前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

017-1

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 寒さが増した。
 雨が降ったら雪になっちゃうんじゃないかって思うぐらいに。身体の中に寒さがしみてくるみたいな、そんな寒さ。
 その所為なのか、お風呂に入る人が増えた。それから、お風呂に入った後に食堂に寄る人も。
 どうも、お風呂に入ってキレイになって温まって、夜食を食べてから寮に戻るのが、流行りらしい。ラズロさんが言ってた。
 だから、昼間より夜の方が食堂が混むようになってきて、不思議な感じ。
 僕の部屋より食堂の方が暖かいから、ネロは食堂に置いてある籠の中にいる。何枚も重ねた布の間にもぐりこんで寝ている。
 コッコとメルは、専用に作ってもらった小屋の中で仲良く一緒にいる事が多い。メルはモンスターだからか寒さに強い。そんなメルの上にコッコはのっかっている。温かいのかも知れないけど、横着なだけかも知れない……。
 フルールはいつも僕の後ろにくっ付いて歩いてる。スライムは寒さは平気なのかな。

 女湯に入ってきたらしいリンさんが、カウンターに腰掛けた。

「アシュリー、こんばんは! 私、初めてお風呂に入らせてもらったんだけど、凄いね! 身体が中から温まったよ!」

 王都のお風呂は蒸気式らしい。これはこれで温まって気持ち良いらしいけど、疲れていたり、寒さに固まった身体をお湯の中に入れた時の、とけるというか、ほぐれていく感じがたまらない、と言う人が多い。
 うん、同感です。

「良かったです。ただ、湯冷めしないように気を付けて下さいね。あっという間に冷えてしまうので」

「ゆざめ?」

「温かいと思っていたら、気付かないうちに冷えてて、それで風邪をひく、って言うのが多いんですよ」

 なるほどー、と納得したようでリンさんは頷いた。

「夕食、食べていきますか?」

「うん、食べたい」

 今日は端肉とネギのみじん切りをマヨネーズでからめて一つにまとめたものの両面に、パン粉をまぶして焼いてみた。
 イースタンさんに教えてもらったマヨネーズは、攪拌さえ出来れば作る事は難しくない。
 卵黄と塩、それからようやく出来上がった粒マスタードと白ワインビネガーを入れてひたすら攪拌。
 卵が冷えすぎていると上手くクリーム状にならないと、レシピのコツに書いてあった。こういうちょっとした事が成功や美味しさを左右するんだよね。

 出来上がった粒マスタードは、ザックさんとサイモンさんにお裾分けした。
 ザックさんは早速お店の料理に添えて出したみたいで、お客さんから好評との事だった。
 サイモンさんは、扱いに困っていたカラシナが粒マスタードに変わった事で、自分で作るか悩んだ結果、ラズロさんから作り方を教わって断念した模様。来年もカラシナを渡すので、分けてもらえると嬉しい、との事だった。
 大変だもんね。

 端肉のパン粉焼きに胡椒を潰したものをパラパラとかけ、ニンジンの酢漬けとネギの赤ワインビネガー漬けを添える。焼き上がったばかりのパンとカブのスープを、カウンター越しにリンさんに出す。

「あぁ、湯気が出てるー!」

 寮の食事は冷めたものが多いと、ノエルさんも言ってたからね。

「温かいうちにどうぞ」

「ありがとー!」

 美味しそうに僕の作った料理を食べてくれるリンさんを見ていたら、嬉しくなってきた。
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