万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第九十七話 ブリオネイク

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 ◆◇◆◇◆◇


 摩天楼ダンジョン〈堕天の回廊〉の徘徊主ワンダリングボス浮動晶騎の大天使フロータルナイト・アークエンジェル〉。
 このボスモンスターとの戦闘は全部で4段階に分けられる。
 第1段階。一対の白翼から無数の光線を放つ遠距離形態。
 第2段階。白翼を紫色の結晶翼へと変化させて弱点属性である闇属性に対する盾とし、同じ結晶製である剣を用いた戦闘を行う近接戦闘形態。
 第3段階。結晶翼を身体に纏い、全身鎧とすることで防御性能を向上させる防御形態。
 そして最終段階。黒き天使の環と黒塗りの刃の紫晶剣──堕天剣を携え、全能力が強化される堕天化形態。

 第1から第3段階までもそれぞれ厄介ではあったがが、最終段階である堕天化と比較すれば大したことはなかったのだと、クロヤは実感していた。


「っ! 刀が!?」


 高速で振るわれてくる堕天剣と幾度となく斬り結んでいた9つの刀剣のうち、狐幻魔刀サイラの能力で具現化した5つの幻刀が破壊される。
 本体であるサイラの刀身にも亀裂が入っており、次の一撃でサイラ自体も破壊される可能性が高い。
 そんなことが頭を過ぎるクロヤへと容赦なく堕天剣が振り下ろされる。
 咄嗟に籠手の能力【銀殻ノ盾】の積層魔力障壁を展開して直撃を避けたものの、衝撃を受け流すことができず浮島の外へと弾き飛ばされた。

 距離が空いたクロヤへと顔を向けたフロータルナイトの頭上で浮かぶ黒き堕天の環が光を放つ。
 フロータルナイトの眼前に黒い光の球体が出現し徐々に大きくなっていく。
 その予備動作に気付いたクロヤは、両手の魔銃を手放し、代わりに周りに浮かんでいる刀剣の中から白霊剣オルトレールを手に取った。
 直後、フロータルナイトの眼前の黒光球から漆黒の極大光線が放たれる。
 それに対し、クロヤはオルトレールの能力【英雄遺念】を使用し、オルトレールに宿る英雄の技を行使するのだった。


「【王牙斬り】」


 振り抜かれたオルトレールの剣身から伸びた白き破壊の斬撃が、黒き滅びの光を斬り裂いていく。
 複合系アーティファクト〈支配の王環〉には複数の系統の異なる能力がある。
 その一つ、魔法魔力オーラを問わず属性力を強化する能力によって、【王牙斬り】で放たれたオーラの斬撃は強化されていた。
 だが、そのように強化されてもなおフロータルナイトの黒き光撃を完全に相殺することはできず、斬り裂けていたのも一時的なものだ。
 程なくして、黒き光撃は白き斬撃を押し除け、そのまま突き抜けていった。


「【光王ノ武戯ブリューナク】──第三王型サード殺戮の光王槍アラドヴァル〉」


 黒き光撃は白き斬撃がせめぎ合っている隙にフロータルナイトの近くまで距離を詰めていたクロヤが【光王ノ武戯ブリューナク】 を発動する。
 周囲を自律的に飛行していた2つのフラガラッハと大剣形態で追随していた光王珠オーブの1つが瞬時に混ざり合う。
 光王珠オーブ3つにより顕現する第三王型サード殺戮の光王槍アラドヴァル〉は、燃えるような色合いの穂先に触れた凡ゆる物を溶かし、発火させる紅金の槍。
 【光狼人化ルー・ガルー】で光の狼人と化しているクロヤは、その人外の膂力を以て槍の長柄を扱きながら紅金の槍を突き出す。

 必殺である黒き光線を放った後の硬直の隙をついた槍撃は、フロータルナイトに防御する暇を与えることなく直撃した。
 全身に纏う紫結晶製の全身鎧は、堕天化によりその防御性能は第3段階よりも大幅に向上している。
 その鎧が、燃えるような色合いの穂先に触れた瞬間に溶解し、鎧の下にある身体へのアラドヴァルの到達を許す。
 アラドヴァルの穂先により伝わった熱でフロータルナイトの身体が瞬く間に燃え上がり、残り1割を切っていた体力の減少を加速させる。


「これで、グッ! コイツは……ガッ!?」


 このまま勝てると勝利を確信したクロヤの身体を上から押さえ付けるような黒い力場が襲う。
 フロータルナイトの頭部にある3つの青い宝玉。
 接敵時は輝いていた3つの宝玉は、黒い極大光線で1つ、そして突然クロヤを襲った黒い力場が発動したことでまた1つと輝きを失っていった。
 一定範囲内の指定した対象のステータスを弱体化させ、限定的な高重力場によって一時的に動きを阻害する【堕天の枷】に捕らえられたクロヤへと堕天の剣が振り下ろされた。
 〈支配の王環〉の念動力を駆使して追随する武器で無理矢理防御体勢をとったクロヤだったが、堕天の剣の一撃を完全に防ぐことはできず、余波で左腕がボロボロになった。

 斬撃を逸らすために使用した全ての武器も破壊され、二振りの刀剣も2挺の魔銃も失ったクロヤが、それらの残骸共々斬撃の勢いで吹き飛ばされ、浮島の地面を転がっていく。
 〈戦天使の護環〉の身代わり効果が発動し、右手の指に嵌っていた指環が砕け散る。
 続けて、胴鎧〈祝福の銀騎甲冑〉の【祝福されし騎士の胆力】の『致死ダメージを受けた際に、体力を30%回復する』効果が発動し、どうにか動ける程度の体力が回復する。


