」

 そう。大量の寝汗の所為で、敷布団のシーツがグッショリ。

 もうね、小さなお子様がやらかしちゃったかのような、それはもう素敵で立派な世界地図が敷布団一杯に描かれていた。


 黄ばんでないのがせめてもの救いだね。


 止むなく予備の敷布団を押入れからとっとと取り出して、ベタベタのシーツを面倒臭いので敷布団なり全部を取り替えた。

 姉さんが居てコレを見られていたら、真相はともかくとして、まず間違いなく弄られるハメになってたね。


 ひん剥かれ強制的におむつを履かされるとか、おまるを用意するとか。
 最悪、赤ちゃんプレイまでを強要させられるかも――姉さんは容赦ないから。

 
 部屋に備え付けの小さな冷蔵庫からお茶を取り出して煽ったあと、取り替えたばかりの布団にサッサと潜り込む。

「はぁ……夜中にナニをやってんだか。――寝よ寝よ」

 自嘲気味な苦笑いで呟いたオレ。
 壁掛け時計を見ると、既に夜中の四時を回っていた。

 明日も早い。

 摩訶不思議現象をあんまり――全く気にせずにもう一眠りする、結構図太い神経のオレだった――。



 ―――――――――― つづく。
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