聖女のひ孫~婚約破棄されたのなら自由に生きます

青の雀

文字の大きさ
22 / 33

22.

しおりを挟む
 ジークフリートの葬儀が終わり、日常生活を取り戻したアリエールのもとに本国の国王陛下がご逝去され、ルクセンブルク家が次期国王になることが正式に決まったという知らせが届く。

 20歳のエドワードお兄様では、まだ国を統べるには若すぎるということで、国王は父が即位することになり、お兄様は立太子をすることになったのだ。

 立太子の儀が済めば、ハーバムルト国も正式にお兄様とセレナーデ王女の婚約を発表すると言っているし、お祝いムードに包まれる。

 まだ前国王の国葬も終わっていない。水面下では、様々な思惑が交差し、目端の利く貴族は、もうルクセンブルク家にすり寄ってくる者がいる。

 面会の申し出があった場合、慎重に判断しなければならなくなったことは、面倒なことで、心面はゆい。

 そんな時、アールスハイド侯爵家の次女キャサリン嬢がお兄様に宛てラブレターをよこしてきたという話を聞き、驚きに言葉が出なかった。

 変わり身が早いというべきか?我が家がジークフリート殿下と婚約直前まで行っていた話を知らないとでも思っているのだろうか?まるで、コウモリのような女だと思う。

 我が家も王族の一員なのだが……。

 それほどまでして、王家の一員になりたいものか。自身にそれほどの価値があると勘違いしているとしか思えない。

 絵姿を同封してあったが、それほどの美人でもない。家柄も、王家の嫁としてはイマイチ。学園での成績も中の中ぐらい、とてもおきさき教育に耐えられるとは思えない。

 乗りそこなった玉の輿に、何が何でも乗りたいという意欲は認める。

 でも、お兄様は今、セレナーデ殿下との恋に夢中になっておられるご様子。

 ルクセンブルク家のアリエールのクローゼットは、今や王宮はもちろんのことながら、アムステルダム家、ハーバムルトの王城までつながっている。

 それで毎日、セレナーデ様との逢瀬を楽しんでいられる。人の気も知らないで。どうするのよ?キャサリン嬢のことは。

 お父様は、放っとけ。と言われている。

 てっきりアールスハイド家が、王家とつながりを持ちたいからとキャサリン嬢をけしかけているものとばかりに思っていたが、ここへきてどうも様子が違うということに気づく。

 自分から、玉の輿に乗せてくださいとの内容に呆れを通り越して、呆然とするぐらい。キャサリン嬢が大変な野心家の持ち主だとは思いもしなかったこと。

 ラブレターなのに、愛の言葉は一言もない。どちらかと言えば、釣り書に似た趣がある。

 まるで学園にいたときの男爵令嬢みたい。あの娘も結局、どうなったかはよく知らないけど、キャサリン嬢も末路は同じかもしれない。

 身の程をわきまえないと、とんだ大やけどを負いかねない。

 それにキャサリン様は、どうやらお兄様のお姿をよく知らないみたいで、嘔吐のタウンハウスの前で日がな一日中、玄関を睨んで立派な身なりの若い男性が出入りするたびに、追いかけて行って、氏名を聴くということを繰り返していらっしゃるようで、来訪者が我が家の使用人に苦情を言い、事態が発覚した。

 来訪者の多くは、エドワードお兄様のご学友で、将来の国の重鎮を担う若者ばかり。

 だったら、そこで手を打てばいいものを、どうしても王妃になりたいらしい。

 やがて、キャサリン嬢の振る舞いは社交界で、格好の標的になる。他の上位貴族が黙っているわけがない。公爵令嬢を差し置いて、自分から売り込んでいくなどの行為は、はしたないとされ笑いものになっていく。

 その矛先は、キャサリン嬢だけでなくアールスハイド侯爵にまで及んでいくことに。

 アールスハイド侯爵は、領地替えを余儀なくされ、辺境の地へ追いやられてしまうことになったのだ。

 学園もキャサリン嬢の転校もしくは退学を促すようになり、もはや居場所がない。それをこともあろうか、ルクセンブルク家へ救済を求めてこられ、こちらも開いた口がふさがらない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

処理中です...