9ライブズナイフ

犬宰要

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 瓦礫の上を歩くのは、砂利の砂漠の時と違って、より気を使った。そのため、みんなの足取りも遅かった。それでも橋へ続く道は、運が良かったのか見える範囲では瓦礫の上をつたって、行くことが出来そうだった。僕らより後方の瓦礫の山には、他の人が見えたりした。別の方向にも瓦礫の上を歩いている人影を見えたりした。
 
 僕たちは爆発や黒いうねりに巻き込まれないように、気を付けながら急いだ。
 
 ここは元は大きな街だったのか、瓦礫の山を見る限り様々な建物が建っていたのだろうと思った。鉄骨やコンクリートの壁やビルが倒壊して出来たような山もあった。ただ気になったのは机や椅子などの家具は一切見当たらないのと、ガラスなどもなかった。
 
「あそこにも人がいる」
 後ろからマナチの声が聞こえ、あたりを見渡すと自分たちと同じように瓦礫の上を歩いて、橋を目指している人たちがいた。人影のようなものじゃなく、僕たちと着ている服は似ているようでどことなく違う服を着ている人たちだった。別の橋を目指しているのか、僕たちには気づいていなかった。また、こちらと比べて先に進んでいるように見えた。
 
「あの人たちに合流するか?」
 ムッツーが提案するが、今この状況で別の人たちと合流するのは得策ではないと思った。何よりも距離的にあの人たちを追うのは遠回りだと感じた。
「この距離を考えるとまずは橋を渡って、向こう側に行ってからの方がいい。今は生き延びることを考えよう」
 僕はムッツーを落ち着かせるように言い、最初から目指していた橋に向かった。
 
 振り返ると爆発はさらに近づいていて、砂利の砂漠はもう火の海となっていた。振り向いてわかったが砂利の砂漠はどこまでも続いていたのか、真っ赤な火が遠くまで見えた。それは敷き詰められたふわふわした絨毯のように見え、すこしだけ美しいなと思った。
 
 爆発音が鳴り響き、僕はハッとした。何を呆けてるんだと前を向いて進んだ。すぐ後ろから黒いうねりも追ってきているのに、振り返っていられない。
 
 +
 
 何分歩いたのか、何十分歩いたのか、気が付いたら僕たちは瓦礫の山の端まで来ていた。向こう岸に行ける橋のところに到着した。運が良く、瓦礫の山が橋へと続いており、橋を使うことが出来る状態だった。別の橋を見ると地面から続いていたのが途中で半壊していたり、橋の道がなかったりしているのがあった。
 
「よ、よかった……これで……渡れば……なんとかなるよな」
 
 橋の幅は四車線分あり、歩道もあったが谷底はそこまで深くなく、黒いうねりがあった。薄暗い事もあって何がそこにあるのか見えないが光沢したものがうごめいていることがわかり、僕は足がすくんでいた。
 
「こ、この橋大丈夫よね?」
 タッツーはムッツーに聞いていた。
「進むしかない」
 ムッツーは瓦礫の山から降りて、橋に下りた。
 
 僕もそれに続いて、橋に足を踏み入れ、特に問題なさそうだなと感じて、歩き進んだ。地面は平坦になっていて、瓦礫の山や砂利の砂漠と比べて歩きやすかった、他のみんなも続いて橋の上に立ち、橋をわたることにした。
 橋に何か潜んでいそうな場所もなく、数十分ほど歩き続けると反対側に到達できた。 
 
 僕たちは橋を無事に渡りきり、後ろを振り返った。空は赤く、砂利の砂漠が真っ赤に火の海になってた事で、反対側が嫌に明るく見えた。瓦礫の山のところどころから火が上がっては爆発を繰り返していた。火の手は思ったよりずっと広がっていて、僕は地獄に迷い込んでしまったのかと感じていた。
 
 そういえば、僕たちよりも先に行っていた人たちのことを思い出し、別の橋を見てみるとどの橋も途中で渡れないような崩れ方をしていた。瓦礫の山の方を見てみると、それがわかったのか違う方へ向かってる人たちが瓦礫の上を歩いているのを見つけた。
 
「あ、さっきの人た……ちが……あ……」
 マナチもそれを見つけたのか、声に出していた。だが、黒いうねりが瓦礫を山を崩し、その瓦礫に何人か巻き込まれていった。散り散りに逃げまどいながら黒いうねりに飲み込まれていく人たちが目に入ってしまった。そして、その一人と僕は目が合ったような気がした。
 
 僕たちはその一部始終を一言も発さずに見届けた。
 
「いや、いやぁぁぁ!!!」
 ハルミンは我慢できず叫び、タッツーはそれを見せないように抱き頭を撫でた。ジュリやツバサは震え声を押し殺して泣いていた。ムッツーは歯を食いしばりながら泣くのをこらえ、マナチは思わず目を背けていた。僕は唖然として、現実逃避をすることにした。
 
 だけど、いつものように調子のいいことを考えられず、胸のあたりが苦しくなってきた。それが吐き気だとわかり、その場から離れ、地面に吐いた。
 
 僕はマナチに気の利いた言葉すらかけることができず、惨めったらしく吐いていた。
 
 もうこれ以上吐けなくなり、僕は水のペットボトルを召喚し、口をゆすいだ。ぜぇはぁと息が整わず、深呼吸して自分を落ち着かせた。みんなの所に戻ると向こう岸で不規則に爆発しているのを見ていた。瓦礫の山が崩れていったりし、黒いうねりが橋の下へ落ちていっていた。次第に火の手が対岸まで迫り、火によってその黒いのがネズミだとはっきりとわかった。僕たちはそれに怖気めき、身震いし、ただ今生きている事を噛み締めていた。

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