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第一章
第五十話 ルプスルキス
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「──お、ちゃんと生きてるな」
「あ、クロヤさん! 良かった、無事だったんで……って、そのお腹のところはどうしたんですか!?」
「ん? まぁ、腕をグサっとやられただけだよ」
ウーによって空けられた腹部の穴を塞ぎ最低限の治療のみを済ませると、元いた場所へと【座標変換】を使って転移した。
転移した先にはウーと共に現れた6人の略奪者達の死体が転がっており、その近くの地面にリリアが座り込んでいた。
俺の格好も酷いが、リリアの格好も別の意味で酷い。
軽傷ではあるのだが身体の所々を負傷しており、その負傷した部分以上の場所の衣服が破れていた。
なんというか全体的に悩ましい姿になっているので、ある意味では酷い格好だと言っても間違いではないだろう。
「……まだ戦っている敵がいるのか」
魔法的な繋がりと〈広域マップ〉の2つで確認したところ、まだ『影の従騎士』の魔法で生み出した影の騎士と戦闘中の略奪者がいることが分かった。
クエスト対象で残っている略奪者は、今戦っている相手だけのようだ。
取り敢えず、戦闘を終えている影の騎士には、倒した略奪者の死体や装備を回収してくるように指示を出した。
戦闘後、ずっと棒立ちだった影の騎士達が動き出したのを確認してからリリアと向き直る。
「そういえば、ドッペルゲンガー達は?」
「1体は私を守って消えました。残る1体もダメージが大きくて、クロヤさんが来るちょっと前に消滅しました」
「なるほど。コイツらも結構強かったみたいだな」
リリアの護衛にと『闇眷二重影』の魔法で生み出した2体のドッペルゲンガーがいないことから分かっていたことだが、やはり護衛役を置いていって正解だったみたいだな。
完治していない身体を支える杖代わりに使っていた〈吸血皇杖カーメリア〉の【吸血領域】を発動させ、周囲の血をカーメリアに吸収させていく。
腹部の穴を塞ぐ治療にも【吸血領域】を使っており、その際にはウーの血液を使用した。
ウーの血液だけでは最低限の治療しか出来なかったが、この場に流れている大量の血液があれば、未だに一部がグチャグチャな体内を完全に治療することができる。
カーメリアに吸収し貯蔵した血液を消費して俺の体力を回復させる。
その体力の回復に応じて重傷部分から順に怪我が治っていった。
「……ふぅ。治療完了っと。漸く一息つけるな。リリアの怪我も治すよ」
「ありがとうございます」
リリアの身体に触れると、第3層能力【属性変換】で生み出した神聖属性魔力でリリアの身体を癒して彼女の怪我を治療していると、影の騎士達が略奪者達の死体を持って帰ってきた。
略奪者1人あたり2体の影の騎士を送り込んだため、結構な数の影の騎士がいるな。
死体を地面に置いたら略奪者達の装備と所持品を剥ぎ取るよう、魔法的な繋がりを通した思念で影の騎士達へ追加の指示を出した。
そうこうしている間に、最後まで残った略奪者も影の騎士に倒され、クエスト完了を知らせるウィンドウが目の前に現れた。
──クエスト『略奪者達を倒せ』が達成されました。
──達成報酬としてスキル【獣身化】、スキル【魔法の心得】、スキル【武術の心得】、スキル【駿脚】、各種能力値+5を獲得しました。
──怜悧な戦術家であることを示しました。
──不屈の精神を示しました。
──強敵にも臆さない勇猛さを示しました。
──特別報酬:スキル【思考乖離】【不屈】【勇猛果敢】
──条件が達成されました。
──スキル【怪力】【鉄身】【駿脚】が統合され、スキル【身体強化】を獲得しました。
──条件が達成されました。
──スキル【獣身化】【破壊本能】【魔法の心得】【武術の心得】【不屈】【勇猛果敢】が統合され、スキル【勇猛戦煌の英雄】を獲得しました。
クエスト報酬はまずまずといった感じだが、その報酬によって発生した回帰後初めてのスキル統合現象の結果の方が凄かった。
