万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百十話 隠し通路

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 ◆◇◆◇◆◇


「──本当にココか?」

「ええ。私のスキルはココだと告げているわ」


 遺跡の中に広がる回廊を道なりに進んでいる途中、エリスが何の変哲もない壁の前で立ち止まった。
 どうやら目的地へ向かうには、この壁の向こうへ進む必要があるらしい。


「俺の能力では普通の石製の壁としか分からないな。ギミックでもあるのか?」


 異能【万物変換コンバート】の第0層能力【経験変換ノ理コンバート・システム】、通称〈システム〉により構築されたクエスト『聖女候補を導け』の情報では、目的地に向かうための矢印は回廊の先を示している。
 〈システム〉に付随した機能である〈広域マップ〉を見てみたが、壁の先には何も確認出来なかった。
 これまでの〈システム〉によるクエストは、異能の主である俺に嘘をつかなかったので、このまま道なりに進んでも目的地とやらに辿り着けるのは間違いない。
 だが、今回のクエストの主役はエリスだ。
 ならば、エリスの言葉を信じる、というか、彼女のスキル【聖なる導き】に従った方がいいだろう。


「魔法的な力は感じませんが……」

「叩いた感じだと、ただの石の壁ですね」


 リリアとマリヤも各々の方法で壁を確かめるが、それでも特におかしなところは確認出来なかった。


「たぶん、私が触れたら……あ、開いた」

「……どうやらエリー自身がギミックの条件で間違いないみたいだな」


 前に進みでたエリスが壁に触れて魔力を流すと、石の壁がレンガ状に細かく駆動し、左右に分かれていった。
 本当に現れた隠し通路に俺達3人は思わず言葉を失った。
 クエスト情報も更新され、矢印はこの隠し通路の先も示すようになっている。
 少なくとも、このクエストの間は俺の異能よりもエリスのスキルの方が使えるようだ。


「……リーダー、何か危険な感じがします」

「確かに。陰鬱な空気が漂ってるな」


 隠し通路の先から何かを感じ取ったマリヤが、緊張感のある面持ちで盾を構えて前に出る。
 十数メートルより先は暗闇に包まれており、スキルの力でも闇を見通すことが出来ない。
 何も見えないが、あの暗闇の中から遠距離攻撃などで奇襲を受ける可能性を考慮すると、盾役タンクのマリヤに前に出ておいてもらった方が良さそうだ。


「クロヤさん、この隠し通路の空気ってあのダンジョンと同じですね」

「あのダンジョン……ああ、〈不浄墓地〉か。確かに、この空気はあのダンジョンの暗い空気に似ているな。つまり、アンデッド系のモンスターが出現する可能性が高いってことか。懐かしいな」

「懐かしいですけど、こういう懐かしさは御免被りたいです」


 リリアの言う通り、隠し通路からは俺とリリアで攻略したダンジョン〈不浄墓地〉のフィールドと似た雰囲気が漂っていた。
 一度意識したらアンデッド系モンスター特有の臭いが充満している気がしてきた。
 実際には、あの暗闇は視覚だけでなく嗅覚の情報まで遮断しているため、アンデッド特有の悪臭は嗅ぎ取っていないのだが。
 ただ、何となく危険な雰囲気だけは感じ取っていた。
 もしかして、エリスの言葉に従うかどうかでクエストの難易度が変わるのだろうか?
 時間制限があることと合わせて考えると、隠し通路を使う場合はルートが短くなる代わりに道中の敵が強くなるとか、そういうパターンなのかもしれない。


「今のところアンデッドの姿は見えないが、このダンジョンの特異性を考えると実際に出現しそうだな」

「このダンジョンの特異性?」

「ん? ああ、実はな──」


 エリスと会う直前にリリアとマリヤに話したのと同じ説明をエリスにも行う。


「RPGのような特異性のダンジョン……言われてみれば、そんな感じの場所ね」

「エリスの目的地とやらも、所謂ゲームの強化イベントみたいなものなのかもしれない」

「強化イベント?」

「ああ。その目的地に行けば、エリーの何かが変わるんだろ? ダンジョンの特異性からの推測だが、たぶん強化イベントだと思うんだよ」


 〈救災の聖女〉か〈災厄の聖女〉のルートだとクエスト情報にあるから、どちらにせよ強化であることには違いないだろう。


「出来るだけ早く着いた方がいい、っていう時間制限らしきものもあるなら、早く着いた方が良いんだろうし、そろそろ先に進もう」

「念のため私が先行しますね」

「うん。任せた」


 盾役タンクのマリヤを先頭にして、恐る恐る隠し通路の暗闇の中へと足を踏み入れる。
 暗闇を抜けた先には予想外の光景が広がっていた。


「……ここは、どう見ても遺跡の中じゃないな」


 遺跡の隠し通路を暗闇が遮断していたとはいえ、屋内であることには変わりなかったはずだ。
 だというのに、俺達が今いる場所は明らかに野外だった。
 時間帯は夜。しかも──。


「あれは、城、だよな……」


 遠目にも一目で分かるほどに巨大な城のシルエットが夜闇に浮かんでいた。
 

「まるで、昔のゲームに出てきそうな魔王の城みたいですね」

「魔王の城……」


 リリアが言ったそのフレーズが妙に記憶に引っ掛かった。
 回帰前の記憶にある特異性ダンジョン〈幻想遊戯〉の情報を振り返る。
 朧気ではあるが、確かこのダンジョンの最深部は王城フィールドだったはずだ。
 まさかと思うが、あの城の中に迷宮主ダンジョンボスがいるとか言わないよな?


「あれが魔王の城なら、玉座の間には魔王が待ち受けていそうだな。エリー、目的地はあの城で間違いないか?」

「ええ。間違いなく彼処よ」

「……ショートカットにしてもカットし過ぎだろ」


 ダンジョンのまだ浅い場所から一気に最深部まで飛ぶとは思わなかったな。
 背後を振り返るが、そこに来た道も暗闇も残っていなかった。



 
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