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お婆様のところで、道穴を作り戻ってきてから数日が経った。
やっぱり王宮で誰かに見られていたみたいで、お婆様に
「この前、ご一緒にいらした若い女性の方は、どなたですか?」
という問い合わせがあったらしく、お婆様はなんと!ボケたふりで
「知らないわ。」
返答されたそうです。さすが……というべきか、なんというべきか。聞いた方も、まさかハーバムルト国の王太子殿下の婚約者だとは思っていないようで、元王女様のお知り合いの方なら、ジークフリート殿下のお相手にふさわしいと思ったらしく問い合わせをしたとか。
そして、ジークフリートは、というと。お婆様の読みが当たり、アールスハイド侯爵家の次女キャサリン嬢と婚約される運びとなったらしい。
婚約式は、明日というから、明日にでも、ジークフリート殿下はこの世を去るということになる。ご愁傷さまです。もうこれで、二度と会うこともないと思うと、すっとします。
もうどうでもいいわ。
そう思っていたら、婚約式をする前にジークフリートのカラダの一部が溶けてなくなってしまったらしい。もちろん、その時は大変な苦しみようで、命に別状はなかったというだけで、ジークフリートいわく、「こんな目に遭うぐらいなら死んだ方がマシ。」と言ったらしい。ご心配なく、婚約式が始まれば、すぐに死ねますから。
どこが溶けたかは、あえて聞かなかったけど、たぶんアソコだと思う。でも、それでよく婚約式が取りやめになったりはしなかったのだろうか?
たぶんアールスハイド侯爵家には、内緒にしているのだろう。
アールスハイドもうまくいけば、公爵に格上げされるかもしれないとの期待から、次女を差し出す気になったのだろう。
そして、婚約式当日の朝、ジークフリート殿下は、自室で静かに息を引き取られたという知らせが、届く。
葬儀は、2日後の朝に執り行われるらしい。
ルクセンブルク家以外では、急な話に一様に、驚きを隠せないご様子。
そして葬儀当日、ハーバムルト国からは、グレゴリー殿下が国王陛下の名代として、アリエールとともに参列する。
その姿に、「せめて聖女様と婚約破棄などせずに、ご結婚されていたら、ジークフリート殿下も死なずに済んだのかもしれない。」
囁き声が漏れ聞こえてくる。
「聖女様だとご存知なかったのか?」
「そんなはずは、なかろう。」
「不謹慎かもしれないが、国外追放になった男爵令嬢がジークフリート殿下と聖女様の仲を壊したという噂がある。」
「どこの男爵家だ?」
「さぁ?そこまでは……、殿下もとんだ毒婦に人生の邪魔をされたものだな。」
「まだ、お若いのに。」
参列者の誰一人として、ジークフリートは呪いのせいで、死んだとは思っていないようなので、ひとまず安心する。
葬儀の後、グレゴリー殿下を伴って、ルクセンブルク家へ行く。
王位継承権者の順位が繰り上がったことで、一応対策会議が開かれる。
「それでセレナーデとのことのお返事を、まだいただいておりませんが。」
「いずれ、我が家に玉座が降ってくる。その時までは、ご猶予いただけませんか?」
「それは願ってもないこと。では、セレナーデにはそのように伝えておきましょう。」
ルクセンブルク家からアムステルダム家の道穴を通り、ハーバムルトへ帰る。
「これが噂の道穴ですか?この前の婚約式で公爵様が言われていたことですね。どんなものかと、一度通ってみたかった。これなら簡単に行き来できますね。」
行きは、アリエールの転移魔法で、いきなり来たもので、道穴を通らずに来たから。グレゴリー殿下は、上機嫌で王城へと向かわれる。
「なんなら、王城にも道穴を作ってもらいたいと思っている。両親に行ってみるよ。近いうちにまた会おう。」
アリエールの額にチュッと、キスを落とされ笑顔で帰って行かれる後姿を見送る。
