夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 久しぶりに広場まで来たティアラベルローゼは、噴水前がちょうどアイスバーンになっていて、子供たちが元気にスケートを滑っているところに出くわす。

 元気な笑い声に寒さが吹っ飛ぶ思いで、やっとマーシャル国に戻って来られた感がある。

 今回の外出の目的は、婚約者であるアレキサンドラ殿下にお土産を買うこと。

 お土産は毎日、使ってほしいから羽ペンを買うつもりで来た。

 文房具店に入ると、目移りするものばかりで、いざ羽ペンを買うつもりで来たけど、メモ帳に宝石が埋められている革張りのものがあり、つい、手に取って眺めてしまう。

 便せんに封筒も可愛いものばかり、あれこれと手にとっては、商品棚に戻すといったことをしている。

 見かねた女主人が、声を掛けると、すぐにティアラベルローゼがお忍びで来ていることを察する。

「後程、何点かお城へ参上致しましょうか?」
「ええ、お願い」

 結局、何も買わずにお店を出てしまう。何をしているんだか。

 文房具店の隣に雑貨店があったので、そこもついでに覗いてみることにした。今度は、王女であることがバレませんように、と祈りながら。

 その雑貨店は、年老いたご婦人が一人で店番をしている。普通に入っていったら、「いらっしゃいませ」の声もなく、よく見ると椅子に腰かけ、居眠りをされている。

 不用心に呆れながらも、おかげでじっくり見て回ることができた。

 気に入ったものは、オルゴールとスノードーム。オルゴールはふたを開けると音楽に合わせて、紳士淑女がくるくると踊り出すもの。まるで、学園祭でティアラベルローゼとアレキサンドラみたいだったので、思わずクスリと笑ってしまったもの。

 スノードームは、マーシャル国の王都の風景を象ったもので、ひっくり返すと、まさに外の風景と一致する。

 寝ている店番のお婆さんを揺り起こして、二つを包んでもらう。お気に入りのものが変えたので、足取り軽く噴水広場に差し掛かったところ、突然、前方から暴れ馬が馬車を引きずりながら、やってくるのが見える。

 危ない。ティアラベルローゼは、自分がいた場所よりも、広場でスケートに夢中になっている子供たちのことを心配する。

 侍女にオルゴールとスノードームを持たせ、路地奥に入るように促し、自分は馬車の前に飛び出す。

 そして、死に戻る前にさんざん使った聖魔法を駆使して、暴れ馬を大人しくさせたのだ。

 スケートで遊んでいた子供たち、周りで散策していた大人たちも、ティアラベルローゼの咄嗟の行動に呆然とする。何よりも馬車の御者が飛び降りてきて、ティアラベルローゼの眼の前に跪く。

「まさか!?あなた様は、聖女様であらせられますか?」

 その言葉に反応したかのように、周りにいた大人たちが口々に「聖女様だ!」

「聖女様、万歳!」
「王女様、万歳!」

 路地奥から出てきた侍女も震えながら、ティアラベルローゼの横に並ぶ。

 その二人を取り囲むようにして、民衆が押し寄せる。
「聖女様、留学先から戻って来られて、ありがとう存じます」
「王女様、ご尊顔を拝し光悦至極でございます」

 ティアラベルローゼは、内心、冷や汗もので。あーやっちゃった。町娘の恰好をして、お忍びでショッピングに出かけたことがバレてしまったから。もう、素知らぬ顔をして、というより、ここから出られなくなってしまったことに気づく。

いつもなら、ロバートが傍にいてくれて、すぐ騒ぎを収めてくれるのだが、今はエレモアと赤ちゃんにベッタリしている。

 だから、この喧騒の中から彼女を救い出してくれる者は一人もいないはず。と諦めかけていた。

 その時、大きな手が伸びてきて、ティアラベルローゼと侍女は、2党の馬に乗せられ、連れ去られた。

 その大きな手の持ち主は、なんと!アンドリューだった。

「どうして……?」
「冬休み、君はきっと、マーシャル国に里帰りすると思って、先回りするつもりでいたのだが、遅れてしまい申し訳ない」

 アンドリューは、護衛騎士とともに、先にアンソロジー国からマーシャル国に向けて出発していたのだ。

 アンドリュー曰く「自分は、聖女様の幸せを見守るだけの存在」というが、その実態は、ほとんどストーカーそのもの。

 でも、今回ばかりは、そのストーカーに掬われた。

 ティアラベルローゼは、素直に感謝の言葉を述べ、国賓としてアンドリュー殿下を王城に泊めることにした。学園が始まるまでの2週間、アンドリューはマーシャル国に滞在することになったのだ。

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