9ライブズナイフ

犬宰要

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 ボッチだった頃に比べ、誰かと肩を並べながら行動するのはむずがゆく感じた。近くまで爆発や火が迫ってきてないのもあり、後ろからついてくるみんなも焦ってはいなさそうだった。あたりは薄暗かったものの、遠くの光りのおかげで真っ暗闇ではない為、歩くのはそこまで困難ではなかった。
 瓦礫の山に到着し、どうやって橋があるところまで行くのか、方向はわかっているものの、道はわからなかった。砂利の砂漠を振り返ると、瓦礫の山よりも砂利の砂漠の方が燃えやすいのか、遠くの砂利の砂漠は火の海となっていた。あのまま、砂利の砂漠に居続けたら、火に囲まれたり、パニックになっていたのかなと思ってしまった。
 
 次第に、砂利の砂漠が火で覆われて、薄暗さが火によって明るくなっていっていた。
 
「私たちが目指している場所も実はこの火の海の光りだったりしてな……」
 ムッツーが不吉なことをつぶやいた。
「ムッツー、確かめてみない限りわからない」
 僕はすぐにそれを否定した。
「そうだな……とりあえず、あの橋を渡るために可能な限り瓦礫を避けて向かおう」
 まるで冗談だよ、みたいな顔をして僕を見た。
「私たちが先に行くから、後からついてきてくれ」
 ムッツーは一瞬だけ見せた不安げな表情を消し、みんなに言った。君だけには私の弱さを見せたみたいな、そういう事ですか? 期待しちゃうぞ。
 
 ムッツーと僕が先行し、あとから五人が二列になってついてくることになった。二人の後をすぐ追うのはマナチ、その次に手をつないでるタッツーとハルミン、そしてツバサとジュリだった。瓦礫の山を避け、橋の方へ歩いていく中、遠くでひっきりなしに爆発音がしていた。それが次第に近づいているため、段々と音も大きくなってきていた。
 
 そして、地鳴りのようなものを感じるようになっていった。
 
「この地鳴り……もしかして……」ネズミじゃないのか? と言おうとしたが、言ったら出てきそうなので黙った。
「ヨーちゃんも感じているか、まさかとは思いたくないが……」
 やはりムッツーもそう思ったらしく、僕がつぶやいた言葉に反応した。
「急ごう」
 僕たちは足を少しだけ早めた。その不安が回りに伝わり、後ろからついてきている人たちも次第に急ぐようになっていった。だが、道もわからない中で橋までどれくらいの距離かもわからないため、焦る一方だった。それに呼応するかのように、爆発音もだんだんと近づいてきていた。
 
 瓦礫がない場所を縫って、橋の方を目指していたが次第に袋小路の場所に行きついてしまった。
「どうするもう瓦礫の山を登るしか、これ以上進めそうにないぞ?」
 ムッツーは瓦礫の山を前にして、僕に言った。わかってる、大丈夫だ、わかってる。
「迂回するにも……」
 ムッツーがついてきてる他のみんなを見て、さらに後ろの方での爆発を見て、道を間違えて戻ったら危険だと感じてるようだった。
「登ろう」
 僕は、ムッツーと周りに言い、先駆けて登っていった。彼女たちが装備している靴は底には動きが阻害されないように鉄板が仕込まれており、瓦礫が靴を突き抜けてケガすることはないだろうと思った。僕に続き、ムッツーやマナチなどが登ってきた。
 
 危なげない足取りではあったものの、誰も転ぶことなく登りきることができてよかったと思えた。みんな登り終えて、爆発がある方向を見ると時折黒い渦のようなものが見え隠れしていた。
 
「ヨーちゃん、どうした?」
「今、何か見えたような気がして――」
 
 黒い渦のようなものは火から逃げるように、うねりとなって徐々に押し寄せてきているようだった。
 
「あ、あの……あの黒い泥みたいなのはなに……?」
 マナチは黒いうねりを泥のように見えていた。その泥は瓦礫の山がないところを満たしていき、小さな瓦礫の山を飲み込んでいった。
 
「あ、あ、あそこに人が……」
 ジュリが瓦礫の山を指さし、人がいると口に出した。そこまで高くない山でそこに人のような影がいくつか見え、他にも生きていた人がいたのかと思った。
「あ、あ、あ……」
 ジュリが口を抑えているものの、声は漏れ出した。それが何を意味するのか、僕は彼女が指を指していた方向の周りを見ると、何が起きるのかわかった。
 
 逃げようしていのか、あるいは状況を確認するため、瓦礫の山に登ったのだろう。黒いうねりがやってくるのに気づき、移動をはじめたが飲み込まれていった。あんなものに銃でどうにか出来るのか、という思いがこみ上げてきた。
 
 僕は周りを見るとカタカタと震えるハルミンを抱き寄せているタッツー、ツバサとジュリは身を寄せ合いながら、帰りたいとぼそぼそと言っていて、マナチだけは涙目になっていた。ムッツーは険しい表情でその光景を見ていた。
「に、逃げよう!はやく逃げよう!」
 マナチの声を聞き、僕はぼーっとしてる場合ではないと気づいた。僕は何としても逃げ、生き延びようという思いがわいてきた。きっと他のみんなも同じだろう。
「そうだな、橋の方へ向かおう」
 僕は言葉に出し、気づかない内に震えていた身体に活を入れるように、一歩踏み出した。

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