聖女召喚された科捜研の女~異世界科学捜査で玉の輿を狙う

青の雀

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まりあが向かったのは、真っ先に自分の部屋。ここなら誰かに見られることはない。出かけるときに施錠していき、出かけた自室に戻ってきたのだから、まだ遺体の処分はされていないと思う。

まず鑑識の人と科捜研の部長を部屋に送る。それからピストン方式で次々、ICPOのイケメン捜査官を自室に入れていく。

時空転移魔法の後遺症ともいうべきか?高速エレベーターに乗っているときのような耳がツーンとした感じは、何度も往復しているうちに次第に慣れてくるが、屈強な捜査官といえども、初めての経験に戸惑っているようだった。

部長の年齢ではかなりキツかったようで、最初に異世界へ送り届けたのに、まだ床にへたりこんでいる。

この部屋には谷本の部屋にあった冷蔵庫や電化製品が所狭しと並べているが、彼らには違和感がないものだろう。

部長は肩で息をしながら立ち上がり、ソファへと移動する。その時、初めて家電製品がなぜここにあるのか気になったようだ。

「このテレビやパソコン、早乙女が家から持ってきたのか?」

「ああ、それガイシャのです。インテリアとして使われていたみたいですので、もらってきました」

「あ、あほか!お前はそれでも科捜研か!?なんですぐ遺留品の有無を調べない!」

「だって、忙しかったし、何よりも谷本の身元照会を優先したのですからねっ!心配しなくても、この世界時間で、まだ30分も経っていませんよ」

「へ!?そうなのか?」

「それより早くご遺体を確認しに行きませんか?何なら、部長はお疲れのようですし、そのパソコンの中にデータがあるかどうかの有無ぐらいはできるでしょうから、ここに残っていただいても構いませんよ」

「い、いや、俺も行く」

部長のお小言が始まったら、この手があるということがわかり、ほくそ笑む。

まりあは扉を開けて、使用人にニッポンから連れてきた人々の紹介をして、それぞれの部屋を用意させる。ついで、王弟殿下に先触れを出し、ニッポンから連れてきた捜査関係者の入国を求め、遺体の検分をしたいと申し出る。

ほどなくして、いつもより険しい顔つきをした王弟殿下がやってくる。

王弟殿下は、事情は呑み込めたがマリアの世界の捜査責任者を呼んできてほしいと頼み込まれる。

それで急遽、ニッポンへ飛ぶ。

偶然にも府警本部長と警視総監、警察庁長官までいらっしゃったので、どなたかお1人をお連れしようと打診してみると、誰もが「自分が行く」と申し出てくれて、ホっとする。皆、マウントがとりたいのだ。

でもいざ行く段取りをしていると、「着替えがどうのこうの」と言い出し、なかなか決まらない。

「誰でもいいから早くしてください!相手は未開の異世界人ですよ。残った捜査員たちを危険に晒す気ですか?」

まりあが一喝して、ようやくとるものもとらずに出発することを合意してくれた。でも、コンビニぐらいなら寄ってもいいわよ?

3人を連れ、異世界へ戻ると、その速さに王弟殿下も先にいた捜査員たちも驚いている。だって、異世界時間では、あれから1秒も経っていないのだもの。

ここが時空魔法の醍醐味というところよ。誰も気づいていないのに、まりあは胸を張る。

早速、王弟殿下とニッポンの「捜査責任者との間で合同の捜査会議が開かれることになったのだが、まずは遺体確認と現場確認をする。

通訳はもちろん、まりあがするのだけど、こうしてみればICPOのイケメン捜査官も形無しというところ。かっこいいというだけで、何の役にも立たない。これならニッポンの捜査員だけでも良かったのかもと思い直す。

科捜研の部長も同意見のようで、ICPOには、早々に引き取ってもらえるように話を勧める。

ニッポン人なら、日本語で意思疎通を図ることは容易で、そこに変なイングリッシュが混じるとロクなことにならないという判断が適切かの様に思われた。

ところがICPOの中に抵抗する捜査員がいて、その人は東京大学とハーバード大学を卒業したエリート捜査員でニッポン語検定のN1所持者でもあったため、自分は、このまま異世界に残らせてほしいと食らいついてきた。

まあ、そこまで言われるのなら、……とまりあは乗り気になるが、上層部はそうとは考えていないようで、板挟みになってしまう。


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