53 / 100
2章 王城と私
03 アレクの事情
しおりを挟む
「トリス! と、クルス… アレクまで… いや、アレクサンダー様?」
「ふふふ、団長ちゃん、びっくりしてたね~。目ん玉飛び出そうだったよ~」
見てたの? ぶー。
「そりゃ~。ねぇ… てか、いいの? 後ろのご令嬢達。ちょっと怖いんですけど。めっちゃ睨まれてるし、こっちに来ないでよ」
アレク達の後方に10人ぐらいの人集りが出来ている。全部ご令嬢。しかも何気にちょっと距離が遠い。
「ぶはっ。来るなとか、王子様に言う~?」
「さっきのドーンの気持ちが少しだけ理解出来たわ。はぁ~だって… 目立たないようにしてたのに。あれは明らかにアレク目当てでしょう?」
「あぁ。無視しろ。あれ以上は近寄って来ないから害はない」
アレクは冷徹な顔がいつもより凄味が増している。
「大変ね、王子様も。てか、あなた達はどうして居るの? 多分だけど、アレクの従者なのかな?」
「そう、俺とクルスは始めからアレクの護衛兼お話相手? 主だよ」
「ふ~ん。第7に居たのはなぜ? あんまり人気のない騎士団だったからもしかして隠れてたの?」
「隠れるって訳では無いが… 今思えば第7は俺の試験場だったんだろう?」
「試験?」
「後継者としての資質や能力を試していたんじゃないか?」
「なるほど… 私が言うのも何だけど、その~残念だったわね。アレクは後悔はない?」
「ない。いい勉強になった。騎士団で上に行くには力が全てだと思っていた節があったからな… 管理能力や人望も必要だとお前から垣間見えた。感謝する。でも、ようやく迷いは消えたんだ。俺は総騎士団長を目指す事にしたよ」
「へぇ~。がんばってね」
「軽いな。『がんばってね』じゃない。お前と俺は今日からライバルだ」
「はぁ? 私、総団長なんて狙ってないけど? 出来れば平穏に… 最終的には第7に戻りたい。もしくは田舎でのんびりしたい。なんせ私はモンバーンだしぃ~」
アレクは驚いた後、お腹を抱えて笑ってくる。てか、後ろのお嬢様方が大変だ。失神者いるんじゃない? 『ぶはっ』『うっ』と鼻やら胸を押さえてヘナヘナと座り込んでいる。
「ちょっと、アレク、笑うの禁止! こらっ。トリスもクルスも! う、後ろ見て!」
トリスは『おいおい勘弁してくれよ~』とお嬢様方の方へ、クルスは近くの警備騎士を呼びに行く。
「アレク。前に笑った方がいいと言ったけど… プライベート限定がいいのかな? ちょっと引くわ。そのモテっぷり」
「… 俺も好きでこんな状態になったんじゃない! だから女は… 顔や爵位しか見てない女には興味がない」
倒れているご令嬢達にわざと大きな声で言い放つアレク。拗らせてるね~。
「ははは。私も言ってみたいよ、そのセリフ。イケメン限定だから無理だけど。ふふふ」
「ははは。って、その耳飾り… もしかしてドーン先生が?」
アレクは私の耳に少し触れてから、後ろのドーンを睨む。
「先生はよして下さい。もうあなたとは師弟関係ではないのですから。まして、第7同士の同僚でもなくなりますしね。それに、団長の耳から手を離しなさい。ここは夜会だと言う事を忘れない様に」
結構トゲトゲした会話だな。どうした? ドーン。過保護過ぎない?
「まぁまぁ、アレクもドーンも。今日はパーティーなんだし、美味しい料理もあるしね。仲良くしようよ~」
「別に、ケンカしてる訳じゃない。ドーンが勝手に殺気立ってるだけだ」
ふふ~んとアレクはドーンを無視し、私の手をとって会場の中央へ行こうとした。
が、私が踏ん張った。
ちょっとつんのめった私は、アレクの手を離し両肩を上げてハニカム。
「ご、ごめん。多分ダンスをしようと誘ってくれたのかな? 私、実は踊れないし、やっぱり目立ちたくないんだ。ごめんね」
「ん? そうか。なら、庭園が見えるバルコニーにでも行かないか?」
「それも… そうだ! 料理を食べよう! 美味しいよ!」
アレクは諦めたのか、苦笑いで私の手を離してくれた。
が、最後、手の甲にキスをして優しく微笑んだ。
おいおいおい! 何してんだよ! めっちゃ見られてるじゃん!