やっぱり王宮で誰かに見られていたみたいで、お婆様に
「この前、ご一緒にいらした若い女性の方は、どなたですか?」
という問い合わせがあったらしく、お婆様はなんと!ボケたふりで
「知らないわ。」
返答されたそうです。さすが……というべきか、なんというべきか。聞いた方も、まさかハーバムルト国の王太子殿下の婚約者だとは思っていないようで、元王女様のお知り合いの方なら、ジークフリート殿下のお相手にふさわしいと思ったらしく問い合わせをしたとか。
そして、ジークフリートは、というと。お婆様の読みが当たり、アールスハイド侯爵家の次女キャサリン嬢と婚約される運びとなったらしい。
婚約式は、明日というから、明日にでも、ジークフリート殿下はこの世を去るということになる。ご愁傷さまです。もうこれで、二度と会うこともないと思うと、すっとします。
もうどうでもいいわ。
そう思っていたら、婚約式をする前にジークフリートのカラダの一部が溶けてなくなってしまったらしい。もちろん、その時は大変な苦しみようで、命に別状はなかったというだけで、ジークフリートいわく、「こんな目に遭うぐらいなら死んだ方がマシ。」と言ったらしい。ご心配なく、婚約式が始まれば、すぐに死ねますから。
どこが溶けたかは、あえて聞かなかったけど、たぶんアソコだと思う。でも、それでよく婚約式が取りやめになったりはしなかったのだろうか?
たぶんアールスハイド侯爵家には、内緒にしているのだろう。
アールスハイドもうまくいけば、公爵に格上げされるかもしれないとの期待から、次女を差し出す気になったのだろう。
そして、婚約式当日の朝、ジークフリート殿下は、自室で静かに息を引き取られたという知らせが、届く。
葬儀は、2日後の朝に執り行われるらしい。
ルクセンブルク家以外では、急な話に一様に、驚きを隠せないご様子。
そして葬儀当日、ハーバムルト国からは、グレゴリー殿下が国王陛下の名代として、アリエールとともに参列する。
その姿に、「せめて聖女様と婚約破棄などせずに、ご結婚されていたら、ジークフリート殿下も死なずに済んだのかもしれない。」
囁き声が漏れ聞こえてくる。
「聖女様だとご存知なかったのか?」
「そんなはずは、なかろう。」
「不謹慎かもしれないが、国外追放になった男爵令嬢がジークフリート殿下と聖女様の仲を壊したという噂がある。」
「どこの男爵家だ?」
「さぁ?そこまでは……、殿下もとんだ毒婦に人生の邪魔をされたものだな。」
「まだ、お若いのに。」
参列者の誰一人として、ジークフリートは呪いのせいで、死んだとは思っていないようなので、ひとまず安心する。
葬儀の後、グレゴリー殿下を伴って、ルクセンブルク家へ行く。
王位継承権者の順位が繰り上がったことで、一応対策会議が開かれる。
「それでセレナーデとのことのお返事を、まだいただいておりませんが。」
「いずれ、我が家に玉座が降ってくる。その時までは、ご猶予いただけませんか?」
「それは願ってもないこと。では、セレナーデにはそのように伝えておきましょう。」
ルクセンブルク家からアムステルダム家の道穴を通り、ハーバムルトへ帰る。
「これが噂の道穴ですか?この前の婚約式で公爵様が言われていたことですね。どんなものかと、一度通ってみたかった。これなら簡単に行き来できますね。」
行きは、アリエールの転移魔法で、いきなり来たもので、道穴を通らずに来たから。グレゴリー殿下は、上機嫌で王城へと向かわれる。
「なんなら、王城にも道穴を作ってもらいたいと思っている。両親に行ってみるよ。近いうちにまた会おう。」
アリエールの額にチュッと、キスを落とされ笑顔で帰って行かれる後姿を見送る。
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