夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

文字の大きさ
10 / 32

10.死に戻り

しおりを挟む
「んんっ……」

 気が付くと懐かしい、どこか懐かしい。でも見慣れた天井が広がっていた。

 そこは、紛れもなくマーシャル国の王宮のティアラベルローゼが輿入れ前まで使っていた部屋だ。

 ティアラベルローゼは、別の世界線を送れると思っていたけど、また、ここに戻されたということは、この人生において、重要な意味があるのかしらね。それに前世、残してきた娘ティファニーは穏やかで幸せな人生を送ったのか、気になるところ。

 今度こそ、アンドリューやアプリコット国とかかわりを持たないようにしないと、気を引き締めなければ、と思い直す。

「やっと戻って来られた」

 その時、廊下の奥の方からバタバタと走ってくる音が聞こえてくる。驚いて、扉を注視していると、勢いよく開け放たれた先に立っていたのは、エレモアだった。

「エレモア!」
「王女様!」

 二人は抱きしめ合い、互いに顔を突き合わせて、口元を綻ばせながらクスクス笑いあう。

「ただいま」
「おかえりなさいませ。王女様」

 エレモアは、マーシャル国近衛騎士団長の一人娘で、クリントン伯爵令嬢。ティアラベルローゼより4歳年上。学園を卒業後、志願して騎士団に入ったものの、いくら騎士団長の娘とはいえ、年功序列な上に男尊女卑が根強い騎士の世界だからか、女性であることから、ずいぶんイジメられていると聞いていた。

「ところで、今、何年かわかる?」
エレモアは首を振り、半ば申し訳なさそうに呟く。
「もう騎士の制服を着ているから、たぶん18歳以上には、なっていると思う。としか、答えられないです」

「そうなのね……、留学前か後かだけでも知りたかったのに、エレモアも今、戻ってきたばかりなの?」
「はい。そうです。この時間線に戻ってきたばかりなので、はっきりしたことはわかりませんね」

 エレモアは、目覚めてすぐに駆けつけてくれたのだ。本当に頼りになる騎士だと思う。前世の記憶からすれば、エレモアがティアラベルローゼの専属騎士になったのは、輿入れの日程が決まってからのことだったように思う。

 後でお父様に、エレモアを専属騎士にしてもらえるように頼もう。そうすれば、女だという理由だけで、他の騎士からイジメを受けることも減るだろう。それに何より心強い。前世、共に死線を潜り抜けてきた同士だから。

 ティアラベルローゼにとって、背中を預けられる唯一の存在だもの。



 ほどなくして、ティアラベルローゼが15歳の誕生日を迎えたばかりだということがわかる。

 アトランティスの学園に入学するまで、後半年はある。そろそろ受験要綱・願書を取り寄せなければならないのだが、あの学園に行ってしまえば、アンドリューに遭うかもしれない。

 今世は、絶対にアンドリューと関わり合いになりたくない。

 だから留学は諦める?

 マーシャル国は、アプリコット国程ではないが小国に違いはない。外交面でも、アトランティスに留学することは、今後の将来性を考えると必要になってくる。

 今までなら、こういうことを相談する相手は家族だけだったけど、今回は、わかりあえるエレモアがいることも心強い。

 エレモアに相談してみると、意外な返答があったことに驚く。

「ティアラベルローゼ王女殿下は、聖女様であらせられます。聖女様であらせられることを広く内外に公表なさる方がいいかと存じ上げます。さすればアトランティスの方から、聖女様の方に近づきたいと願ってくるでしょう」

「……ということは?わざわざ留学しなくても、アトランティスと対等に渡り歩けるということなのかしら?……いいこと聞いたわ!ありがとう。エレモア」

 早速、両親に自分が聖女様になったことを告げ、国教会似て、聖女認定に挑むことになった。

 結果は、歴然。なんと言っても、黄泉の国の神様公認なのだから。すぐさま国教会は、王女ティアラベルローゼが聖女様であることを公表する。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

七年目の裏切り 〜赴任先の夫から届く愛の手紙は、愛人の代筆でした〜

恋せよ恋
恋愛
「君は僕の最愛だ。もう二度と、君を危険に晒したくない」 命懸けの出産後、涙を流して私を抱きしめた夫ジュリアン。 その言葉通り、彼は「私を大切にするため」に夜の営みを断った。 私は、女としての寂しさを「愛されている誇り」に変え、 隣国へ赴任した夫を信じて二人の子供と家を守り続けていた。 毎週届く、情熱的な愛の手紙。タイプライターで綴られた その愛の言葉を、私は宝物のように抱きしめていた。 ……しかし、その手紙は「裏切り」だった。 夫が異国の地で、愛人と肌を重ねながら綴らせていた「偽りの愛」。 身分を隠して夫の赴任先の隣国へと向かった私が見たのは……。 果たして、貞淑な妻・メラニアが選んだ結論は……。 子供たちのため結婚生活の継続か、それとも……。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...