「では、また今度お誘いしますラモン嬢。出会えた奇跡を女神に感謝を」
アレクは最後は紳士らしく一礼して人混みに消えて行った。
「… 何あれ? へ?」
私がボ~ッとアレクの背中を見送っていると、ドーンがスタスタとやって来て、手をめっちゃ拭いている。
「団長? 団長?」
「は?」
「その顔… 冷ましましょう。こちらへ」
と、ドーンと再び料理コーナーへ戻る。ドーンは冷たいジュースを用意してくれて、椅子まで持って来てくれた。
「あの、小僧… 調子に乗りやがって」
「え?」
「何でもございません。それより大丈夫ですか? 落ち着きましたか?」
「あ~、うん。ちょっとびっくりしただけ」
「まぁ、夜会ではよくある事ですから。慣れた方がよろしいでしょう」
「ふへ~、よくあるんだ。世のお嬢様方はすごいんだね。驚きもしないんでしょうね。私には無理っぽいわ」
手でパタパタと顔を仰ぐ。
「もう一杯もらって来ますね?」
「ありがとう」
ドーンが席を離れると、座っている私の前に影が落ちる。誰だろう?
びちゃ~。ごつごつ。
飲み物と氷が何個か頭に浴びせられた。カッチカチの氷が地味に痛い。
「貴方、見た事ないわね… ドレスが濡れたんですもの。さっさと帰りなさい」
『ふん』と両手を組んで私を睨むどこぞのお嬢様。周りには5~6人の取り巻きも居る。
ドーン… 私って… タイミング悪くない?
『今日の占いは小凶 小さな事が積み重なってストレスが増えるでしょう』
「ふふふ、団長ちゃん、びっくりしてたね~。目ん玉飛び出そうだったよ~」
見てたの? ぶー。
「そりゃ~。ねぇ… てか、いいの? 後ろのご令嬢達。ちょっと怖いんですけど。めっちゃ睨まれてるし、こっちに来ないでよ」
アレク達の後方に10人ぐらいの人集りが出来ている。全部ご令嬢。しかも何気にちょっと距離が遠い。
「ぶはっ。来るなとか、王子様に言う~?」
「さっきのドーンの気持ちが少しだけ理解出来たわ。はぁ~だって… 目立たないようにしてたのに。あれは明らかにアレク目当てでしょう?」
「あぁ。無視しろ。あれ以上は近寄って来ないから害はない」
アレクは冷徹な顔がいつもより凄味が増している。
「大変ね、王子様も。てか、あなた達はどうして居るの? 多分だけど、アレクの従者なのかな?」
「そう、俺とクルスは始めからアレクの護衛兼お話相手? 主だよ」
「ふ~ん。第7に居たのはなぜ? あんまり人気のない騎士団だったからもしかして隠れてたの?」
「隠れるって訳では無いが… 今思えば第7は俺の試験場だったんだろう?」
「試験?」
「後継者としての資質や能力を試していたんじゃないか?」
「なるほど… 私が言うのも何だけど、その~残念だったわね。アレクは後悔はない?」
「ない。いい勉強になった。騎士団で上に行くには力が全てだと思っていた節があったからな… 管理能力や人望も必要だとお前から垣間見えた。感謝する。でも、ようやく迷いは消えたんだ。俺は総騎士団長を目指す事にしたよ」
「へぇ~。がんばってね」
「軽いな。『がんばってね』じゃない。お前と俺は今日からライバルだ」
「はぁ? 私、総団長なんて狙ってないけど? 出来れば平穏に… 最終的には第7に戻りたい。もしくは田舎でのんびりしたい。なんせ私はモンバーンだしぃ~」
アレクは驚いた後、お腹を抱えて笑ってくる。てか、後ろのお嬢様方が大変だ。失神者いるんじゃない? 『ぶはっ』『うっ』と鼻やら胸を押さえてヘナヘナと座り込んでいる。
「ちょっと、アレク、笑うの禁止! こらっ。トリスもクルスも! う、後ろ見て!」
