触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?

雪 いつき

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*シグルズと碧葉

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「シオン様って、ジンのこと好きな気がするんだけどな」
「私もそんな気がしている」
「シグルズの勘なら、そうなんだろうなぁ」

 そんな話をしながら、シグルズと湯船に浸かっている。屋敷に戻ったヌメヌメの俺たちは、まず風呂場に直行した。

 使用人が俺の服を脱がそうとしたところで、シグルズが「私がする」と言って俺を奪ったんだけど、その時の彼らの驚愕した顔が忘れられない。
 出て行く挨拶も忘れて震えながらそっと扉を閉めた姿は、申し訳ないけどコントみたいだなと思ってしまった。


「シオン様って、いい王様になりそう?」
「ああ。民を想う心と人柄もあるが、上に立つ者に必要な、人を見る目がある。……今回の裏切り者に関しては例外だったが」

 ジンは、最も信頼した人だと言っていた。シオン様が見抜けないほどに、きっと昔から心を許していた人だったんだろう。

「先程の兵たちの指揮にも生かされていたが、才能を見抜き、適切な場所に配置する能力がある。それが出来る者が、最も王に相応しい」
「そっか。それなら、ジンのことも適切な場所に置いてくれるよな」
「そうだな。今のままでは勿体ない」

 そう言って、湯の中で俺の腰に腕を回す。その腕を引き離そうとして、やめた。さっきも嫌がったのに体を隅々まで洗われて、何だかもう、今更だ。
 広い風呂の湯は温かくて、心もぽかぽかで、ほっこりする。
 ……そういやシグルズ、裸で抱き締めて欲しいって言ってたっけ。シグルズが抱き締める側でも、まあ、叶えたことになるよな。


「てか、前にこの屋敷にきた時もヌメヌメだったよな」
「ああ。あの時と違い、今はこの湯に浸かるのは二人だな」
「……なんか、言い方が気になるけど」

 まるで夫婦になって初めて入る風呂のような。そう思っている間に抱き上げられ、そばのベンチに下ろされる。……仰向けで。

「あのさ、なんかこれ、ベンチってか……」
「マッサージ用のベッドだ」
「金持ちかよ。金持ちだった」
「頑丈に作ってある。二人で乗っても余裕だ」
「そういう用途じゃないと思うけど?」

 覆い被さるシグルズをじっとりと見上げる。

「私と恋人になるという返事はまだ先でもいい。君を抱きたい」
「先でいいのかよ」
「ああ。……君が攫われたことを聞いた。君のその記憶を、私が書き換えたい」

 俺の髪を優しく撫でて、そっと目元にキスをした。


 あの時のことを思い出すと、恐怖で震える。でも、今俺を見下ろしているのはシグルズだ。

「……未遂、だし。……それに俺、ずっと」

 両手を伸ばし、シグルズの頬に触れる。滑らかな肌と、サラサラの髪。顔がいいから嫌悪感がないのかと思っていた時もあった。でもあの時、男たちに襲われて、はっきりと分かってしまった。

「ずっと……これはシグルズだ、って思い込んでたんだ。シグルズなら怖くない。……抱かれるなら、シグルズがいいって」
「っ、アオバ……」
「返事を待つ必要なんてないよ。俺は……シグルズのことが、好きだ」

 そう言って笑ってみせたら、すぐにシグルズに唇を塞がれた。
 ……やっぱり俺、シグルズの体温じゃないと駄目だ。
 熱くてぬるりとした舌の感触。あの男たちとは違う熱さ。肌に触れる手のひらも、弱い場所に触れる強さも、体温も、全てが心地好い。


「アオバ、愛している」

 頬を撫でられ、見つめられて、心臓が跳ねる。ドキドキと高鳴る鼓動。今までどうして平静でいられたのか分からないほど、今は真っ直ぐに見つめられず視線を逸らした。

「どうしよ……俺、……シグルズに挿れられたい」

 早く欲しくて素直に零せば、シグルズは愛しげに目を細める。そして手を伸ばし、そばの棚から何かを取った。小さな瓶の蓋を開ける指先をついジッと見ていると。

「うひゃっ! 何っ?」
「雰囲気のない声だな」
「すいませんねっ」

 つい普段通りに返したら、髪を撫でられて瞼にキスされる。

「マッサージに使う油だ。人体に害はない」

 シグルズはそれを今度は手のひらで温めて、ぬるりとした指を俺の体内に入れる。もう片手は胸に滑らせ、ツンと立ち上がった乳首を撫でた。

「ふっ……ぁ、んんっ」

 どちらもゆったりとした動き。下は解すためだからそれでいい。でも、胸は焦れったくて、シグルズの腕を掴んで身を捩った。


「シグルズ、そこ……」
「ここを、どうされたい?」
「っ……意地悪すんなよっ」
「言わないと分からないな」

 口の端を上げ、ますます動きは緩やかになる。頬や額にキスされて、意地悪と甘さを同時に与えられた。

「飴と鞭っ! んっ……そこ、をっ……摘んでくれっ」

 素直にねだると、ぬめる指で抓るように摘み上げられた。

「ひんッ……はっ、んンッ」

 望んだ刺激に、過剰に反応してしまう。摘んでは滑って離れ、また摘まれて、そのうちに爪が掠めるようになり、胸を突き出して悦がった。

「あっ、シグルっ……い、いいっ」

 男たちに摘まれた痛みが、シグルズの与える快感の記憶に変わっていく。シグルズになら、強く摘まれても痛くない。ただ、ただ、気持ちがいい。

「シグルズっ、も……挿れてっ」

 ふとあの時の記憶が蘇り、ぎゅっと目を閉じる。シグルズに与えられるこの気持ち良さに酔ったまま、シグルズを受け入れたかった。

「シグルズ……」

 脚を開き、挿れやすいように自分の手で太股を持ち上げる。そっとシグルズを見上げると……。


「っ……優しくしてやりたかったんだが」
「……ははっ、そんな限界ってモノしてて、余裕ぶるなって」

 お互いに裸で、シグルズのそれが反り返ってるのもよく見える。
 あの忌まわしい記憶が一瞬で上書きされる。俺のために一生懸命我慢して、可愛いな、と愛しさに胸が締め付けられた。

「焦らさないで、ここまで挿れてよ。あんたのが早く欲しい」

 自らの腹をそっと撫で、シグルズを煽る。いつもの対抗心じゃなく、本音だと示すようにシグルズの首に腕を回した。

「アオバっ……」
「ッ……!」

 熱いモノが触れた途端、ひと息に突き挿れられる。あまりの圧迫感に息が止まった。
 これ、やばっ……パキュの比じゃない……。
 太くて固い触手も、これよりは柔らかかった。こんなに圧迫感はなかった。多分、触手の方がむにむにして俺のナカで形を変えていた。でも……今は、俺のナカがシグルズの形に変えられてる。
 馴染むまで動きが止まり、そのお陰でじっくりとシグルズを感じることが出来る。ドクドクと血管が脈打ち、熱くて、このまま溶けてしまいそう。


「は……ぁ……シグルズの、だぁ……」

 ここまで入ってる……。
 シグルズが、俺のナカにいる。こんなに深くまで。そう思うと愛しくて、そっと腹を撫でた。

「っ、君はっ……」

 切羽詰まった声だな、と思った瞬間、痛いほどに腰を掴まれる。優しくしたかったのにと掠れた声が零れ、すぐに衝撃が襲った。

「ひッ……! いっ、あ、シグル、ズっ……」

 奥を突き上げられ、固いモノでゴリゴリとナカを擦られる。

「あっ、あ、シグルズぅっ……」
「アオバ……アオバ、好きだ」
「俺、もっ、俺も好っ……あっ、あぅッ」

 激しく揺さぶられ、奥を突かれる度に、チカチカと目の前に星が散る。一気に引き出される快感。全身が熱くて、胸がいっぱいで、ぼろぼろと涙が零れた。
 シグルズの背に回した手で引き寄せて、抱きしめて欲しいと訴える。すぐに願いは叶えられ、キスまでくれた。

