79 / 100
2章 王城と私
29 石の雨
しおりを挟む
私はクルスの手に掴まり廊下を歩くがそれらしき人物がいない。
トイレに続く廊下なのでチラホラと人は居るから、フードをかぶっているなら結構目立つと思うんだけどな。
何処だろう?
「居ないねぇ」
「そうだな。誘き寄せるんだから人気がない所じゃないか? 廊下の先の庭かもしれない」
「あぁ。今日はそこまでは人は行かないか」
どうしようか。まだ応援は来ないし。
「ちょっとクルスごめん」
と、私はドレスの裾を持ち上げてヒールを脱ぐ。
ふ~。これで足は動くぞ。
「お前! こんな所で脱ぐやつがあるか! さっさと足をしまえ」
クルスは大慌てで目を隠している。
はいはい、すんませんね。よっと。脱いだ靴を持って廊下の隅へ置いた。
「いや~、万が一って事もあるでしょう? 足が動かなきゃやられちゃうじゃん?」
「は~。びっくりさせるなよ。どの道、ドレスなんだし大して暴れられないだろう?」
「まぁ、そうなんですけどね」
私とクルスは十手を手に持って廊下の先、庭へ出て来た。
パーティー会場とは打って変わり、静かで風に花々が揺れている。そして誰もいない。
「やっぱり誰も居ないね。令嬢達の手の込んだイタズラ?」
「う~ん。イタズラにしては具体的すぎな様な気もするが…」
ヒュっ。
氷の矢がクルスの頬を掠める。
2人でバッと矢が飛んで来た方へ構えた。
2発目、3発目と次々に矢が飛んでくる。私達は十手でそれを打ち払いながらお互いに間を取ってアイコンタクトを送り合う。
暗くて庭の奥がよく見えない。このままじゃ矢を払うだけで手一杯だ。
「誰だ!」
クルスが暗闇に叫ぶが返事はない。矢は容赦無くまだまだ飛んで来る。
「クルス、どうする? 進む? 後退する? 矢の感じだと相手は一人っぽいけど?」
「お前はここにいろ。俺が先へ進む」
「了解。援護するわ」
私は光魔法で大きな光の球を打ち上げて周りを明るくした。クルスは一瞬驚いたが、振り向かず敵に向かって行く。
そして、下にゆっくり落ちてくる光に浮き出されたのは、フードを被った男性だった。あ~! 本当に居た!
「見つけた!」
クルスは逃げる敵を追いかける。あの感じ、誘導されてるっぽいけど勝算があるのかな? クルスは逃げた敵を追って暗闇に消えた。
今思えば、ここでクルスと離れてしまったのが良くなかった。うん。
「ふふふ、こんばんは」
私の後ろにもう一人居たのだ。気配を消されて、スッと首に剣を挿され背後を取られる。
しまった。
「ははっ、こんばんは。どちらのお嬢様かな?」
「随分余裕なのね? 団長さん。武器を向こうへ投げて」
「いえいえ、結構焦ってますよ?」
極力笑顔で対応しながら十手を放り投げる。腰にも何かを当てられてるし… この状況は振り向けないから本当に誰かわからない。声も聞き覚えがないし… クルスもなかなか戻って来ないし。てか、あっちも気になるな~。
「あなた本当に嫌味ね、余裕ぶっちゃって。それより高貴なあの方を怒らせたって分かってるのかしら?」
やっぱり… 王女様絡みか。
「誰だろう? よくわかりませんね~」
「ふふふ。まぁいいわ、応援が来られても厄介だから… サヨウナラ」
私の首を押さえていたナイフが下がり、腰に当たっていたモノが一瞬離れた。多分武器を振りかぶったんだろう。
チャンス。
私は思いっきり回し蹴りをする。う~ん、ドレス邪魔。ちょうどスカートが盾の様になったのはラッキーだったけど。そのまま敵を蹴りで押し切ると横に吹っ飛んだ。ナイフやらの武器がカランカランと飛び散る。
そのまま敵に馬乗りになって胸ぐらを掴む。
「で? 王女様が黒幕よね? あなたみたいな素人… 武器の扱いがなってないのよ。どこの令嬢? 何でこんな事するの?」
「ふっ、誰でも関係なくない? あなたもうすぐ死ぬんだし」
「この状況でまだ言う?」
敵の肩を足で押さえて周りを確認するが他に人はいない。何この余裕。
「仲間がいるの?」
「ふふふ」
侍女の格好をしているこの女性は捕まっているのになぜが抵抗しないし笑っている。
罠? 痩せ我慢? 考えろ、考えろ。何かヒントは? 全身を隈なく目視するが何もなさそうだ。
そうこうしているとドーンがユーキさんを連れてやって来た。
「団長! 大丈夫ですか?」
「おい、魔法を察知したぞ? 誰か使ったのか?」
あちゃ~、第6の結界に触ってしまった?
