4 / 7
4.
しおりを挟む
翌朝、マリアベルーナが目覚めた時は、宿の前にすでに人だかりができていた。
身支度を済ませ朝食を摂りに階下へ行く。
「聖女様、昨夜はよく眠れましたか?」
「はい。おかげさまで、朝までぐっすりと休むことができました」
「それは、よかったです。今朝は、急いでおりましたゆえに、宿の者に申し伝え、ささやかな聖女様歓迎の宴を催しましたので、どうぞ、こちらへ。ああ!それと、間もなく王家より使者が参りますので、ご留意の程を」
さっきからやけに「聖女様」を連発され、マリアベルーナは困惑するも、実際、サンピエトロス修道院にて、聖女様に覚醒してしまったのだから仕方がない。
やっぱり昨夜の光魔法がヤバかったか?あれで、いっぺんにバレたのかもしれない。でも、昨夜の村長様って、もっとお爺さんだったような印象がある。
「申し遅れました。私はこの村を所管する領主のセルジュ・ヘミングウエイと申すもので、辺境伯でもあります」
「ここは、ブランシェのお隣のサンフランシスコ国でございますよね?」
「左様でございます。ようこそサンフランシスコへ」
「ブランシェの公爵令嬢マリアベルーナでございます。ブランシェの辺境にあるサンピエトロス修道院にて、聖女様として覚醒しました」
「3日ほど前のことでしたね?あの光は、こちらにも届いておりまして。それが、もうこんなに早く聖女様にお目にかかれるとは、これも神のお導きなのでしょう」
マリアベルーナは、そうかもしれないと思った。昨夜、サンピエトロス修道院を抜け出し、国境線まで来た時、サンフランシスコで灯かりがチラチラ見えたことなんて、奇跡としか言いようがない。結果、その灯かりに導かれるかのように、国境線を超えてしまったのだから、これはもはや運命という言葉でしか片付けられないとも、思ったのだ。
そんなことを考えながら朝食を摂っていたので、あっという間に食べ終わっていた。
ヘミングウエイが必死に話を続けようとするが、もう話題は尽きてしまっている。きっと、王家からの使者が来られるまで、この村に足止めを命じられているのだろう。
おそらく王都へ出向かなければならないのかしら?知らない土地へ来て、ただただ不安はぬぐい切れない。
でも、もうブランシェ国に未練はない。ブランシェ国に帰国するぐらいなら、……いや、王妃様だけは、マリアベルーナのことを心配してくださっている。母と友人関係にあった王妃陛下だけは、例外中の例外というところ。
いつか落ち着く場所ができたら、その時にお手紙を書こうと思っている。その時が来るまで、ごめんなさい。
ヘミングウエイ様は、すっかり眉尻を下げられ困っていらっしゃる。仕方なく、話のタネを振ってあげることにした。
「そういえば、サンフランシスコの名物とは、なんでしょうか?甘味系でぜひ、お願いします」
「アハハ。聖女様も若いご令嬢に変わりがないのですね。今一番人気のスイーツと言えば、フルーツをふんだんに使ったプリン・ア・ラ・モードやパフェが人気です。私どもの屋敷の料理人も、これらスイーツが得意でございますから、よろしければ、ご案内させていただけますでしょうか?」
「まあ!本当に?嬉しいですわ」
「あっああ、それがその馬車の用意が……」
「大丈夫ですわ。愛馬に乗っていきますわ」
「おお!それなら、すぐにでも出立致そう」
二人はスイーツの話に盛り上がり、王家の使者のことをすっかり失念している。
宿賃を精算するときも、宿屋の主人がオロオロしていることなど、お構いなしに急いで、出発する。
途中、立派な馬車とすれ違いざまに、さすがにヘミングウエイ様は気づかれた様子で、慌てて下馬したところが、もう馬車は村に向かって一目散に行ってしまわれた後のこと。
しばらく呆然と村の方を見ていらしたが、気を取り直して、領主の館に向かわれたのだ。
その光景から、朝食前に王家の使者が来ると言っていたことを思い出したが、もう後の祭り。
マリアベルーナは、「何かあればわたくしのせいになさればいいわ」と言い、笑顔で領主の館に向かう。
身支度を済ませ朝食を摂りに階下へ行く。
「聖女様、昨夜はよく眠れましたか?」
「はい。おかげさまで、朝までぐっすりと休むことができました」
「それは、よかったです。今朝は、急いでおりましたゆえに、宿の者に申し伝え、ささやかな聖女様歓迎の宴を催しましたので、どうぞ、こちらへ。ああ!それと、間もなく王家より使者が参りますので、ご留意の程を」
さっきからやけに「聖女様」を連発され、マリアベルーナは困惑するも、実際、サンピエトロス修道院にて、聖女様に覚醒してしまったのだから仕方がない。
やっぱり昨夜の光魔法がヤバかったか?あれで、いっぺんにバレたのかもしれない。でも、昨夜の村長様って、もっとお爺さんだったような印象がある。
「申し遅れました。私はこの村を所管する領主のセルジュ・ヘミングウエイと申すもので、辺境伯でもあります」
「ここは、ブランシェのお隣のサンフランシスコ国でございますよね?」
「左様でございます。ようこそサンフランシスコへ」
「ブランシェの公爵令嬢マリアベルーナでございます。ブランシェの辺境にあるサンピエトロス修道院にて、聖女様として覚醒しました」
