御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Act.10 会議から始まる非日常について。②

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 とりあえず狼狽しないように深呼吸をして、ランボルギーニに乗り込むオレ。

 脚を投げ出し寝っ転がる姿勢で座りガルウィングドアを閉じると、最早、車と言う感覚ではなかった――。
 
 朝の出勤時間――通勤ラッシュの時間帯だと言うのに何故か車が一台も見当たらず、信号にも引っ掛からず、モノの数分――あっという間に会社に到着してしまうオレ。

 その間は、まるで遊園地のゴーカートに乗って、ジェットコースターを満喫しているかのような妙な気分だった。


 ◇◇◇



「――よ! 昨日ぶり!」

 メイドさんを伴ってエントランス奥の受付嬢に、昨日と同じ軽い挨拶で社員証を手渡すオレ。

「お早う御座いま――なんだ、御手洗く……⁉︎ ――本日はようご用件で、この私に話し掛けて頂いてるんでしょうか? ――当て付けで御座いましょうか?」

 オレから社員証を受け取って目を見開き固まる受付嬢。


 直ぐ様、いつものスマイルは封印され、ちょっと怖い感じの冷たい他人行儀な営業スマイルで語気荒く告げてきた。


「ちょ、待って⁉︎ ――ナニかおかしくね⁉︎ なんでそんな風になんの⁉︎」

「――知らない! 御手洗くんの馬鹿っ! えっちっ! 大っきいのが良いなんてサイテーっ!」

 専用のリーダーに即効で通し、罵倒しながら投げ返してきた受付嬢。
 そして、ツーンとそっぽを向いてしまった。

「そーぢ様は大事な御用が御座いますゆえ、失礼致します。乳臭い小――ケホケホ。受付嬢は放っておいて行きましょう」

 オレの腕を取って組むと、差し向かいのエレベーターへといざなう金髪メイドさん。


 今、受付嬢に向かって不穏当な台詞を言い掛けたような……うわ、すっごい怖い笑顔⁉︎


 金髪メイドさんに引き摺られ連行されるオレが見た受付嬢は、目から火花が散っているのを幻視できるほどに、金髪メイドさんを鋭く睨み付けていた。

 ついでに連行されるオレにも、あっかんべーをお見舞いしてきた。


 ――って、なんで朝っぱらから妙な修羅場になってんの⁉︎
 全く意味が解らないんだけど⁉︎


 そんな風に思っているオレのことなんて全く無視の金髪メイドさん。

 豊満な胸の谷間にしっかり腕を拘束されて、三階にある会議室に到着するまで文字通り連行されるオレ。

 廊下で擦れ違う社員さん達の妬む視線や鬼気迫る視線が、オレを容赦なく突き刺した。

 こちらを見やってヒソヒソと話をしている女性社員の多さがやたらと目立ち、男性社員からはリア充爆発しろと言った妙な殺気が……。

 なんとか逃れようと必死になって踠いてみるが抵抗虚しく……結局はそのまま会議室に到着するのだった。

 踠く度に柔らかい感触がオレの腕を容赦なく包むのには、正直、参ったけど。

「クリストファー社長――そーぢ様をお連れ致しました」

 会議室のドアをノックしたあとで、用件を述べる。
 返事を待つことなくドアを開けて、中に誘う金髪メイドさん。


 豊満な胸の谷間に、未だにオレを拘束したままで。
 そのまま義祖父じーちゃんの隣の席まで引っ張っていかれた。


 メイドさんは律儀にもクリストファー呼びですか――そんなことはどうでも良いけど、いつまで引っ付くおつもりです?


 会議席に座る沢山の重役さん達も一斉に立ち上がり、オレに頭を下げてきた。

 やっと腕の拘束を解いて義祖父じーちゃんの隣の座席を引きオレを座らせる。
 自由になったことでホッとしたオレは、深く凭れ掛かかるように座席に座った。

 上座って場所は本来ならオレ如きが座って良い場所ではない。
 いつもの店長会議だったら、中ほどの席に座って話を聴いてるんだけど。

「うむ。ご苦労――控えておれ」

 社長らしい貫禄を纏い、ビシっとしたスーツ姿に身を包む義祖父じーちゃん
 葉巻型電子煙草を咥えてドッシリ座ったままに、金髪メイドさんを一喝する。

「――畏まりました」

 礼を尽くした優雅な作法で挨拶をすると、スッと下がってオレの直ぐ後ろで待機した。


 ただ、直ぐ後ろに控えて居ると言うのに居ない気がする――錯覚を感じたくらい、気配が全くしなくなった金髪メイドさんだった。


 貴女はメイドの姿を騙る暗殺者かナニかですか? 妙に怖いんですけど?


「――さて、皆の衆。良くぞ集まってくれた。我が孫の未来の切なる願いを叶える為に、私が直々に陣頭指揮を取る。――万一にも失敗は許されない。命はないと知れ、皆の衆」

 座ったままで、オレ以外のヒトに見せる社長らしい貫禄で、恐ろしいほどの威圧を掛けながら、重役さん達に恐ろしい内容を重々しく告げた。


 ――コレは相変わらず病的に未来さんラブで押し通す気なのかな?


「――だが、今回の件の総指揮については、我が孫のそーぢに一任することにした。皆の総力を挙げてそーぢに力を貸してやって欲しい。――これこの通り、私からも是非に頼む」

 徐に席を立って、重役の皆さんに頭を下げる義祖父じーちゃん

 直立不動の重役の皆さんも、オレに向き直って深く頭を下げる。

「――全ては我が孫の未来の為、そーぢの為に、全てを捧げ死力を尽くし尽力せよ! 良いな! 心してかかれ!」

「「「「「ハハーッ!」」」」」

 ナニやら不穏当な台詞で皆を一喝する義祖父じーちゃん

 頭を上げた重役の皆さんも姿勢を正し、胸に拳を突き付け意気込みを表す香ばしいポーズを取った。


 えーと……今日は重役会議と違った?
 なんで何処かの王様のノリ?
 はたまた敵陣に乗り込むか迎え打つかな軍隊のような受け答えしてんの? ナニコレ? 



「――では、そーぢよ。後は頼む」

 オレの肩をポンと軽く叩き、自分の席に座る。

 それを合図に重役の皆さんが一斉に座って、背水の陣の如く真剣な眼差しでオレを注視した。


 ――ゴクリと息を飲んで。


「えーと――それでは今から会議っぽいモノを始めたいと思いまーす。――皆さんはこちらを適当にご覧下さい。先ず手初めに――」

 持ってきたタブレットのデータを、大きなホワイトボードに投射して内容を説明していく、ガッカリと言うかげんなりしてたオレ。


 まさかの丸投げときたね――。


 結局は義祖父ぢーちゃんの鶴の一声で可否が決まったも同然。
 俺が提示する構想の全てが、反対意見もなく罷り通るってわけだ……。


 それは会議とは言わず、ただの説明会って言うんだよ――。

 
 もうね、重役さん達はそんな真剣な目で見ずに適当に聴いてて下さい。
 オレなりに頑張って遣り遂げるから良いよ、うん。


 集まってもらった重役の皆さんには、申し訳ないけどね――とほほ。



 ―――――――――― つづく。
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