「すみません。私が援護射撃で1度だけ魔法を使用しました。ドーン、コレ代わってくれる? あっちにクルスが別の敵といるのよ。まだ戻って来ないし… ユーキさん任せていいですか?」
と、私がドーンを振り向いた瞬間、敵が舌打ちした。
私は観念して悔しがっているんだと思っていたら、ドーンがすごい顔で走るスピードを上げた。
「危ない! 離れて!」
「え?」
再度、敵の方を向くと敵が空を見て笑っている。そう、さっきの『チッ』は魔法の発動音だったのだ。
口の中にスイッチを仕込んでいたのか…
幾千、幾万の大量の石? が頭上に現れ降り注ぐ。
口の中か~、やられたなぁ。
頭上の石はスローモーションでゆっくり降ってくる様に見える。
これが走馬灯のスピード? 私死ぬのか… はぁ。
中途半端だったなぁ。まだやりたい事あったのに。てか、早くない? 転生して1年弱だよ?
女神様! こんなのってあり?
ドーン。
目と鼻の先まで石が迫る。
トイレに続く廊下なのでチラホラと人は居るから、フードをかぶっているなら結構目立つと思うんだけどな。
何処だろう?
「居ないねぇ」
「そうだな。誘き寄せるんだから人気がない所じゃないか? 廊下の先の庭かもしれない」
「あぁ。今日はそこまでは人は行かないか」
どうしようか。まだ応援は来ないし。
「ちょっとクルスごめん」
と、私はドレスの裾を持ち上げてヒールを脱ぐ。
ふ~。これで足は動くぞ。
「お前! こんな所で脱ぐやつがあるか! さっさと足をしまえ」
クルスは大慌てで目を隠している。
はいはい、すんませんね。よっと。脱いだ靴を持って廊下の隅へ置いた。
「いや~、万が一って事もあるでしょう? 足が動かなきゃやられちゃうじゃん?」
「は~。びっくりさせるなよ。どの道、ドレスなんだし大して暴れられないだろう?」
「まぁ、そうなんですけどね」
私とクルスは十手を手に持って廊下の先、庭へ出て来た。
パーティー会場とは打って変わり、静かで風に花々が揺れている。そして誰もいない。
「やっぱり誰も居ないね。令嬢達の手の込んだイタズラ?」
「う~ん。イタズラにしては具体的すぎな様な気もするが…」
ヒュっ。
氷の矢がクルスの頬を掠める。
2人でバッと矢が飛んで来た方へ構えた。
2発目、3発目と次々に矢が飛んでくる。私達は十手でそれを打ち払いながらお互いに間を取ってアイコンタクトを送り合う。
暗くて庭の奥がよく見えない。このままじゃ矢を払うだけで手一杯だ。
「誰だ!」
クルスが暗闇に叫ぶが返事はない。矢は容赦無くまだまだ飛んで来る。
「クルス、どうする? 進む? 後退する? 矢の感じだと相手は一人っぽいけど?」
「お前はここにいろ。俺が先へ進む」
「了解。援護するわ」
私は光魔法で大きな光の球を打ち上げて周りを明るくした。クルスは一瞬驚いたが、振り向かず敵に向かって行く。
そして、下にゆっくり落ちてくる光に浮き出されたのは、フードを被った男性だった。あ~! 本当に居た!
