万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第八十五話 とあるギルドマスターの選択

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 ◆◇◆◇◆◇


 クロヤ達3人が初めて〈堕天の回廊〉に挑む数日前。
 〈堕天の回廊〉がある同市内の某所にあるサイサリスギルドのギルドオフィスの一室に6つの人影があった。


「……やらかしてくれたな、この馬鹿どもが」


 そう告げたのは、サイサリスギルドのギルドマスターである加賀田ミノル。
 彼の目の前に立っていたのはダンジョン〈三獣領域〉にて、当時サイサリスギルドに仮入団していた鞠川マリヤとパーティーを組んでいた男達だった。
 加賀田に睨み付けられた5人の顔には青痣があり、中には口の端から血を流した跡がある者もいた。
 直前まで加賀田から折檻を受けていた5人だが、身体をふらつかせることなく直立不動の体勢を維持していた。
 そんな団員の姿に1度舌打ちすると、加賀田は座っている椅子の背に体重を預ける。


「ソロで行動している綺麗どころな上に大型ギルドもまだ気付いていない上級覚醒者だったってのによ。先走って盛りやがって」

「で、ですがギルドマスター! 本当に俺達はそんなつもりはなかったんですッ!」

「そうです! 気付いたら夢中になって追いかけていて、ひぃッ!?」


 加賀田が悪鬼の如き形相を浮かべていることに気付き、思わず言い訳の言葉を並べていた2人が慌てて口を閉ざす。


「……チッ。正式に入団した後に、薬か金で簡単に抜け出せなくする予定だったってのによォ」


 マリヤの各種耐性の高さを考えるとヤク漬けにするのは困難だったため、おそらく借金を負わせることになっていただろう。
 だが、これまでにも加賀田は同じ様な手を使って有望な探索者を手中に収めてきたため、マリヤのことも難癖を付けて借金漬けにできる自信があった。
 そうやって実質的に奴隷にした探索者達を献上することで、加賀田とサイサリスギルドは力を拡大させてきたのだ。

 騒ぎを大きくして探索者協会がギルドの内部調査をする名分を与えるわけにもいかなかったため、仮入団状態だったマリヤの退団を2つ返事で認めていた。
 納品予定だったの損失に内心頭を抱えながら男達を暫く叱りつけた加賀田は、彼らを退室させた後に深い溜息をついた。


「はぁ……先方になんて説明したものか」

「ほう。確かに、どのような説明をしてくれるのか楽しみだな」

「ッ!?」


 自分しかいないはずの室内から聞こえてきた声に加賀田は肩を跳ね上げると、視界の端にいつのまにか立っていた者の正体に気付いた。
 椅子から転げ落ちるようにして降りながら即座に平伏する。


「こ、これは、よくぞお越しくださいましたッ」


 勝手に自分のギルドの敷地内に不法侵入してきたのを咎めることなく下手に出る。
 第3者から見ても一目で分かるほどに両者の力関係は明らかだった。
 不法侵入者は目の部分のみが空いている以外に何の特徴も無い仮面を被っている。
 だが、身体付きと声から不法侵入者が男であることが分かる。
 その仮面の男は、足元で平伏している加賀田に冷めた目を向けた後、それを無視して室内にあるソファに腰を下ろした。


「お前も座れ。そして何があったかを説明しろ。言い訳はせず、事実のみを言え」

「か、かしこまりました」


 それから加賀田は仮面の男に鞠川マリヤが退団に至った経緯を説明していった。


「……なるほど。上級覚醒者が確保できなかったのは惜しいが、協会にこの事業がバレた時の方が損失は大きいな……」

「……」


 仮面の男は虚空を見つめたまま暫く思考に耽ると、その顔を加賀田へと向け直した。
 仮面越しに向けられる視線に背筋を伸ばす加賀田へと、仮面の男は再び口を開く。


「鞠川マリヤに助力したのは、外神とがみクロヤと白宮リリアだったな?」

「はい。少し前に2人だけで不人気ダンジョンを攻略した者達です」

「ああ。つまり、鞠川マリヤだけでなくその2人も有望株というわけだな」


 仮面の男の言葉に嫌な予感を覚えた加賀田は、予想が外れていることを祈りつつ確認を取った。


「あ、んン。ジョ、ジョンドゥ様は、あの2人の確保をお考えなのでしょうか?」


 動揺のあまり目の前の男の本名を口に出しそうになった加賀田は、慌てて男が正体を隠している時の偽名にて問い掛けた。


「ハハハッ。まさかそんなリスクのあることをするわけがないだろう。だが、後々のことを考えて顔繋ぎぐらいはしておこうとは思っている。面と向かってではないが、スカウトも断られたからな」

「は、はぁ」

「でもまぁ、彼らにもケジメは必要だよな」

「……と、申しますと?」

「彼らが挑んでいるダンジョンで異常暴走スタンピードを起こそうと考えている」

「なっ!?」


 〈異常暴走スタンピード〉とは、ダンジョンにて稀に発生する大量のモンスターによる異常な大移動のことを言う。
 基本的には、ダンジョン内のモンスターが飽和状態に陥ることにより起こる現象だが、加賀田からジョンドゥと呼ばれた仮面の男には、意図的に異常暴走スタンピードを発生する手段があった。


異常暴走スタンピードで潰れるなら良し。仮に潰れずとも、それならそれで構わない。生き残ってもやりようはあるからな。実行の際にはお前のところから人手を借りるぞ。いいな?」

「か、かしこまりました」


 万が一にも異常暴走スタンピードが人為的に起こされたモノだとバレたとしても、罰せられるのはサイサリスギルドになるだろう。
 それが理解できていても、加賀田に断わるという選択肢はない。
 ジョンドゥからの実質的な命令に加賀田は頷くことしか出来なかった。




 
 
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