夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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「弟がお世話になっているようだが……」
「お世話なんて、何も……毎日、お花を頂戴しているだけですわ」
「花が好きなのか?」

 自惚れかもしれないけど、ここで好きだと言ってしまったら、また大量の花束が来てしまったら、困る。
 だから、ティアラベルローゼは、あいまいに微笑むことにした。後はクリストファー殿下の判断に任せるわ。

「そんなに花が好きなら、花園をプレゼントするよ」

 正直、ティアラベルローゼは、がっかりしている。また花?男って、どうしてこんなに単純なのかしら?花で女を替えると思っているのか?

 もし、前世なら3人の王位継承権者から揃って、花をプレゼントされたら、嬉しくて舞い上がったかもしれない。でも、今世は、素直に喜べない。ひとりは浮氣男、一人は浮気され男、そしてマクシミリアンは、名うてのプレイボーイ。どれもまともな王子様とは言えない。

 今世もドツボかな?なんとなく、アンドリューにさえ関わらなければ、安泰だと思っていたけど、そうでもないみたい。

 腐っていると、エレモアが恋の相談に乗ってくれることになった。

「ティアラベルローゼ殿下は、聖女様なのですよ。もっとご自分に自信を持って遊ばされたらいかがですか?男に頼り振り回される人生ではなく、男から自立する人生を歩まれた方がよろしいかと存じ上げます。それに聖女様はここアトランティス国の王様よりも権威がある存在でございます。何を遠慮されているのですか?もっと、のびのびと。前世送れなかった人生の分まで、自由に羽ばたいてくださいませ」

 そうなのか……。知らず知らずのうちに、前世の枠の中に自分から嵌りに行っていたことを思い知ったのだ。

 前世、お妃教育でさんざんやらされた「王妃の在り方」「王妃の存在」「王妃の姿勢」などの科目が頭の中で反芻される。

 あの当時のカンザス先生、本当に厳しくて怖い存在だった。思い出しただけで、身震いするほど。

 ティアラベルローゼは、クスリと笑い、荷物をまとめていく。この学園からもらった大使館を拠点として、アトランティスの各地を旅することにした。どうせ学園を卒業したら、ふぉこかの国の王子様のところに政略結婚させられる運命なのだから

 若いうちに思いっきり羽目を外そう。週末はクリストファー殿下との約束があったけど、
今日のティアラベルローゼの期限は悪い。
 だから、すっぽかしちゃお。

 エレモアは、ティアラベルローゼの企みに微笑みを浮かべる。そして、自らも進んで荷造りを手伝い、自分の荷造り もちゃっかり用意していく。

 こういうところ前世から変わっていない。

 きょとんとしていたロバートだが、エレモアの動きに何かを察して、自分も手短に荷造りを済ませる。

 ロバートの様子を眺めていた他の騎士も我先に、と荷造りをはじめ、マーシャル大使館の中では、引っ越しでもするかのような騒ぎになっていく。

 皆、行先がどこかも知らないで、夜逃げでもするような勢いで荷造りに精を出し始めた。

「みんな何を慌てて、そんなに荷造りをしているの?」
「へ?」

 王女殿下に言われ、ハタと手を止め、お互いに顔を見合わせている。

「わたくし、週末に気晴らしでこの国の田舎の方へ行って、ピクニックでもしようと思っているだけなのに」

「はあ?」

 ティアラベルローゼの言葉に、使用人一同唖然とする。

 気まずそうに、料理長がもじもじと、
「確かに王女殿下から、ピクニックのお弁当を申し遣っております。でも、引っ越しなんて、話し、一度も聞いておりません」

 その時、一人が声を荒げた。

「誰だ!?聖女様がアトランティスを捨てるだなんて、言い出した奴は!?」

 皆、首を横に振り、知らないと言い張る。

「ごめんなさい。みんなに誤解させちゃったみたいね。今まで、ピクニックに行ったことがなかったものだから、何を持って行ったらいいか見当がつかなくて。日曜の夜には戻るから心配しないで」

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