「見つけた!」
クルスは逃げる敵を追いかける。あの感じ、誘導されてるっぽいけど勝算があるのかな? クルスは逃げた敵を追って暗闇に消えた。
今思えば、ここでクルスと離れてしまったのが良くなかった。うん。
「ふふふ、こんばんは」
私の後ろにもう一人居たのだ。気配を消されて、スッと首に剣を挿され背後を取られる。
しまった。
「ははっ、こんばんは。どちらのお嬢様かな?」
「随分余裕なのね? 団長さん。武器を向こうへ投げて」
「いえいえ、結構焦ってますよ?」
極力笑顔で対応しながら十手を放り投げる。腰にも何かを当てられてるし… この状況は振り向けないから本当に誰かわからない。声も聞き覚えがないし… クルスもなかなか戻って来ないし。てか、あっちも気になるな~。
「あなた本当に嫌味ね、余裕ぶっちゃって。それより高貴なあの方を怒らせたって分かってるのかしら?」
やっぱり… 王女様絡みか。
「誰だろう? よくわかりませんね~」
「ふふふ。まぁいいわ、応援が来られても厄介だから… サヨウナラ」
私の首を押さえていたナイフが下がり、腰に当たっていたモノが一瞬離れた。多分武器を振りかぶったんだろう。
チャンス。
私は思いっきり回し蹴りをする。う~ん、ドレス邪魔。ちょうどスカートが盾の様になったのはラッキーだったけど。そのまま敵を蹴りで押し切ると横に吹っ飛んだ。ナイフやらの武器がカランカランと飛び散る。
そのまま敵に馬乗りになって胸ぐらを掴む。
「で? 王女様が黒幕よね? あなたみたいな素人… 武器の扱いがなってないのよ。どこの令嬢? 何でこんな事するの?」
「ふっ、誰でも関係なくない? あなたもうすぐ死ぬんだし」
「この状況でまだ言う?」
敵の肩を足で押さえて周りを確認するが他に人はいない。何この余裕。
「仲間がいるの?」
「ふふふ」
侍女の格好をしているこの女性は捕まっているのになぜが抵抗しないし笑っている。
罠? 痩せ我慢? 考えろ、考えろ。何かヒントは? 全身を隈なく目視するが何もなさそうだ。
そうこうしているとドーンがユーキさんを連れてやって来た。
「団長! 大丈夫ですか?」
「おい、魔法を察知したぞ? 誰か使ったのか?」
あちゃ~、第6の結界に触ってしまった?
「すみません。私が援護射撃で1度だけ魔法を使用しました。ドーン、コレ代わってくれる? あっちにクルスが別の敵といるのよ。まだ戻って来ないし… ユーキさん任せていいですか?」
と、私がドーンを振り向いた瞬間、敵が舌打ちした。
私は観念して悔しがっているんだと思っていたら、ドーンがすごい顔で走るスピードを上げた。
「危ない! 離れて!」
「え?」
再度、敵の方を向くと敵が空を見て笑っている。そう、さっきの『チッ』は魔法の発動音だったのだ。
口の中にスイッチを仕込んでいたのか…
幾千、幾万の大量の石? が頭上に現れ降り注ぐ。
口の中か~、やられたなぁ。
頭上の石はスローモーションでゆっくり降ってくる様に見える。
これが走馬灯のスピード? 私死ぬのか… はぁ。
中途半端だったなぁ。まだやりたい事あったのに。てか、早くない? 転生して1年弱だよ?
女神様! こんなのってあり?
ドーン。
目と鼻の先まで石が迫る。
62
あなたにおすすめの小説
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる