13 / 21
13.
しおりを挟む
ICPOの捜査官アラミス・クーパーだけを残し、他の捜査官は元の世界へ戻っていった。というより、まりあが送り届けたのであるが……。
「本当に一緒に帰らなくてよかったのですか?」
「当然ですよ。こんなに興味深い事件を目の前にして、のけ者はズルイです」
日本語検定N1を持っているだけあって、クーパーさんは流ちょうに話す。それにレディファーストの国から来られただけあり、まりあに対しても親切で優しい対応が嬉しい。
同期の智子が知ったら、絶対に悔しがるだろうけど、教えない。休みの日には、デートに誘ってくれることもあり、益々親近感がわく。
捜査の方は、音羽会系暴力団が組織的に異世界でマネーロンダリングしていたらしい。すなわち金融投資詐欺を地球で行い、その汚い金を異世界金貨で浄化していた仕組みの疑いがある。
それは異世界の谷本のところからパチってきたパソコンの中にデータが残されていたので、わかったこと。だから、ある意味、そのパソコンを持ち出してきたことについて、まりあのお手柄でもある。
谷本も何かあった時の口封じの保険として、パソコンの中にデータを残し、それを異世界の自宅に置いていたのであろう。
異世界であれば、電源がなければ絵に描いたも同然のただの板として処理されると思ったのだろうか。
へ?それって、知らずにまりあも汚い金を浄化するのを手伝っていたってこと?ぅわっ!バレたらクビかなぁ!?
でも、これってどう考えても不可抗力だよね。
だって、好きでこの世界に召喚されたわけじゃないし。商売して、お金を稼がなきゃ生きていけなかったわけだし、分析以外に何もできない女が一人で生きていくためには、ニッポンで炊事していた経験しかないわけだし、何か作って売る。だけど、ここでは調理方法や味付けがほとんど決まっているので、できる料理は限られてくる。
そんな時にコメを見せられたら、欲しがるに決まっている。それが谷本の店だったとは知らずに購入してしまったのだから、情状酌量の余地なくない?
確かに外見はガラの悪いニッポン人ぽく見えたけど……、ヤーパン人はあんな感じだと言われたので納得してしまったのよ。
だって、自分以外にニッポン人がいるわけがない……とは思ってはいなかったけど、それはあの店のカップラーメンの底にあった表示がニッポン語だったから。
また、部長からお小言を飛んできそうになるが、なんとかごまかそう。
ああ、でもカップラーメンの底を見られるのも時間の問題だと思う。どうしよう。
オロオロおどおどしているまりあにクーパーは優しく寄り添ってくれる。
「っ!クーパーさん、いつからいらしたのですか!?」
「うーん。もうずいぶん前から……と言ったら、怒るかな?」
「えっえー!」
ヤダ。見られていた?独り言も全部聞かれていたかもしれない。
顔面蒼白になり、ブルブル震えだすまりあの瞳をジっとみつめるクーパーは、突如、ケタケタと大声で笑いだした。
「冗談ですよ。今、来たところです。何か早乙女さんがお困りのようなので、声をかけるかどうか迷っていたのです」
「んもうっ!意地悪ね」
「ふふふ。やっと笑ってくれましたね。早乙女さんは笑顔の方が何倍も素敵ですよ」
二人は見つめあったまま……、プっと吹き出す。
いい雰囲気になりそうなところだったけど、二人とも照れてしまったのだ。
それからまた少し、クーパーさんとの距離が縮まったような気がした。
それにしても谷本の奴、あれだけの食材をどこで保管していたのか気になる。どこかに魔方陣を隠していたにせよ。いったい誰が、その魔方陣を作ったのだろうか?
こちらの世界に協力者がいなければ不可能な犯行だと思うのだが……真相に近づくことはできるのかしら?