「くそッ、未知の攻撃は厄介だな」


 情報に無い攻撃に対して悪態を吐きつつも、〈天使の雫〉を使うために無事な右手で懐を探る。
 しかし、吹き飛ばされた際にどこかへ落としたらしく、懐には1つも残ってなかった。
 自らの運の悪さを嘆いていたクロヤを更なる不幸が襲う。
 少し離れた場所で全身が炎に包まれているフロータルナイトが、先ほどと同じ黒い光球を目の前に形成させていた。
 ボロボロの状態のクロヤに躱わす余裕はなく、周囲にも盾代わりにできるような障害物もなかった。


「……ダメ元でアラドヴァルで相殺してみるか?」


 近接戦戦闘用のアラドヴァルで何処まで極大光線を相殺できるか不明だが、体力も魔力も物資も心許ないクロヤに出来ることは限られていた。

 そうしてクロヤが覚悟を決め、チャージの終わった黒き極大光線のチャージが遂に放たれる──その瞬間、時が止まった。
 

「これは……退避しなかったのか」


 フロータルナイトもその必殺の攻撃の時間すらも止まった世界の中、時間停止の魔法の発動地点へと振り返ったクロヤは、そこに2人の人影を見た。
 時間停止の術者であるリリアと、そのリリアを背負ってこちらに走ってくるマリヤの姿だ。
 術者のリリアとは違い、マリヤには時間耐性がないため本来なら時間停止の世界を動くことはできない。
 だが、時間停止の魔法の発動時点で魔法の術者に触れていれば、時間停止中も術者に触れている間は動くことが可能だった。


「リーダー! 鎖を!」


 マリヤが言っている意味を理解したクロヤが自らの左手首へと視線を落とす。
 堕天の剣の一撃でズタボロになった左腕には、変わらず〈冥獄王の四死王具:葬死ノ円環〉の腕環が装着されている。
 だが、その表面は傷だらけであり、ちゃんと能力が発動するかは不明だった。
 祈るようにして【獄鎖顕現】の発動を念じたクロヤの願いは聞き届けられ、漆黒の腕環から同色の鎖である〈獄鎖〉が具現化する。
 伸縮自在の鎖は素早く伸びていき、その鎖を駆け寄ってきているマリヤが掲げた腕へと絡み付いた。

 マリヤが鎖を引っ張る一方で、クロヤ側からも鎖を収縮させたタイミングで時間停止の魔法が解除される。
 時間停止の魔法を必死に維持していたリリアの手を離れ、世界が再び動き出す。
 2人の元へと引っ張られていくクロヤの近くを黒き極大光線が通過する。
 攻撃を回避されたフロータルナイトが頭部を動かして、極大光線を徐々にクロヤ達へと向けていいく。
 そのことに気付いたクロヤは、自分の身体を受け止めたマリヤに礼を言う前に尋ねた。


「〈天使の雫〉は余ってないか?」

「1つだけありますよ」


 マリヤが取り出した〈天使の雫〉を受け取って素早く使用したクロヤは、足りない分の魔力を補うために異能【万物変換コンバート】の第1層能力【魔生変換】で体力の一部を魔力へと変換する。
 そうして最大魔力量の9割近くまで魔力を回復させたクロヤは、アラドヴァルへと残る1つの光王珠オーブを融合させた。


「【光王ノ武戯ブリューナク】──第四王型ファイナル集束せし光王覇槍ブリオネイク〉」


 全ての光王珠オーブが結集することにより顕現したのは、全ての形態の性質を備えた白銀色に輝く光槍。
 それぞれの形態時よりも強化された力を内包する光槍を逆手に持ち振り被ったクロヤは、残りの力の全てを込めて投擲する。
 一帯を眩く照らしながら放たれた閃光の槍は、フロータルナイトの頭部へと突き刺さり、その巨体の内側から白銀色の光を解放させた。
 フロータルナイトがいた場所から白銀色の光の柱が立ち昇ると、近くまで迫っていた漆黒の極大光線も消滅した。
 ボスの討伐を確認したクロヤの緊張の糸が切れる。
 仲間達の声に応える間もなく、体力も精神も限界を迎えていたクロヤは意識を失った。


── スキル【魔喰ノ精霊王バアル】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──筋力値が25ポイント増大します。
──耐久値が40ポイント増大します。
──敏捷値が15ポイント増大します。
──反応値が30ポイント増大します。
──精神値が25ポイント増大します。
──知能値が25ポイント増大します。
──体力値が40ポイント増大します。
──魔力値が30ポイント増大します。
──スキル【堕天の枷】を獲得しました。
──スキル【大天使の光核】を獲得しました。
──スキル【大天使の癒光】を獲得しました。


──クエスト『事態を収拾せよ』が達成されました。
──難敵に勝利しました。
──生存者が一定数に達しています。
──貢献度:S
──報酬が確定します。
──達成報酬としてスキル【堕天化】、アイテム〈堕天ノ剣〉、各種能力値ポイント+10を獲得しました。
──勝利の困難な敵に単独で挑みました。
──不屈の精神を示しました。
──他に類を見ない勇猛さを示しました。
──特別報酬:スキル【堕天の蔵】、アイテム〈堕天ノ剣〉→〈堕天剣バラキエル〉


──レベルが30に達しました。
──等級が〈上級〉から〈王級〉へとランクアップします。
──〈王級〉へのランクアップに伴い、クラス〈捕喰者〉がクラス〈終末の再世者カタストロフィ・リターナー〉へと変化しました。
──新たなクラス獲得により、スキル【自己再生】【状態回帰】【混沌再世】を取得しました。


 
 
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