トリスは『おいおい勘弁してくれよ~』とお嬢様方の方へ、クルスは近くの警備騎士を呼びに行く。
「アレク。前に笑った方がいいと言ったけど… プライベート限定がいいのかな? ちょっと引くわ。そのモテっぷり」
「… 俺も好きでこんな状態になったんじゃない! だから女は… 顔や爵位しか見てない女には興味がない」
倒れているご令嬢達にわざと大きな声で言い放つアレク。拗らせてるね~。
「ははは。私も言ってみたいよ、そのセリフ。イケメン限定だから無理だけど。ふふふ」
「ははは。って、その耳飾り… もしかしてドーン先生が?」
アレクは私の耳に少し触れてから、後ろのドーンを睨む。
「先生はよして下さい。もうあなたとは師弟関係ではないのですから。まして、第7同士の同僚でもなくなりますしね。それに、団長の耳から手を離しなさい。ここは夜会だと言う事を忘れない様に」
結構トゲトゲした会話だな。どうした? ドーン。過保護過ぎない?
「まぁまぁ、アレクもドーンも。今日はパーティーなんだし、美味しい料理もあるしね。仲良くしようよ~」
「別に、ケンカしてる訳じゃない。ドーンが勝手に殺気立ってるだけだ」
ふふ~んとアレクはドーンを無視し、私の手をとって会場の中央へ行こうとした。
が、私が踏ん張った。
ちょっとつんのめった私は、アレクの手を離し両肩を上げてハニカム。
「ご、ごめん。多分ダンスをしようと誘ってくれたのかな? 私、実は踊れないし、やっぱり目立ちたくないんだ。ごめんね」
「ん? そうか。なら、庭園が見えるバルコニーにでも行かないか?」
「それも… そうだ! 料理を食べよう! 美味しいよ!」
アレクは諦めたのか、苦笑いで私の手を離してくれた。
が、最後、手の甲にキスをして優しく微笑んだ。
おいおいおい! 何してんだよ! めっちゃ見られてるじゃん!
「では、また今度お誘いしますラモン嬢。出会えた奇跡を女神に感謝を」
アレクは最後は紳士らしく一礼して人混みに消えて行った。
「… 何あれ? へ?」
私がボ~ッとアレクの背中を見送っていると、ドーンがスタスタとやって来て、手をめっちゃ拭いている。
「団長? 団長?」
「は?」
「その顔… 冷ましましょう。こちらへ」
と、ドーンと再び料理コーナーへ戻る。ドーンは冷たいジュースを用意してくれて、椅子まで持って来てくれた。
「あの、小僧… 調子に乗りやがって」
「え?」
「何でもございません。それより大丈夫ですか? 落ち着きましたか?」
「あ~、うん。ちょっとびっくりしただけ」
「まぁ、夜会ではよくある事ですから。慣れた方がよろしいでしょう」
「ふへ~、よくあるんだ。世のお嬢様方はすごいんだね。驚きもしないんでしょうね。私には無理っぽいわ」
手でパタパタと顔を仰ぐ。
「もう一杯もらって来ますね?」
「ありがとう」
ドーンが席を離れると、座っている私の前に影が落ちる。誰だろう?
びちゃ~。ごつごつ。
飲み物と氷が何個か頭に浴びせられた。カッチカチの氷が地味に痛い。
「貴方、見た事ないわね… ドレスが濡れたんですもの。さっさと帰りなさい」
『ふん』と両手を組んで私を睨むどこぞのお嬢様。周りには5~6人の取り巻きも居る。
ドーン… 私って… タイミング悪くない?
『今日の占いは小凶 小さな事が積み重なってストレスが増えるでしょう』
87
あなたにおすすめの小説
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる