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遊園地4
しおりを挟む電車移動はさすがにリスクが高いかと、隼音は車で来ていた。
「ごめんね、送って貰っちゃって」
「いえ、花楓さんと二人きりにもなりたかったので」
「……かっこいいなあ」
「惚れ直しました?」
「うん。惚れ直しました」
ふふ、と笑う。俺もです、と返すと花楓はキョトンとした顔をした。
車内では今日の話で盛り上がった。お化け屋敷の事、食べ物の事、ミラーハウスで隼音が頭をぶつけた事は出来れば忘れて欲しかったが、花楓が楽しそうに話すからまあいいかと思えた。
気付かれないよう、少し遠回りをした。それでももうすぐ家に着いてしまう。
「帰りたくないなあ……」
ポロリと、花楓の口から言葉が零れ落ちた。
「……あっ、えっと、変な意味じゃなくてね……?」
「俺も、帰したくないです」
信号待ちになり、隼音は花楓の手をそっと握った。
明日は花楓は休み。だが隼音は朝から仕事がある。花楓に出逢ってから、普通の大学生だったら……と思った事が何度もあった。
だが、どちらも捨てられないのだ。
信号が変わり、隼音は花楓から手を離した。そのまま脇道に入り、店の近くのパーキングに車を停めた。
あれから会話は止まったまま。花楓も、何を言って良いか分からないという顔だ。
「今度、俺の家に来ませんか?」
「え?」
「月末の店休日は、俺も午後からですけどオフなんです。もし花楓さんの予定が空いていたら、ですけど」
「俺も午後からなら空いてるけど……いいの?」
「勿論です」
「……他の人に見られたら」
「大丈夫です。対策は考えてあります」
隼音にいつもの緩さはない。髪色も服装も違い、何だか違う人のように見えた。
「花楓さんを傷付ける事はしません。でも……たくさん、触れてしまうかもしれません。花楓さんのこと、たくさん、抱き締めたいです」
手を握り真っ直ぐに見つめられる。その瞳は一心に想いを伝えてきて、だが何処か緊張した色を滲ませていて……いつもの彼だ、とふと体から力が抜けた。
「俺も、隼音君のこといっぱい抱き締めたいよ」
花楓が笑顔を見せると、隼音はパッと顔を輝かせた。
「じゃあ、当日迎えに行きますね」
その声はいつもの緩さを含んでいて、やっぱりまだ可愛い隼音君の方がおちつくなあ、と思うのだった。
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