万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百八話 二つの道

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 ◆◇◆◇◆◇


「──傷を治していただきありがとうございます。私の名前は神城エリスです。皆さんのお名前もお聞きしてよろしいですか?」


 エリスの障壁を解除して間もなく彼女は目を覚ました。
 目の前に知らない男女3人がいて警戒されると思ったのだが、エリスは少し驚きはしていたが、大して警戒はされなかった。
 魔力に余裕のない今の彼女では完治させることのできない怪我を治してから、軽く自己紹介を行なった。


「俺は外神とがみクロヤだ」

「私は白宮リリアです」

「鞠川マリヤです。もしかしてですけど、神城さんって、配信者の〈キャッスル〉さんですか?」

「はい、そうですよ。一応、キャッスルという名で活動させていただいております」

「やっぱり!」


 何やら未知の内容の会話がエリスとマリヤの間で交わされている。
 横を見るとリリアも俺と同じ心情なのか、小さく首を傾げていた。


「キャッスル?」

「リーダーは知りませんか? ダンジョン系配信者のキャッスルさんです。ソロで活動している探索者で、主に他のギルドやパーティーに回復役ヒーラーの助っ人として加わり、そのダンジョン内での様子をアーカイブ配信しているんですよ」

「へぇ、そんな活動を……」


 未来の教祖様に配信者だった過去があったとは知らなかったな。
 まぁ、視聴者と信者に近しいモノを感じないわけでもないし、見た目も良いから意外と合ってるのかもしれない。


回復役ヒーラーの助っ人のみの時もありますが、配信を通してギルドやパーティーの宣伝も行えますので、基本的には配信込みで依頼を受けています。アーカイブ配信だから編集もできますので、殆どの方は承諾してくれますね。回復役ヒーラーの助っ人代に、配信の収益で稼がせていただいています」

「……お金が好きなんですね」

「いえいえ、そんなことはないですよ?」


 こんな良い笑顔をしている銭ゲバ美女が、何をどうやったら〈災厄の聖女〉なんていう狂信者になってしまうんだろうか?
 エリスの意外すぎる性格に内心で困惑していると、突然目の前に〈システム〉のウィンドウが出現した。
 嫌な予感を覚えつつ、ウィンドウに表示されている内容に目を通していった。
 

○クエスト『聖女候補を導け』
 聖女候補セイント・キャンディデート:神城エリスを制限時間内にダンジョン内の所定の場所へと連れていってください。
 クエストの結果に応じて報酬が変化します。
⚫︎成功
→神城エリスが〈救災の聖女〉のルートへと進みます。
・スキル【???】
・各種能力値ポイント+15
・???
⚫︎失敗
→神城エリスが〈災厄の聖女〉のルートへと進みます。
・スキル【???】
・各種能力値ポイント+5
・???


 〈救災の聖女〉に〈災厄の聖女〉、ね。
 王級覚醒者になってから初めてのクエストだが、遂には他人の運命にまで直接干渉するようになったか。
 もしくは、今回接触したエリスが特殊な事例なだけなのか……。


「そういえば、封鎖地区には何をしに来たんですか? ダンジョン前にあった死体は、神城さんと一緒に来られた人達だと思うのですが……」

「仰る通り、外の方々は今回の依頼相手です。何でも、封鎖地区内の調査を通して、現在の封鎖地区の状況を発信したかったそうです」

「このあたりに住んでた人ですかね?」

「そうみたいです。故郷を取り戻す的なことを言ってましたので。まぁ、封鎖地区解放の気持ちが逸ったのか、余力を考えずに行動し続けた結果死んでしまいましたけどね」


 一時的なパーティーだったとはいえ、その仲間が死んだのに結構ドライな反応だな。


「辛辣ですね」

「人の忠告も聞かずに動かれ、それに巻き込まれて死にかけたのですから言いたくもなります」

「なるほど、道理ですね」

「ありがとうございます。あと、どうぞ私のことはエリスと呼んでください。お二人もエリスと呼び捨てでお願いします」

「じゃあ、俺もクロヤで」

「私もリリアでお願い致します」

「私もマリヤでいいですよ」

「分かりました。クロヤ、リリア、マリヤ。実は3人にお願いがあります」

「お願い?」


 タイミング的にクエストの内容かもしれないという予想は、次のエリスの言葉によって肯定された。


「このダンジョンには大怪我を負って逃げ込んだのがきっかけなのですが、私のスキルによればダンジョン内の何処かには今の私を変える何かがあるようなのです。ですが、私1人でダンジョンを進むのは難しいので、その場所に向かうために協力をしてくれませんか? 勿論、依頼料は支払います」

「……」


 胸の前で手を組んだエリスが、目を潤ませながら俺を見つめてくる。
 なまじ未来の冷徹無情な姿を知っているから、目の前のあざとい姿とのギャップに脳が理解を拒もうとしてくる。
 銭ゲバ、ドライに新たに媚び属性が加わったエリスに思わず呆れた視線を向けてしまう。
 黙ったまま見つめ返す俺の内心が伝わったらしく、潤ませていた視線に徐々に困惑の色が混ざり始めていた。

 まぁ、未来の危険人物候補の手綱を握るのも一興か。
 回帰前の情報から有能なのは確定しているし、今のうちに確保しておいた方が良さそうだ。
 今回のクエスト対象だし、しっかりと縛り付けておくとしよう。


「ここは未知のダンジョンだ。その危険度は計り知れない。だから、依頼を受けるかは報酬次第だな」

「……おいくらほどでしょうか?」

「金はいらない」

「では、マジックアイテムでしょうか? 確かに、それなりの物は持っていますが……」

「いや、俺が欲しいのはエリス、お前だ」

「……えっ?」


 あ、どうやら端的に言い過ぎたみたいだ。
 顔を赤らめたまま硬直してしまったエリスと、左右から発せられた溜め息と怒気によって、自分が誤解を招く発言をしたことを自覚した。




 
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