ある日、王弟殿下が古代魔法の文献を持って現れた。
「王家に昔から伝わる文献なのだが、ひょっとすればマリアの役に立つかもしれないと思って持ってきたよ」
「ありがとうございます」
でも、ページをめくるとその内容は、チンプンカンで……。
「本当に一緒に帰らなくてよかったのですか?」
「当然ですよ。こんなに興味深い事件を目の前にして、のけ者はズルイです」
日本語検定N1を持っているだけあって、クーパーさんは流ちょうに話す。それにレディファーストの国から来られただけあり、まりあに対しても親切で優しい対応が嬉しい。
同期の智子が知ったら、絶対に悔しがるだろうけど、教えない。休みの日には、デートに誘ってくれることもあり、益々親近感がわく。
捜査の方は、音羽会系暴力団が組織的に異世界でマネーロンダリングしていたらしい。すなわち金融投資詐欺を地球で行い、その汚い金を異世界金貨で浄化していた仕組みの疑いがある。
それは異世界の谷本のところからパチってきたパソコンの中にデータが残されていたので、わかったこと。だから、ある意味、そのパソコンを持ち出してきたことについて、まりあのお手柄でもある。
谷本も何かあった時の口封じの保険として、パソコンの中にデータを残し、それを異世界の自宅に置いていたのであろう。
異世界であれば、電源がなければ絵に描いたも同然のただの板として処理されると思ったのだろうか。
へ?それって、知らずにまりあも汚い金を浄化するのを手伝っていたってこと?ぅわっ!バレたらクビかなぁ!?
でも、これってどう考えても不可抗力だよね。
だって、好きでこの世界に召喚されたわけじゃないし。商売して、お金を稼がなきゃ生きていけなかったわけだし、分析以外に何もできない女が一人で生きていくためには、ニッポンで炊事していた経験しかないわけだし、何か作って売る。だけど、ここでは調理方法や味付けがほとんど決まっているので、できる料理は限られてくる。
そんな時にコメを見せられたら、欲しがるに決まっている。それが谷本の店だったとは知らずに購入してしまったのだから、情状酌量の余地なくない?
確かに外見はガラの悪いニッポン人ぽく見えたけど……、ヤーパン人はあんな感じだと言われたので納得してしまったのよ。
だって、自分以外にニッポン人がいるわけがない……とは思ってはいなかったけど、それはあの店のカップラーメンの底にあった表示がニッポン語だったから。
また、部長からお小言を飛んできそうになるが、なんとかごまかそう。
ああ、でもカップラーメンの底を見られるのも時間の問題だと思う。どうしよう。
オロオロおどおどしているまりあにクーパーは優しく寄り添ってくれる。
「っ!クーパーさん、いつからいらしたのですか!?」
「うーん。もうずいぶん前から……と言ったら、怒るかな?」
「えっえー!」
ヤダ。見られていた?独り言も全部聞かれていたかもしれない。
顔面蒼白になり、ブルブル震えだすまりあの瞳をジっとみつめるクーパーは、突如、ケタケタと大声で笑いだした。
「冗談ですよ。今、来たところです。何か早乙女さんがお困りのようなので、声をかけるかどうか迷っていたのです」
「んもうっ!意地悪ね」
「ふふふ。やっと笑ってくれましたね。早乙女さんは笑顔の方が何倍も素敵ですよ」
二人は見つめあったまま……、プっと吹き出す。
いい雰囲気になりそうなところだったけど、二人とも照れてしまったのだ。
それからまた少し、クーパーさんとの距離が縮まったような気がした。
それにしても谷本の奴、あれだけの食材をどこで保管していたのか気になる。どこかに魔方陣を隠していたにせよ。いったい誰が、その魔方陣を作ったのだろうか?
こちらの世界に協力者がいなければ不可能な犯行だと思うのだが……真相に近づくことはできるのかしら?
ある日、王弟殿下が古代魔法の文献を持って現れた。
「王家に昔から伝わる文献なのだが、ひょっとすればマリアの役に立つかもしれないと思って持ってきたよ」
「ありがとうございます」
でも、ページをめくるとその内容は、チンプンカンで……。
84
あなたにおすすめの小説
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる