9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
20 / 82

20

しおりを挟む
 どれくらい時間が経ったのかわからないが、ネズミの群れは橋の下へなだれ込み続けていた。瓦礫の山のほとんどは火に包まれていた。僕たちは呆然と瓦礫の山だった場所を見ていた。
 
 その場から遠く離れようという気持ちがわかなく、どうなってしまうのかというのを見ていた。不規則だった爆発が次第になくなると、ネズミの群れが途切れたのだった。
 
 その後に人影が二つ現れ、二人とも銃を持っているのが見えた。
 
「え、ひ、人?」
 僕は思ったことを口に出していた。それほど、意外性があるような事でもなくちょっと考えればこれは人為的に誰かが起こした出来事なのに、驚いてしまった。僕たち以外にアビリティ・スキルを持っていて、爆発物を召喚できるのなら、いくらでもやりようはあるからだ。
 火の裂け目から出てきた二人は、遠くて男か女かはわからないが、自分たちと同じような装備をしているのだけはわかった。
 
 生き残った人もいたが、この惨状を巻き起こしたのはそいつらだと思った。
 
 二人のうち、一人が何か言うともう一人が銃を構え、あたりに何かを撃ちだした。するとあちこちで爆発が起こり、炎が散乱した。もう一人は何か投げた、そのあとに爆発と火が巻き起こった。そして、明らかに爆発や火に巻き込まれているはずなのに、まったくの無傷で立っていた。
 
「どういうことだ? なんで二人は何ともないんだ?」
 僕は自分の唇を触りながら、口から漏れ出した言葉に夢でも見ている気分になった。
 
 二人は橋の下にも投げ込んだり、撃ったりし、爆発と火を拡大させていっていた。
 
 その爆発と火の光で橋の下が一瞬見え、それが大量のネズミだとはっきりとわかり僕たちは後ずさった。対岸沿いの人は、歩きながら投げたり、撃ったりし、誰がいようといまいと関係なしにあたりを爆発と火で満たしていっていた。
 
「焼夷手榴弾?」
 ツバサはそれが何か知っているようだったが、僕にはただ恐ろしい何かでしかなかった。
 
「もう、やだぁ……ううぇ、ううっ」
 爆発と火によって、橋の下のネズミが焼き殺された臭いが漂ってきていた。ハルミンはそれを嗅いでしまい、ほかの僕たちは顔をしかめていた。
「防護マスクをつけるんだ」
 僕はみんなに言った後に、防護マスクを装着した。
「とりあえず離れよう……あの明かりの方へ行こう。何があるかわからないがここは危険だ」
 ムッツーは絞り出すように防護マスクをつけた後に言い、その場から離れていった。それに続くように他の人もついていっていた、僕は対岸で起きた事をもう一度見て、橋の方を見た。こちら側に繋がっているので、ネズミの群れが来るのではないかと思ったからだ。
 
 何匹かわからない黒いうねりがそこにあり、僕は顔をしかめた。もっと早く気が付くべきだったと思い、銃を構えた。だが、引き金を引く前に伝えなければいけないと感じた。
 
「ムッツー、ネズミの群れが橋を渡ってきている! 光りの方に早く逃げるしかない! 僕は食い止める!」
「なんだと、くそっ! いや待て食い止めるって?」
「銃がある、それでやるしかないだろ」
「だけど――」
「いいから行け、あとから追いつく」
 
 僕が橋の方へ行くと、ネズミの群れはまだ橋を渡り切ってないことがわかった。
 
「段数無限、どこまでできるかわからないけれど、やるしかないだろ」
 
 僕はクリスベクターカスタムの引き金を絞り、スススッという音と共に銃弾が発射され、ネズミの群れたちを肉片にしていった。どこまで立ち向かえるのか、わからないが後ろに下がりながらネズミの群れに向かって撃ちまくった。幸いにも弾が無くなっても一呼吸すれば、弾は復活するので撃ちまくる事が出来た。
 
 ネズミの群れの勢いは止まる事がなく、次第に橋を渡りきるのも時間の問題だと感じ始めてきた。どのくらいネズミを殺したのか、わからないくらい撃ちまくった。最初は行けるかもしれないと思っていたが、このままでは厳しいと思えた。
 
 だが、その時うしろから何かネズミの群れに向かって放り込まれたのを見た。放り込まれた後に、ふしゅーと勢いよく煙が漂うと、ネズミの群れの勢いが止まったのだった。そして次々と投げ込まれ、もうもうと煙が漂って、そこからネズミは出てこなくなった。
 
「キャハッ、君危なかったね! でもすごぉい! ネズミ倒して偉い!」
 
 声がする方を振り向くと部分的に赤に染めているツインテールの女がいた。あ、こいつメスガキだと思ったが口に出さなかった。
 少し釣り目で、恰好もエロさをわかってるような着崩したコーデだった。防護マスクもしていて牙がはえているような攻撃的なマスクをしていた。身長と同じくらいだと思ったら、かかとがあるごっつりしたブーツを履いていた。
 
「君は?」
「アカネ、君は?」
「ミドリカワ ヨウ、ヨウでいいよ」
「そ、ヨーちゃんって呼ぶね。よろしく! 一人?」
「いや、仲間がいる。ネズミを足止めしていたんだ。助かったよ」
「キャハッ、べっつに~全然楽勝だから気にしないで、なんか音がするなぁと思って見に来たら大炎上してるんだもん。草、マジ草でネズミどもザマァ」
 
 僕はこの人とは仲良くなれそうにないなとカースト底辺センサーが告げていた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...