悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多

文字の大きさ
2 / 11

2. 公爵夫妻は満足する

しおりを挟む
 気味の悪い娘が屋敷からいなくなった。
 その事実に、サウザンテ公爵夫妻は大喜びしていた。

 普通なら、娘が断罪されたことを嘆くのだが、公爵夫妻は違っていた。

「これでもう、あの子にアクセサリーを買わなくていいのね!」

「ああ。昨日のうちに籍を外しておいたから、家名にも傷は付かない」

 というのも、この断罪はこの公爵夫妻が仕組んだことなのだ。

「原因が身内の争いごとだから、傷は付かないわ。それよりも、あの子が公爵家の娘でありながら商売をしていた方が問題だったのよ」

「それもそうだな。それに、殿下が断罪する日を教えてくれたおかげで、我が家から罪人を出さずに済んだ。
 殿下には感謝しかないよ」

 彼らは不満だったのだ。
 長女だからという理由で王子の婚約者にクラウディアが選ばれたことが。
 何故可愛いクラリスではなく、醜いクラウディアなのかと嘆いていた。

 そう思っていたから、王太子がクラリスに気があると知った時は大喜びした。
 そして、噂を流したのだ。

 普段、クラウディアは妹に嫉妬して虐めをしていると。

 その結果、噂はたちまち広がり、国王夫妻の耳に入るようになった。
 そして、国王夫妻が危機感を持ったことにより、トントン拍子に婚約破棄の話が進んだ。

 しかし、罪を追求する前に除籍しておかなければ、新たな婚約者の家が罪人を出した家となってしまう。
 そんな理由で、王家から事前に断罪の知らせを受けたのだった。

 そして断罪の日の昼までにクラウディアの籍を外した夫妻は、素知らぬ顔でパーティに参加していた。

 そして、パーティーを終えて満足して屋敷に戻り、今に至る。

「これであの子に文句を言われずに済むわ」

「ああそうだな」

「あの子、醜いくせに文句ばかり言ってきて鬱陶しかったのよ」

 そう口にする公爵夫人は高級なアクセサリーを、たくさん手に入れることを考えていた。
 今までは商人と親しいクラウディアによって、浪費を阻止されていたから。

「商人と仲良いのが厄介だったな。いくら公爵家の力があっても、あからさまな脅しは罪になってしまうからな」

 そう口にする公爵は今までよりも高級な食材を仕入れることを考えていた。
 公爵は美味しい料理が大好物なのだ。それでいて太っていないのは、優秀なシェフのお陰である。

「そうね。だから本当にクラウディアが居なくなってよかったわ」

 満足そうに口にする公爵夫人。彼女には親の心というものが無いようだった。
 普通の心があれば、実の娘の容姿が気に入らないと言って、アクセサリーを与えないことから始まる虐げをしないのだ。

 そんな時、会話に割り込む者がいた。

「そろそろクラリスお嬢様の今後についてのお話をされた方が良いかと思います」

「そうだったわ、教えてくれてありがとう」

「指摘してくれてありがとう、助かるよ」

 執事の指摘に、不満大会になっていたことを反省する夫妻。

 この後すぐに、クラリスの話で幸せな気分に浸るのだったが。
 国外追放されたクラウディアのことを親として心配すらしない夫妻を見た執事は、明らかに不信感を募らせていた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

復讐は静かにしましょう

luna - ルーナ -
恋愛
王太子ロベルトは私に仰った。 王妃に必要なのは、健康な肉体と家柄だけだと。 王妃教育は必要以上に要らないと。では、実体験をして差し上げましょうか。

婚約破棄された公爵令嬢は心を閉ざして生きていく

お面屋 おいど
恋愛
「アメリアには申し訳ないが…婚約を破棄させてほしい」 私はグランシエール公爵家の令嬢、アメリア・グランシエール。 決して誰かを恨んだり、憎んだりしてはいけない。 苦しみを胸の奥に閉じ込めて生きるアメリアの前に、元婚約者の従兄、レオナールが現れる。 「俺は、アメリアの味方だ」 「では、残された私は何のためにいるのですか!?」

妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏
恋愛
  「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」  双子の妹のステラリアはそう言った。  幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。  なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、 「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」  なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。 ※この作品は他サイトにも掲載されています。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

処理中です...