万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百九話 神聖魔法

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 ◆◇◆◇◆◇


「──ところで、エリス」

「もう、クロヤ。エリスではなくエリーと呼んで、って言ったじゃない」

「あ、ああ。そうだったな……」


 隣を歩くエリスからの指摘に思わず顔を引き攣らせる。
 色々な誤解を招いた俺の失言事件以降、心なしかエリスの俺に対する距離感が妙に近くなった。
 丁寧だった口調が素の口調らしきラフなものへと変化していることからも、近くなったのは物理的な距離だけではないらしい。
 その姿は、回帰前においてダンジョンを崇める聖塔教の教祖だった時のエリスを何故か彷彿とさせる。
 ああ、やっぱり本人なんだなと納得しつつ、当時の記憶の所為で冷や汗を流していた。


「……チョロすぎる」

キャッスルなのに防御力は弱々だねー」

「……クロヤさんがデレデレしてる」

「どちらかと言うと強張ってない?」

「あれは執着の強いタイプに違いないわ」

「同類だものね」

「……何か言った?」

「ううん、何も言ってないよ」


 後ろを歩くリリアとマリヤの会話を聞き流してから話を戻す。


「ゴホン。確認なんだが、エリーは目的地までどのくらい掛かるかまでは分からないんだったな?」

「ええ。このダンジョン内であることと、大体の場所が分かるぐらいよ」

「時間制限は?」

「出来るだけ早く、ってことぐらいしか分からないわね」


 エリス曰く、これらの情報は彼女が持つスキル【聖なる導き】の効果とのことだが、随分と不親切な導きだな。
 確か、『光と聖属性の魔法や能力の強化と、スキル所持者が求めるモノに対する指標を簡単に示す』という効果だったか。
 この情報の足りなさは、スキル効果に『簡単に示す』とあるのが原因だろう。
 これならまだ、俺が〈システム〉により強制的に受けることとなったクエスト『聖女候補を導け』のクエスト情報の方が情報が多いな。
 〈広域マップ〉の範囲内限定だが目的地がある方向は分かるし、クエスト情報が表示されたウィンドウで残り時間も確認することができる。

 俺の失言事件の誤解を解いた後、手伝う報酬としてエリスが俺のパーティーへ加入することが決まった。
 とはいえ、〈システム〉の情報までは明かすつもりはない。
 リリアとマリヤにも明かしていないのだから当然だろう。
 なので、極力はエリス自身の【聖なる導き】が齎す情報で進むことにしている。

 おや? そういえば、このスキルの効果には、『スキル所持者が求めるモノ』とやらがあるはずだよな。
 回帰前のエリスを知る俺にとって、今の彼女は不安の塊なので念のため確認しておくか。


「時間制限があるとはいえ、大怪我をした後で万全な状態じゃないのに、その目的地とやらに無理して向かうのは何故なんだ?」

「お金のためよ」

「ん?」

「お金のためよ」

「……その目的地に行けば、今よりも金を稼げるようになる気がするからか?」

「そういうこと」


 そういや、エリスは銭ゲバだったな。
 【聖なる導き】にある『スキル所持者が求めるモノ』って、そういう意味かよ。


「エリーは何か買いたい物でもあるのか?」

「特に何か買いたい物があるわけじゃないけど、やっぱり将来を見据えて今のうちから貯蓄はしておきたいじゃない?」

「まぁ、それは確かにな」


 探索者は稼げる職業ではあるけど、金のかかる職業でもある。
 強さが一定のラインを越えるまでは支出ばかりが掛かるため、ある意味では不安定な職だとも言えるな。
 その点においては、貴重な回復役ヒーラーであるエリスは恵まれている。
 それは配信者業と絡めた助っ人回復役ヒーラーをしていても需要があったことからも明らかだ。
 回帰前に聖塔教という新興宗教の教祖だったことも考えれば、カリスマ性もあるのは間違いない。
 現在も未来も人気職業である探索者業は、外見的にも能力的にもエリスにとって天職なのかもしれないな。


「あ、モンスターだ」


 雑談をしながら森の中を歩いていると遺跡っぽい建造物が姿を現した。
 その遺跡の前にあった2体の彫像──ストーンゴーレムが俺の発言を肯定するように動き出す。


「遺跡を守るゴーレムなんて、本当にゲームっぽいですね」

「ゴーレムって守護者感があるよな」


 クエストの目的地はストーンゴーレムが守る遺跡を示している。
 ストーンゴーレムの背後には入り口があるから、モンスターを倒してから先に進めってことか。


「ここは私ですよね?」

「そうだな。エリーに会うまではリリアが魔法で対処していたし、マリヤに任せる」

「ちょうど良いから私の力も見せるわ。『聖なる守りホーリー・プロテクション』『神聖強化体セイクリッド・ボディ』」


 エリスが発動したのは、〈聖法術師〉などの神官系とも呼ばれる神聖系魔法使いクラスのみが行使できる〈神聖魔法〉だ。
 神聖魔法という属性魔法スキルがあるわけではなく、【火炎魔法】や【聖光魔法】といった既存の属性魔法スキルが、神官系クラスが行使することで変質した魔法の総称を神聖魔法と呼んでいる。
 〈聖法術師〉のクラスを持つエリスは【聖光魔法】を所持しており、敢えて表記するなら〈神聖魔法・光〉といったところだろうか。

 純魔法使い系クラスであるリリアが行使する支援魔法よりも、神官系クラスであるエリスの支援魔法の方が効力も高く、魔力燃費効率も良い。
 神聖魔法時にしか使えない支援魔法もあるため、以降の支援魔法はエリスに任せて、リリアには攻撃に専念してもらうのがベストだろう。
 エリスは支援と回復だけでなく攻撃も防御もできるため、支援魔法を使った後も役立ってくれそうだ。


「凄いですよ、リーダー! ストーンゴーレムが簡単に斬れました!」

「岩なのにバターみたいに切れていたな」


 ストーンゴーレム相手には過剰な効果の支援魔法だ。
 神聖魔法限定の支援魔法による効果をいち早く体験して興奮しているマリヤに相槌を打つと、ストーンゴーレムのドロップアイテムを回収してから遺跡の中へと入っていった。



 
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