【身体強化】についてはいつか取得できると思っていたので特に言うことはないが、【勇猛戦煌の英雄】の取得に関しては予想外だった。
「んー、ンン。なるほど?」
この【勇猛戦煌の英雄】は覚醒者達の間で俗に〈ユニークスキル〉と呼ばれている特殊なスキルだ。
Sランク以上のスキルがユニークスキルと呼称されているのだが、スキルランクは〈月神の賢眼〉などの鑑定系アーティファクトや一部の鑑定系スキルでなければ分からない。
なお、前世では鑑定宝玉の中でもオリジナルである〈月神の賢眼〉に近い鑑定能力を持つ、高級モデルの鑑定宝玉でなければスキルランクは分からなかった。
現時点では鑑定宝玉は存在しないため、実質的に一部の鑑定スキル持ちの覚醒者に頼らなければランクを知ることはできない。
自分の所持スキルの価値を知る機会を多くの覚醒者達に与えるという意味でも、天城コーポレーションにはなるだけ早く鑑定宝玉を開発してもらいたいものだ。
「【煌獣人化】」
【勇猛戦煌の英雄】に内包されているスキルである【煌獣人化】を発動させると、全身が光属性のオーラに包まれた。
スキル名に〈獣〉という字が入ってるので、元になった【獣身化】みたいに獣頭人身になるかと思ったが違うようだ。
「く、クロヤさん。それは……」
「あ、この姿のことか? 実はさっきスキル統合が発動してな。その結果のスキルなんだが……えっ、何その顔?」
リリアの方を見ると、彼女の顔が控えめに言ってニヤケ顔、控えずに言ってヤバい顔をしていた。
何となく湿度の高い目で見られている気がしたため、彼女の視線が向けられている先の自分の頭頂部に触れてみるとナニカが生えてた。
〈月神の賢眼〉の空間認識能力で今の自分の姿を確認してみたところ、【煌獣人化】で起きた変化は光属性のオーラだけではなく、黒色だった毛髪が白銀色になっており、更には犬か狼らしき獣耳が生えていた。まぁ、たぶん狼だろう。
元の耳は変わらずあるため、四つ耳になっているようだ。
「なるほど。獣人、ってそういう意味か」
「クロヤさん、コスプ、えっと、写真を撮ってもいいでしょうか?」
「リリアも同じような格好をして写真を撮らせてくれるならな」
「良いですよ」
「即答かよ」
意図せずリリアの嗜好を知ってしまったが……まぁいいか。
【勇猛戦煌の英雄】には【煌獣人化】のスキル以外にも内包している力があるみたいだが、それらも含めたスキルの検証は後日にしよう。
──特殊条件〈光の恩寵〉が達成されました。
──スキル【聖光魔法】を取得しました。
普通の覚醒者と同じように条件を満たすことでスキルを取得したのは回帰してからは初めてだったが、なんだか素直に喜び難いのは何でだろうな……。
「あ、装備の剥ぎ取りが終わったみたいですよ」
「……おう」
リリアの何事もなかったかのような態度に釈然としないものを感じつつ、【捕喰ノ牙】でグラトニアを具現化し、略奪者達の死体を喰わせて証拠隠滅を行う。
【煌獣人化】を解除して元の身体に戻ると、リリアの残念そうな声が聞こえた気がした。
取り敢えず、俺もリリアも防具がボロボロなので、目立たないように略奪者達の装備にあった地味なローブとマントをそれぞれ纏った。
死体の処理が終わり次第、何食わぬ顔でダンジョンを出るとしよう。
当面の危機は脱したが、また同じようなことが起こる可能性があるので、次はもっと上手く対処出来るように今以上に地盤を固める必要がある。
ま、それはそれとして、今回の戦いで疲れたので、暫くはゆっくりするとしよう。
☆これにて第一章終了です。
現代ファンタジーな世界となった地球に生きる主人公の回帰物でしたが如何だったでしょうか?
他作品同様のチート主人公ですが、他と比べれば結構控えめなんじゃないかなぁ、と思っています。
いつまで毎日更新できるか分かりませんが、二章でも引き続きお付き合いいただけたら幸いです。
ここまで読んで、この作品を面白い・面白くなりそうと思われましたら、お気に入り登録をして頂けると大変ありがたいです。
更新を続ける励みになります。
どうぞよろしくお願い致します。
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