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第2章 極悪上司の事情
2.食事に誘うのはセクハラですか?
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パンケーキを食べたあとは腹ごなしにしばらく、ふたりでお店を見て回る。
「桐子の会社って私服だっけ?
いいなー、私も私服の会社にすればよかった」
「私服は私服で大変だよー。
毎日、なに着ていくか迷うし」
そろそろ、夏物も買わなきゃいけない時期。
服代で今月もかなりの出費になりそうだから、またもやしと鶏胸で乗りきらなきゃ。
今日、パンケーキなんて贅沢もしたし。
「ふーん。
……あ、これとか桐子に似合いそう」
「ええっ……」
美空がラックから引き出したのは、ハイウエ気味の、キャメルのタイトスカートだった。
そこまではいいが、正面センターにかなり深くスリットが入っている。
「ほら、これで例の彼を悩殺しちゃいな」
さらに翡翠色の薄手のブラウスと一緒に、試着室へ閉じ込められた。
「いや、これはないでしょ……」
とか言いつつ、一応は着てみる。
「ど、どう……?」
丈は私好みのミモレ丈だからいいけど、スリットは膝上まで入っていて正直、かなり恥ずかしい。
「いいよ!
桐子は足、綺麗なんだから、出さないと損!
ほんとはミニとか穿かせたいけど、それはさすがに恥ずかしいだろうから、これで妥協する」
美空は似合う似合うって喜んでいるけど、妥協でこれか……。
でもいつまでも保守に徹せず、これくらいたまには攻めてみてもいい……のか?
「これくらい、着た方がいいって。
ね?」
「う、うん。
そう、だね」
結局、ぱちんとウィンクした美空に後押しされ、買ってしまった……。
その後も街をうろうろし、晩ごはんまで食べて帰る。
「じゃ、また近いうちに」
「またねー」
駅で美空と別れて電車に乗った。
――それにしても。
なんで今日、好きな人って訊かれて京塚主任の顔が思い浮かんだろう。
ない、ないって。
自分の考えを改めて打ち消しながら、ありえなさすぎて笑ってしまった。
GW明けのその日。
私は姿見の前で例の服を着て、うんうん唸っていた。
「乗せられて買ったけど……」
やっぱり、スリットが深い気がする。
シルエットと色は好みなのだ、ただ、スリットが、ってだけで。
「まあ、でも、ミニスカートってわけじゃないし……」
散々悩んだあげく、それを着て出勤した。
「星谷さん、おはよう」
「おはようございます」
ちょうど、お茶を淹れて戻ってきたところで、西山さんが出勤してきた。
「今日の星谷さんて……色っぽいね」
「は!?」
思わず、落としそうになったカップを慌てて掴む。
「あ、ごめん!
これってセクハラになるのかな!?
だとしたらほんとごめん!
他意はないんだ、ただ、服が違うからかいつもより色っぽく……あ、また!
ほんと、ごめん!」
「……ぷっ」
顔を真っ赤にし、わたわた慌てながら弁明する西山さんがおかしくて、つい吹き出していた。
「えっと……あの?」
上目で、彼が私の顔をうかがう。
「別に怒ってないですよ」
「よかったー」
ほっ、と彼が、胸を撫で下ろす。
セクハラで上司に報告されたら、たまんないもんね。
「あのさ。
お詫びじゃないけど今日、食事、行かない?
あ、これってまた、セクハラ!?」
ガシガシとあたまを掻いている西山さんが、おかしくって仕方ない。
こんなに、自分の発言ひとつひとつに気を遣う人が悪い人なはずがない。
それに、美空にだって言われたのだ。
彼氏にしたらよさそうな人なら、とりあえず付き合ってみれば、って。
さすがに、付き合うまではないけれど。
「いいですよ、食事だけなら」
「よかった!」
ぱーっと彼の顔が輝く。
わかりやすい人だなー。
「じゃあ夜!
楽しみにしてるから!」
スキップしかねない勢いで席へ行く西山さんを苦笑いで見送り、私も席へ着く。
一歩くらい、踏み出してみてもいいと思う。
好きになれるかどうかはわからないけど。
「桐子の会社って私服だっけ?