「シグルズっ、俺っ、もぅっ……」

 泣きながら縋り付き、頬を寄せると、額に優しくキスされた。
 優しいキスと、熱を孕んだ瞳。胸がぎゅっとなり、ナカのシグルズも締め付けてしまう。

「っ、ああ……っ、一緒に」

 耳元に甘い囁きが落ちる。一際深い場所を突かれ、固い先端を押し付けられた。

「んぁっ、あッ――!」

 絶頂を迎えた体の奥に、熱い飛沫が放たれる。
 灼けそうな熱さに満たされて、泣きたいような、嬉しいような感情が込み上げ……そこで、意識は途切れた。



 ふっと意識が浮上する。
 体がぽかぽかと温かい。
 パシャ、と音がして、湯船の中かとぼんやりと考えた。

「……シグルズ」
「アオバ、目が覚めたか」
「ん……」

 シグルズ、いた。
 後ろから俺を抱きしめるシグルズの、腹に回る手を何となくそっと撫でる。

「無理をさせたな。すまない」
「……俺こそ、気絶してごめん。すごく……気持ちよくて……」

 まさかあれだけで気絶するとは思わなかった。湯に浸かってたわけでもないし、パキュたちで体力もついたはずなのに。

「アオバ……。もう絶対に離さない」
「うん……それはいいけどさ……」

 この執着はすでにもう嬉しい。でも、意識がはっきりしてくると、最中の記憶で気になることがあった。


「……背中のそれ、治させて」

 気持ちよすぎて、シグルズの背中に思い切り爪を立ててしまった。見えないけど、多分大変なことになってる。

「駄目だ」
「痛そうじゃん」
「痛くない」
「治した方がいいって」
「嫌だ。……君と一つになれた証拠だ。これがあれば、夢じゃないと思える」

 ぼそぼそと呟かれ、俺は目を瞬かせる。ぎゅうっと抱きしめられて、じわじわと胸が熱くなった。

「……そっか。じゃあ、治さない。……次に付けるまで残ってたら治すけど」

 俺も呟いて、シグルズの手をぎゅっと握る。

「アオバ……」
「……何だよ」
「消さなくていい。部屋に戻ったらもう一度するつもりだが、気にせずまた付けてくれ」
「下心隠す気ゼロか」
「次はきちんと時間をかけて優しくしたい」
「っ、……別に、さっきも優しかったし」

 そう言ってから、あまりに恥ずかしくなりバシャッと湯に顔を付けた。


「……てかさ、やっぱ、パキュロスからしか神聖力作れないって分かったわ」

 誤魔化すように話題を変える。シグルズの体液では力が増えた感覚がない。
 内側に感じるのは、別れ際にパキュが飲ませてくれた体液で作った分の神聖力。……それで、今シグルズと致した分の体力が回復してしまった。

「……神聖力って、俺の怪我とかも自動回復するんだけどさ」

 怪我がないから、体力が回復した。どうしよう、全身元気だ。

「君が君自身を守る力を得られて、私は嬉しい」

 シグルズは俺の髪にキスして、頬にもキスする。パキュのように頬擦りされると、毛先が首筋に触れてくすぐったい。……正直、感じてしまう。たったこれだけの刺激なのに。


「アオバ。好感度がどれほど上がったのか、聞かせてくれるんだったな?」
「は……」

 シグルズに抱き上げられ、湯から出て、体を柔らかなタオルで拭かれる。そして着せられたのは。

「これっ、勘違いされた時の服!」

 白くて薄い布の、あの服だった。
 肌にしっとりと張り付き、水滴で肌が透ける。特に胸の突起と下のアレの形はくっきりと浮き出てていた。ざっとしか体を拭かれなかったのはこのためか。

「私は君を愛でるが、気にせずに話してくれ。ベッドの上で、じっくりと」
「絶対無理な予感しかしないっ!」

 普通のバスローブを着たシグルズに抱き上げられて、ジタバタ暴れてもびくともしない。綺麗な顔であまりにも力強かった。
 羞恥プレイか焦らしプレイか。そうは言っても恋人になったばかりの二回目だ。わりと普通にシてくれるかもしれない。シグルズって俺のこと大好きだし。優しいし。いい人だし。
 運ばれながら、自分に言い聞かせる。



 ……まさか今蓄えてる神聖力が全て消費されてしまうとは、その時の俺は知る由もなかった。



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