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第二章
第八十六話 天使像
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「──何とか此処まで来たな……」
怪我一つとして負っていないものの、蓄積されていく疲労だけはどうしようもなかった。
パーティーメンバーであるリリアとマリヤにも少なくない疲労感が見受けられる。
ゲートがある浮島付近の浮島に出現する獣系有翼モンスターに続き、〈射光の下位天使〉などの天使系モンスターも討伐していき、漸く目的地近くまで到達した。
回帰前の情報では、この辺りで活動するにあたって推奨されているパーティー編成は4人以上の上級覚醒者だった。
そのことからも、上級覚醒者3人でのダンジョンアタックの負担がどれほどのものかが分かるというもの。
回帰前の同レベル時代よりも強いため大丈夫だと判断したのだが、流石に上級覚醒者1人分の戦力を埋められるほどではなかったか。
「クロヤさんが言っていた目的地は近いんですか?」
「もうすぐそこのはずだ。実際に見たことがあるわけじゃないから断言はできないけど」
「リーダーのスキル、じゃなくて異能による情報でしたっけ?」
「ああ。俺の異能の力で判明した情報だよ」
「凄いですねー。やっぱり異能があるのは羨ましいです」
「……異能があっても、その力の真価が分からないと意味がないけどな」
「そうだよ。本当に大変なんだから……」
「ふぅん? そんなものなんだね」
異能持ちである俺とリリアの実感のこもった呟きに何かを感じ取ったのか、マリヤはそれ以上何も言ってこなかった。
現在俺達がいるのは、目的地の手前にあるモンスターの気配が一つもない小さな浮島だ。
ここに来るまでの疲れを癒すべく、暫くの間ここで休息をとることにした。
その後、簡単に装備の点検をしたりしながら雑談をしているうちに小休憩の時間が過ぎていった。
「さて、そろそろ行くか」
俺の言葉に従ってリリアとマリヤも立ち上がる。
今いる浮島から伸びる橋を進み、2つの浮島を通り過ぎた先にある橋の途中で立ち止まった。
辺りを見渡して他の探索者やモンスターの姿がないことを確認する。
「……誰もいないな。2人共、あれが目的地だ」
「かなり小さな浮島ですね」
「草木しか見えませんよ?」
「その草木の中に埋もれている……はずだ」
訝しげにしている2人を引き連れて、極小の浮島へと飛んでいく。
各々の飛行手段で移動すると、そこには橋の上から見えた通りの光景が広がっていた。
鬱蒼とした草木を【植物支配】で退かしながら進んでいく。
すると、ちょうど橋側とは真反対の場所に突っ伏しているような体勢の白い彫像があった。
「実物は見たことないが、たぶんコレだ。この像の背中に天使系モンスターの素材である結晶翼を取り付ければ、特別な報酬が貰える……らしい」
「なるほど。この像は翼をもがれた天使像なんですね」
「そんな感じなんだろうな。はい、2人の分の結晶翼だ。あ、取り付ける際は自分の魔力を結晶翼に込めてから取り付けてくれよ」
〈宝納の指環〉の収納空間に入れておいた一対ワンセットの結晶翼を2人に手渡していく。
俺も自分の分の結晶翼を手に持ち魔力を込めると、倒れている無翼の天使像の背中に結晶翼の付け根をくっ付ける。
すると、結晶翼は初めからそうであったかのように簡単に接着された。
同じようにリリアとマリヤも結晶翼を取り付けていく。
程なくして、無翼の天使像が三対六翼の天使像となった。
結晶翼の取り付けが終わり、少し離れてから様子を見ていると、天使像が仄かな光を発しながら動き出し、倒れている状態から立ち上がった。
動き出した天使像に対して背後にいる2人が警戒感を露わにするのを感じつつ、こちらに向き直ろうとしている天使像を注視する。
「……起き上がると結構デカいな」
『汝らが我に翼を与えし者達か?』
「しゃ、喋った!?」
マリヤの驚愕する声を聞きつつ、天使像に返事を返す。
「そうだ。俺達3人が翼を与えた。翼に宿る魔力から分かるだろ?」
『うむ……念のため確認させてもらおう』
天使像の閉じられていた双眸が開かれると、その両眼から放たれた光が俺達を照らす。
どうやら結晶翼に宿る魔力と俺達の魔力を照合しているようだ。
やがて魔力の照合を終えた天使像が、口を動かさずに再び言葉を紡ぐ。
『確かに汝らで間違いないようだ。翼を失いし我に新たな翼を授けてくれた汝らに礼をしよう。受け取ってくれ』
そう告げると、天使像に取り付けた三対六翼の結晶翼が巨大化し、それらの翼から神秘的な光が俺達に向かって放たれた。
──神授の天使像〈◼️◼️◼️◼️〉が該当覚醒者へと報酬を授けます。
──スキル【勇猛戦煌の英雄】がスキル【万能通ず陽光王】へと能力改変しました。
おっ。俺はスキル改変系の報酬か。
回帰前に又聞きした情報でしかないが、この天使像が与えてくれる報酬には幾つかの種類があるらしい。
1つ目は俺が受け取った既得スキルを別のスキルに改変するスキル改変系。
2つ目は現在のクラスを上位互換クラスへ改変するクラス改変系。
そして3つ目は強力なマジックアイテムが貰えるそうだ。
他にもあるのかもしれないが、この情報元の者達はこの3パターンのみだったらしい。
『では、さらばだ』
天使像は簡潔にそれだけを告げると、巨大化した結晶翼を羽ばたかせて何処かへと飛び去っていった。
やはり、この天使像からの特別な報酬は1度限りか。
まぁ、だからこそ回帰前の未来では比較的簡単に情報が流れたんだろうけど。
さて、リリアとマリヤがどんな報酬を獲得したかを確認するか。
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