「3日ほど前のことでしたね?あの光は、こちらにも届いておりまして。それが、もうこんなに早く聖女様にお目にかかれるとは、これも神のお導きなのでしょう」
マリアベルーナは、そうかもしれないと思った。昨夜、サンピエトロス修道院を抜け出し、国境線まで来た時、サンフランシスコで灯かりがチラチラ見えたことなんて、奇跡としか言いようがない。結果、その灯かりに導かれるかのように、国境線を超えてしまったのだから、これはもはや運命という言葉でしか片付けられないとも、思ったのだ。
そんなことを考えながら朝食を摂っていたので、あっという間に食べ終わっていた。
ヘミングウエイが必死に話を続けようとするが、もう話題は尽きてしまっている。きっと、王家からの使者が来られるまで、この村に足止めを命じられているのだろう。
おそらく王都へ出向かなければならないのかしら?知らない土地へ来て、ただただ不安はぬぐい切れない。
でも、もうブランシェ国に未練はない。ブランシェ国に帰国するぐらいなら、……いや、王妃様だけは、マリアベルーナのことを心配してくださっている。母と友人関係にあった王妃陛下だけは、例外中の例外というところ。
いつか落ち着く場所ができたら、その時にお手紙を書こうと思っている。その時が来るまで、ごめんなさい。
ヘミングウエイ様は、すっかり眉尻を下げられ困っていらっしゃる。仕方なく、話のタネを振ってあげることにした。
「そういえば、サンフランシスコの名物とは、なんでしょうか?甘味系でぜひ、お願いします」
「アハハ。聖女様も若いご令嬢に変わりがないのですね。今一番人気のスイーツと言えば、フルーツをふんだんに使ったプリン・ア・ラ・モードやパフェが人気です。私どもの屋敷の料理人も、これらスイーツが得意でございますから、よろしければ、ご案内させていただけますでしょうか?」
「まあ!本当に?嬉しいですわ」
「あっああ、それがその馬車の用意が……」
「大丈夫ですわ。愛馬に乗っていきますわ」
「おお!それなら、すぐにでも出立致そう」
二人はスイーツの話に盛り上がり、王家の使者のことをすっかり失念している。
宿賃を精算するときも、宿屋の主人がオロオロしていることなど、お構いなしに急いで、出発する。
途中、立派な馬車とすれ違いざまに、さすがにヘミングウエイ様は気づかれた様子で、慌てて下馬したところが、もう馬車は村に向かって一目散に行ってしまわれた後のこと。
しばらく呆然と村の方を見ていらしたが、気を取り直して、領主の館に向かわれたのだ。
その光景から、朝食前に王家の使者が来ると言っていたことを思い出したが、もう後の祭り。
マリアベルーナは、「何かあればわたくしのせいになさればいいわ」と言い、笑顔で領主の館に向かう。
271
あなたにおすすめの小説
わたくしが悪役令嬢だった理由
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。
どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。
だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。
シリアスです。コメディーではありません。
心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました
er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?
婚約を破棄して気づけば私は悪役令嬢でした。
hikari
恋愛
妹に婚約者を奪われて狼狽していたら、自分はある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気づく。
妹のナタリーがヒロイン。両親は妹の味方。唯一の味方が弟のルイでした。
しかも、何をしてもダメ出しをする間抜けな平民のダメンズに言い寄られ、しつこくされています。私に分相応なのはこの平民のダメンズなの!?
悪役令嬢ものは初めてです。
今作はギャグがメイン
辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです
くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は……
※息抜きに書いてみたものです※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※
【完結済み】王子への断罪 〜ヒロインよりも酷いんだけど!〜
BBやっこ
恋愛
悪役令嬢もので王子の立ち位置ってワンパターンだよなあ。ひねりを加えられないかな?とショートショートで書こうとしたら、短編に。他の人物目線でも投稿できたらいいかな。ハッピーエンド希望。
断罪の舞台に立った令嬢、王子とともにいる女。そんなよくありそうで、変な方向に行く話。
※ 【完結済み】
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる