聖女召喚された科捜研の女~異世界科学捜査で玉の輿を狙う

青の雀

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現場100回という言葉があるが、まりあも再び谷本の店へ行ってみた。表口も裏口の方も規制線テープが張られ、その場だけ見れば、異世界とは思えない物々しさがあった。

最近、どこへ行くのも、漏れなく付いてくる長官、警視総監、本部長に加え、クーパーさんと共に現場へ入る。

3人の責任者の方々は、そろそろニッポンへお帰りになったら?と思っているが、言い出せずにいる。一応、上席さんなので。

異世界はお三方にとり、見るもの聞くものがすべて新鮮で海外旅行というよりは、テーマパークに来たようなノリで楽しんでいらっしゃるよう。

それはクーパーさんとて、同じなのだが、クーパーさんはそれ以外に別の目的があることをまりあは気づかないでいる。

ICPOに属している捜査員にとり、聖女様は特別な意味を持つ。そして、「まりあ」は聖母に繋がる。

5人でゾロゾロ規制線をくぐる。何度も来ているのに、ここへは妙な緊張感がある。

店の中の白檀の香りもだいぶ薄まってきている。

遺体発見現場に床には白いチョークでかたどりがしてある。それを踏まないように飛び越えようとしたら、何かに躓いた。部長と一緒でなくてよかった。部長と一緒なら「あほ、ドジ!」とどやされるところなのだが、その躓いた何かが気になる。

床に這いつくばるような姿勢を取り、躓いた何かを探していると、床に数粒の米粒が落ちていることに気づく。

なぜ、こんなところに米粒が……?鑑識が入念に調べたはずなのに……、見落としがあったのか?

さらに這いつくばって調べていると、明らかに新しいゲソコンがあることに気が付く。遺棄した後、誰かが規制線を突破してこの家に入ったような?でも表口にも裏口にも、優秀なニッポンの捜査員が24時間体制で張り付いているというのに、一体どこから?

疑問が確信に変わろうとした時、躓いた原因となるものを発見してしまう。

それは、遺体痕から30センチほど離れたところにあった。ちょうど台所の床下収納のような扉らしきものが、取っ手がないのでわかりにくかったのだ。

犯人は、おそらく谷本が保険として隠し持っていた何かを探すため危険を承知の上で忍び込んだのだろう。

あいにく、まりあが遺体発見時に谷本のパソコンや家具を押収した後だったので、何も見つけられずに帰ったのかもしれない。

とにかく本部長に床下収納庫の存在を知らせる。

「何!?我々が張っているというのに、地下から出入りしていたのかっ!でかした早乙女!ここから先は捜査員の仕事だから、お前はもう帰れ」

いいの?本当に?まりあについてきたのは、まぎれもなく通訳目当てのことだと思うのに……?本当に帰っちゃうよ?

「いや、その前に応援を呼んでこよう。表にいる警察官を呼び、この中を探らせてもいいのだが……」

ニッポンと勝手が違うことに戸惑う府警本部長。そこへ警察庁長官が、目をキラキラさせながら

「これだけの警察官がいるのだから一度、中へ入ってみて確認してみましょうよ」

「長官は、警察官の中にカウントされませんよ。だって、長官は事務方ではないですか?大丈夫ですか?我々のような脳筋とは、訳が違うでしょう?」

「これでも男です」

いや、わかってる!って、全員でツッコミを入れそうになるが、誰も言わない。なんといっても、ここは異世界勝手が違う。

「あの……、王弟殿下に報告し、騎士団を貸してもらいましょうか?」

「おお!それがいい」

本部長は賛成したものの腑に落ちないという顔をしている。だって、これはどう見ても地球側の手柄だから。それをこの世界の人間に捜査させられるとなれば、名折れだ。変なプライドが話をややこしくさせるということがわかっているのかいないのか。

とにかくその場にいたニッポン人プラスクーパーさんとで、台所収納庫の仲へ入ってみることにしたのだ。何かあれば、この中で唯一魔法が使えるまりあ頼みになるということに、まだ気づいていない。

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