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第二章
第九十六話 光闇の獣
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銃撃と剣撃を駆使してフロータルナイトの体力を削っていく。
その最中にフロータルナイトの全身から衝撃波が放たれてくるが、この衝撃波のみであれば大した脅威ではない。
だが、衝撃波に乗って飛来する、結晶翼から溢れ落ちた結晶の欠片は警戒する必要があった。
衝撃波と共に放たれてくる結晶の欠片がどれほどの威力を持つかは、浮島に生えている木や岩が破壊される様から想像がつく。
『風精霊の祝福』『奇跡的な護り』『時流乱鎧』という3つの支援魔法によって威力を減衰してなお、最初の一撃を受けた際に全身に少なくない傷を負ったことからも攻撃力の高さは明らかだ。
クラススキルによって魔法効果が強化された、これら3つのリリアからの支援魔法がなければ、クロヤが致命傷を負っていた可能性は高かった。
「支援魔法もだが、この防具にも感謝だな」
フロータルナイトとの剣戟の最中に不意打ちで飛来する結晶の欠片は、〈祝福の銀騎手甲〉に付随する能力【銀殻ノ盾】が生成する積層型魔力障壁で受け止められた。
結晶の欠片は積層型魔力障壁を貫通してくるが、クロヤの元に到達する頃には威力の大半は削がれている。
そうして威力が削がれた攻撃は支援魔法による護りによって更に減衰する。
そこまで攻撃力が落ちれば、クロヤにまでダメージが通ることはなかった。
振り下ろされてきた右手の結晶剣を5つの刀剣で受け流し、横薙ぎに振るわれた左手の結晶剣を飛び越えて回避する。
フロータルナイトの顔面に向けて2挺の魔銃を連射し、胴体に向けて4つの刀剣を射出して突き立てると、そのまま外側に向けて開くようにして斬り裂いた。
切断面が露出すると、周りで飛び回っていた2つのフラガラッハが飛来し、再生されて塞がる前に〈不治〉の刃で滅多斬りにしていく。
〈不治〉の力が及んだ場所のみは再生されず、その傷口からフロータルナイトの魔力と生命力が漏れ出ていた。
〈出血〉の状態異常に似た状態に陥ったフロータルナイトの体力低下は続き、やがて次のフェーズへと移行した。
「第3フェーズ……結晶兵、だったかな?」
一対の結晶翼から抜け落ちた結晶状の羽根は、その形を変化させ、人型に似てはいるが全体的に歪な形状の結晶状の天使と化した。
第3フェーズの情報を知っていたクロヤによって、予め結晶翼は破壊属性の各種攻撃で多大なダメージが与えられていた。
そのため、結晶兵を生成する羽根の数は少なく、その数は50にも満たなかった。
また、羽根が全て抜け落ちた後の結晶翼は、フロータルナイトの人型の上半身へと纏わり付き、まるで木々が根を張るようにして胴体と一体化していった。
結晶翼が胴体を守る鎧へと変化していくのを見過ごすわけにはいかず、変容中に追撃を仕掛けようとする。
だが、そのクロヤの動きを邪魔するように結晶兵達が次々と飛び掛かってきた。
「邪魔だッ!」
追随する刀剣を振り回して結晶兵を割り砕く。
結晶兵1体1体の強さは近接タイプの中位天使に匹敵し、片手間に相手をするような攻撃では全壊にまでは至らず、変容中のフロータルナイトを守る壁は増すばかりだ。
そのことに気付いたクロヤは、一旦フロータルナイトへの攻撃を中断し、結晶兵の排除に専念する。
ユニークスキル【万能通ず陽光王】の【光狼人化】にて変身した光の狼人の身体の一部を、同じくユニークスキル【狩猟ノ闇獣王】の【百獣王戯】にて変化させる。
巨大な光狼の手や、光狼の牙、光狼の尾などを駆使した単純な暴力を用いて強引かつ速攻で結晶兵を片付けていった。
全ての結晶兵を片付けた時には、2つのユニークスキルの併用により急激に魔力を消費して魔力枯渇状態に陥っていたが、異能【万物変換】の第1層能力【魔生変換】を使用して体力の一部を魔力に変換することで持ち直した。
〈天使の雫〉を使用する暇も惜しんで異能で魔力を誤魔化したクロヤは、2つのユニークスキルで二重に強化された肉体による攻撃を繰り出す。
【百獣王戯】で巨大化した光狼の爪撃を更に【剛撃】と【強拳】で強化し、形成終了直前だった結晶鎧ごとフロータルナイトを斬り裂く。
すかさず振り下ろされた逆の手による爪撃は、10メートルほどのフロータルナイトの巨体を近くの浮島へと叩き落とした。
「ハァ、ハァ。大飯食らいで馬鹿力な分、威力も凄まじいな」
再び魔力枯渇に陥った身体を回復させるために、今度こそ〈天使の雫〉を使用する。
ここまで使用した〈天使の雫〉の数と1個あたりの金銭的価値を考えると、この一戦のみに費やされた金額は途轍も無い額だった。
単独で相対することにより跳ね上がる危険性も加味すれば、現在のクロヤは財布だけでなく命まで危機的な状況だと言えるだろう。
「……2度と御免だな。『隕石撃』」
土煙で見えなくなったフロータルナイトに向けて、クロヤは複合属性上級魔法を発動させた。
【火炎魔法】と【土岩魔法】の魔法スキルを所持していることで使用可能になる魔法が発動され、上空に展開された魔法陣から赤熱化した大岩──隕石が出現する。
フロータルナイトが叩き落とされた浮島へと隕石が衝突し、先ほど以上の粉塵が巻き起こる。
隕石が落ちてきても崩壊しない浮島に内心で驚愕しながらも、クロヤは次の戦いに備えて〈天使の雫〉で魔力を回復させた。
そうして状況を注視していると、浮島の上に鎮座していた隕石が真っ二つに両断された。
割れた隕石の下から姿を現したフロータルナイトの姿は一変していた。
紫色の結晶で構成された騎士鎧を纏った人型の上半身。
円錐形の結晶体だった下半身は、騎士槍の如き細長い円錐形の両脚となり。
両手にあった紫色の結晶剣は消滅し、右の手ににみ新たに剣身の殆どが黒く染まった紫色の長剣が握られている。
そして、フロータルナイトの頭上には、これまで存在しなかった黒い天使の環が存在していた。
「……最終フェーズか」
此方を見上げてくる最終形態のフロータルナイトの気配に喉を鳴らした。
そのように緊張しつつもすぐに動けるようにしていたクロヤは、フロータルナイトの頭部に収束する魔力に即座に気付いた。
次の瞬間に予備動作無しに放たれてきた巨大光線をギリギリで躱わすと、距離を詰めるために浮島目掛けて急降下していった。
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