いいなー、私も私服の会社にすればよかった」
「私服は私服で大変だよー。
毎日、なに着ていくか迷うし」
そろそろ、夏物も買わなきゃいけない時期。
服代で今月もかなりの出費になりそうだから、またもやしと鶏胸で乗りきらなきゃ。
今日、パンケーキなんて贅沢もしたし。
「ふーん。
……あ、これとか桐子に似合いそう」
「ええっ……」
美空がラックから引き出したのは、ハイウエ気味の、キャメルのタイトスカートだった。
そこまではいいが、正面センターにかなり深くスリットが入っている。
「ほら、これで例の彼を悩殺しちゃいな」
さらに翡翠色の薄手のブラウスと一緒に、試着室へ閉じ込められた。
「いや、これはないでしょ……」
とか言いつつ、一応は着てみる。
「ど、どう……?」
丈は私好みのミモレ丈だからいいけど、スリットは膝上まで入っていて正直、かなり恥ずかしい。
「いいよ!
桐子は足、綺麗なんだから、出さないと損!
ほんとはミニとか穿かせたいけど、それはさすがに恥ずかしいだろうから、これで妥協する」
美空は似合う似合うって喜んでいるけど、妥協でこれか……。
でもいつまでも保守に徹せず、これくらいたまには攻めてみてもいい……のか?
「これくらい、着た方がいいって。
ね?」
「う、うん。
そう、だね」
結局、ぱちんとウィンクした美空に後押しされ、買ってしまった……。
その後も街をうろうろし、晩ごはんまで食べて帰る。
「じゃ、また近いうちに」
「またねー」
駅で美空と別れて電車に乗った。
――それにしても。
なんで今日、好きな人って訊かれて京塚主任の顔が思い浮かんだろう。
ない、ないって。
自分の考えを改めて打ち消しながら、ありえなさすぎて笑ってしまった。
GW明けのその日。
私は姿見の前で例の服を着て、うんうん唸っていた。
「乗せられて買ったけど……」
やっぱり、スリットが深い気がする。
シルエットと色は好みなのだ、ただ、スリットが、ってだけで。
「まあ、でも、ミニスカートってわけじゃないし……」
散々悩んだあげく、それを着て出勤した。
「星谷さん、おはよう」
「おはようございます」
ちょうど、お茶を淹れて戻ってきたところで、西山さんが出勤してきた。
「今日の星谷さんて……色っぽいね」
「は!?」
思わず、落としそうになったカップを慌てて掴む。
「あ、ごめん!
これってセクハラになるのかな!?
だとしたらほんとごめん!
他意はないんだ、ただ、服が違うからかいつもより色っぽく……あ、また!
ほんと、ごめん!」
「……ぷっ」
顔を真っ赤にし、わたわた慌てながら弁明する西山さんがおかしくて、つい吹き出していた。
「えっと……あの?」
上目で、彼が私の顔をうかがう。
「別に怒ってないですよ」
「よかったー」
ほっ、と彼が、胸を撫で下ろす。
セクハラで上司に報告されたら、たまんないもんね。
「あのさ。
お詫びじゃないけど今日、食事、行かない?
あ、これってまた、セクハラ!?」
ガシガシとあたまを掻いている西山さんが、おかしくって仕方ない。
こんなに、自分の発言ひとつひとつに気を遣う人が悪い人なはずがない。
それに、美空にだって言われたのだ。
彼氏にしたらよさそうな人なら、とりあえず付き合ってみれば、って。
さすがに、付き合うまではないけれど。
「いいですよ、食事だけなら」
「よかった!」
ぱーっと彼の顔が輝く。
わかりやすい人だなー。
「じゃあ夜!
楽しみにしてるから!」
スキップしかねない勢いで席へ行く西山さんを苦笑いで見送り、私も席へ着く。
一歩くらい、踏み出してみてもいいと思う。
好きになれるかどうかはわからないけど。
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