求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
37 / 38
最終章 面倒、だけどいい

10.ハジメテ、なんですが?

しおりを挟む
夜、超ご機嫌で帰ってきた侑は超ご機嫌で私の作った料理を食べ、超ご機嫌でお風呂に入り、――そして。

「麻里恵」

……私をベッドに押し倒した。

「あんね。
言わんといけんことがふたつあって」

「うん」

って、耳をあむあむ甘噛みするのはやめろ!
聞く気ないだろ!

「ひとつは、私、性欲とか薄いし、そういうのしたいと思ったことがないけん、無理かもしれん」

「うん。
気持ち悪いとか、やめたいとか思ったときはすぐに言ってくれ。
やめるから」

やってみたら案外、いいかもしれないから我慢して最後までチャレンジしてみよう、とか言われるんじゃないかという心配は杞憂に終わった。
いや、薄々わかっていたけどね、私の好きになった侑は、そういう人だって。

「まー、でも、さっきから気持ちよさそうだし、いつもキスしたあとエロ顔になっているから大丈夫だとは思うけどな。
……うおっ、危ないぞ!」

華麗に繰り出した拳は、侑の手によって阻まれた。
ひと言多いんだよ、ひと言!

「もうひとつは、そういうわけで……ハ、ハジメテ……なので、……その。
優しく、してください」

「可愛い、麻里恵……!」

目を伏せて視線を外して言ったら、いきなり彼の唇で唇を塞がれた。
すぐに舌が入ってきて、彼に翻弄される。
軽い酸欠でぼーっとなったあたまで、侑を見上げる。

「優しくする。
約束する、から」

愛おしそうに額に触れる唇は優しいけれど。

……いまのキスじゃ、信用ならん。

その後、結論からいえば、できた。
嫌悪感も感じることなく、侑に溺れて、彼を受け入れた。
それはいい、それはいい、が。

「そんなにむくれることないだろ」

「……」

私の機嫌を取ろうとキスしてくる侑を、無言で顔を背けて拒否する。

「……優しくしてってゆーたやん」

痛いのは痛かったけど、侑とひとつになれた痛みだから嬉しかった。
でも、そのあとがさー。

「麻里恵が可愛くて興奮したんだから仕方ないだろ」

「……!」

まるで私が悪いとでも言うような彼は口ぶりで、つい睨みつけていた。

「やけんってハジメテの人を相手に、三回もすることないやん!?」

「えー、だからあまり無理させると悪いと思って、三回でやめたんだぞ?」

侑は反省する気がないらしい。
はぁーっ、と重いため息が私の口から落ちていった。

「……うん。
わかった。
もういい、寝る」

忘れていたわけじゃないが、侑はそういう人だ。
諦めるしかない。

「あ、麻里恵」

「……なに?」

もそもそと布団に潜り込んだところで声をかけられた。
私の声は不機嫌マックスだが、誰かのせいで疲れていい加減眠いんだから、仕方ない。

「シーツ、汚れてるから、今日は僕のベッドで寝たほうがよくないか」

「……!」

反射的に投げた枕は危なげなくキャッチされ、ますます機嫌が悪くなっていく。

「ソーデスネ、ソレハソーデスネ」

ベッドから出たら、枕を抱かされた。
そのまま、侑にお姫様抱っこされる。

「お、降ろせー!」

「ん?
そんな元気があるなら、もう一回していいか?」

その言葉でぴたっとおとなしくした。
今日はもう、勘弁してもらいたい。

侑の部屋に連れていかれ、ベッドに寝かせてもらった頃にはうとうとしていた。

「おやすみ、僕のお姫様」

ちゅっ、とおやすみのキスをもらいながら、……姫は嫌だ。
と思ったものの、声には出せないまま眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

久我くん、聞いてないんですけど?!

桜井 恵里菜
恋愛
愛のないお見合い結婚 相手はキモいがお金のため 私の人生こんなもの そう思っていたのに… 久我くん! あなたはどうして こんなにも私を惑わせるの? ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 父の会社の為に、お見合い結婚を決めた私。 同じ頃、職場で 新入社員の担当指導者を命じられる。 4歳も年下の男の子。 恋愛対象になんて、なる訳ない。 なのに…?

【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。 それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。 訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語

雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

松本ユミ
恋愛
デザイン事務所で働く伊藤香澄は、ひょんなことから副社長の身の回りの世話をするように頼まれて……。 「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」 副社長の低く甘い声が私の鼓膜を震わせ、封じ込めたはずのあなたへの想いがあふれ出す。 真面目OLの恋の行方は?

【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん
恋愛
ハナとコタローは、 お隣同士の幼馴染。 親から甘いもの禁止令を出されたハナがコタローにチョコレートをせがんだら、 コタローがその対価として望んだのは、 なんとキス。 えっ、 どういうこと?! そして今日もハナはチョコを受け取りキスをする。 このキスは対価交換。 それ以外に意味はない…… はずだけど……。 理想の幼馴染み発見! これは、 ちょっとツンデレで素直じゃないヒロインが、イケメンモテ男、しかも一途で尽くし属性の幼馴染みと恋人に変わるまでの王道もの青春ラブストーリーです。 *本編完結済み。今後は不定期で番外編を追加していきます。 *本作は『小説家になろう』でも『沙和子』名義で掲載しています。 *イラストはミカスケ様です。

わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都
恋愛
藤本波瑠《ふじもとはる》は、仕事に邁進するアラサー女子。二十九歳ともなればライフスタイルも確立しすっかり独身も板についた。 だが、条件の揃った独身主義の三十路には、現実の壁が立ちはだかる。 身内はおろか取引先からまで家庭を持って一人前と諭され見合いを持ち込まれ、辟易する日々をおくる波瑠に、名案とばかりに昔馴染みの飲み友達である浅野俊輔《あさのしゅんすけ》が「俺と本気で恋愛すればいいだろ?」と、囁いた。 幼かった遠い昔、自然消滅したとはいえ、一度はお互いに気持ちを通じ合わせた相手ではあるが、いまではすっかり男女を超越している。その上、お互いの面倒な異性関係の防波堤——といえば聞こえはいいが、つまるところ俊輔の女性関係の後始末係をさせられている間柄。 そんなふたりが、いまさら恋愛なんてできるのか? おとなになったふたりの恋の行方はいかに?

処理中です...