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第二章
第五十一話 工房への依頼
しおりを挟む俺のアーティファクトを狙った某国特殊部隊を撃退した翌日。
俺は破損した装備を修復してもらうために久坂マモルの工房に来ていた。
なお、リリアも今日は女性探索者用防具を販売しているブランドショップに行っているので、この場にはいない。
「うわぁ、こりゃまた派手に穴が空いてますねー。背中部分まで貫通してるのに、よく生きていましたね」
「久坂さんが作ってくれた装備のおかげですよ」
「僕の?」
「〈女王蟻の魔蟲甲冑〉に備わっている【女王の胆力】の能力のおかげでギリギリ耐えられました」
○女王蟻の魔蟲甲冑
等級:遺物級。
とある職人が製作した胴鎧型マジックアイテム。
全部で3つある〈女王蟻の魔蟲装具〉セットを装備している間は、各種能力値が+5される。
・【女王の胆力】……精神異常耐性(中)を獲得。致死ダメージを受けた際に、体力を10%回復する。
・【女王ノ殻】……着用者に合わせて形状が最適化される。一定ダメージ量以下の攻撃を無効化する。
「んー、確かに能力的に全く役に立たなかったとは思わないけど、それだけじゃ無理だと思うよ? 痛みを軽減したりするわけじゃないから、普通苦しむよ?」
「まぁ、大怪我には慣れてるんで」
前世の話ではあるが、腹に穴が空くレベルの大怪我なら両手の指の数では足りないぐらいには経験がある。
進んで味わいたくない経験だが、勝利するためなら仕方なく選択できる程度には慣れていた。
そんな俺の発言を聞いた久坂マモルが、俺がお土産に持ってきたコンビニのおにぎり──ちゃんと以前マモルが好きだと言っていたシーチキン味だ──を食べながら呆れた顔を向けてきた。
なんだろう、マモルからそんな視線で見られるのは納得いかないんだが?
「それで、今日はこの防具達の修繕が依頼かい?」
工房にある作業台の上には、〈女王蟻の魔蟲甲冑〉だけでなく、〈女王蟻の魔蟲手甲〉と〈女王蟻の魔蟲靴〉も置かれている。
〈女王蟻の魔蟲装具〉セットの全てが置かれているのは、腹部に大穴が空いている甲冑ほどではないが、他2つの防具も傷だらけだったからだ。
【獣身化】を使った後のウーの攻撃をまともに喰らったのはこの腹への一撃だけだが、それ以外の攻撃を躱す際も余裕があったわけではなく、全身の至るところが傷だらけになっていた。
まさに激戦を制した感のあるボロボロ具合だったため、甲冑と一緒に取り出したのだ。
「修繕と言えば修繕ですが、出来れば改良もお願いします」
「改良?」
「ええ。ミスリル鉱石とか、これらの防具を使ってね」
以前採掘したミスリル鉱石の残りの手持ちの一部と、昨日襲撃してきたウー達略奪者が装備していた防具を作業台の上に置いた。
「一応言っておきますけど正当防衛ですよ」
「ふーん? まぁ、僕は装備を弄れるならどっちでもいいけどね。ミスリルとこれらの防具をバラして得た素材を使って、新たな防具を作れというわけか」
「出来ますか? 改良後もセット装備だと嬉しいですね」
「んー、クロヤ君の防具を作った経験で僕のレベルも上がってるから、たぶん今の僕の魔力量なら出来るんじゃないかな?」
一般的に覚醒者となった際に自動的に取得することになる初期クラスと言えば、〈ノービス〉か〈ジーニアス〉のどちらかだ。
だが、一部の覚醒者はこの2つ以外のクラスの場合がある。
その内の1つが〈クラフター〉であり、このクラフターを取得している覚醒者は職人系覚醒者と呼ばれている。
職人系覚醒者は他の覚醒者と同様に、モンスターなどの生物を倒してレベルを上げることもできるが、その方法以外にも魔力を宿すアイテムを製作することでも経験値が得られ、レベルアップできる。
普通の覚醒者が弱い敵よりも強敵を倒した方が得られる経験値が多いように、職人系覚醒者もレアアイテムなどの貴重な代物を製作したり扱ったりした方が多くの経験値が得られる。
その点で言えば、〈女王蟻の魔蟲装具〉というセット装備の製作を成功させたことで得た経験値は凄かっただろうな。
「それは良かった。では、改良後もセット装備でお願いします」
「分かったよ。宿す能力はそれぞれ同系統でいいのかい?」
職人系覚醒者は製作物に限定すれば自力で鑑定することができる特殊技能がある。
この製作物も、他人が作った物よりも自分が作った物の方が詳細に鑑定することができるため、凄腕の職人は鑑定技能を駆使して望む方向性の能力を製作物に宿すことができるらしい。
「甲冑に関しては同じ方向性でお願いします。手甲と靴に関しては出来れば別の能力が良いですね。難しいなら同系統で構いません」
○女王蟻の魔蟲手甲
等級:遺物級。
とある職人が製作した籠手型マジックアイテム。
全部で3つある〈女王蟻の魔蟲装具〉セットを装備している間は、各種能力値が+5される。
・【女王の膂力】……筋力値と体力値が10ずつ増大される。
・【女王ノ爪】……魔力を消費し、鉤爪型の魔力体を具現化する。
○女王蟻の魔蟲靴
等級:遺物級。
とある職人が製作した靴型マジックアイテム。
全部で3つある〈女王蟻の魔蟲装具〉セットを装備している間は、各種能力値が+5される。
・【女王の行進】……地上適性(大)を獲得。着用中は、確率でカリスマ性(小)が発揮される。
・【女王ノ足】……歩行時、走行時に消耗するスタミナが30%カットされる。また、足部が主体のスキル効果が10%強化される。
同じ方向性の能力でも構わないが、甲冑の能力ほど分かりやすい有用性を感じないので、出来れば別の能力がいい。
今のままでも便利ではあるんだけどね。
「……そんなことを言われたら、やらないわけにはいかないね。楽しみにしていてくれ」
「ええ、楽しみにしていますよ」
不敵な笑みを浮かべるマモルだが、口の端に米粒が付いているのが残念だな。
指摘してやろうかと思ったが、別に誰に見られるわけでもないだろうから、そのままにしておこう。
そんなやる気に満ちている米粒付き職人に防具の修繕と改良を任せると、工房を後にした。
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