夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 アンドリューの護衛騎士隊長の名は、ピエール・サンローラン。伯爵家の3男坊で、彼もまた「死に戻り」の経験者の一人だった。

「ティアラベルローゼ殿下、お久しぶりに存じます。実は私も、前世の記憶持ちでして……、これから申し上げることは、独り言と聞き流してくだされば、幸甚です」

 驚くティアラベルローゼを尻目に、淡々とした表情で話を続ける。

「あの日、主君が妃殿下とエレモアを置き去りにされたとき、ビックリして、その真意を問い質そうとしたら、団長(ロバート)に止められ、泣く泣く見過ごさざるを得なかった。主君は、そういう意味で、最低のクズ男です。だから、死に戻った後、主君を選ばなくて、本当に良かったと喜んでいます。そして、団長もアプリコット国を捨て、愛を貫いた。今や一児の父となられたわけで、うらやましい限りです。死に戻り団長のお子さんを見て、もう思い残すことはありません。私は、あの時、妃殿下を見捨てた一人ですから、国賓として滞在させていただくことに胸が痛む思いをしています。どうか私を牢獄に入れてください。そして、あの時の罪を償わせてください」

「わかりましたわ。でも、ストーカーといえども、貴方は、エミリーを助けてくれたのですから、このままアプリコットへ帰国させてあげます」
「え?そんな……許されないことをしてしまった私を……ありがとうございます!」

 ピエールがアプリコット国に送還されると知り、ロバートとエレモアは、一度、アプリコットの侯爵に孫を見せに行きたいと思っていたので動向を申し出る。

 ティアラベルローゼは快諾し、3人、いや5人、赤ちゃんとついでにアンドリューを転移魔法陣に乗せる。

 別れ際、ロバート夫妻に
「しばらく産休と育休をあげるわ。マーシャルは寒いから、まだマシなアプリコット国でゆっくり休んでいらっしゃいな。結婚式に間に合えばいいからね。気にしなくても大丈夫」

 帰る時のために、赤ちゃんと夫妻にだけ、転移石を渡しておくことにした。転移石と言っても、普通の石ころに、転移魔法を仕込んだものだけど、高価な宝石にしなかったのは、誰かに盗まれないようにしたため、どこにでも転がっている石ころに魔法をかけた。

 



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 それから、瞬く間に卒業式のシーズンに突入する。

 すでにロバート家族は、帰国して、アンソロジー国に来ている。なんで、赤ちゃんまで一緒なの?理由は、離れがたいからということ。ロバートからして、初めての子どもだから?とはいえ、護衛としての任務があるでしょ?

 ロバートがこんなにもマイホームパパになるとは、思ってもみなかったこと。そして、アプリコット国からピエールも駆けつけてくれた。

 卒業式の後、一同はアトランティス国に戻り、大聖堂で挙式する手はずが調っている。

 移動手段は、もちろんティアラベルローゼが展開する転移の魔方陣。つまり、ティアラベルローゼを敵に回すようなことがあれば、いつでもどこでも大量の兵を送り込むことができるということを証明するために、あえて抑止力の代わりになると信じて、転移の魔法陣を使うことにしたのだ。

 アレキサンドラ側は、妃殿下が聖女様だと言うことを他の兄弟たちに誇示するために、むしろ歓迎している。

 アレキサンドラとティアラベルローゼは、恋愛結婚だけど、こういう面では政略結婚に近い。それぐらい王位継承権をめぐる熾烈な戦いがあるということを二人とも身をもってわかっている。

 純白のウエディングドレスに身を包んだティアラベルローゼは、幸せそうに満面の笑みを浮かべる。

 それを見ていたクリストファーとマクシミリアンは、悔しそうに顔を歪めているが、ただ一人アンドリューの心だけは凪いでいる。死に戻ってから、無数の後悔に飲まれてきた男だが、今は静かに元・妻の幸せだけを願っている。

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