新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第十一話 エンハンス

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 ◆◇◆◇◆◇


 スラム街の新興マフィアであるドランクタスクのアジトを1つ2つと順調に潰して回る。
 2つ目のアジトを潰しても依頼のターゲットに遭遇できず、仕方なく3つ目のアジトの襲撃へと向かった。
 そろそろ亜空間ポーチの中に戦利品が入らなくなることを心配しつつ、建物の屋上の物陰からそっと顔だけを出した。


「流石に自分達が襲撃を受けていることに気付いたか」


 今いる建物から少し離れた場所にあるドランクタスクの3つ目のアジトの様子を窺う。
 遠視ゴーグル越しの視界の中には、アジトの周囲に大勢の構成員達が武装した上で待ち受けている光景が映っていた。
 どいつもこいつも目を血走らせてアジトに近付く者がいないか警戒している。


「大体50人ぐらいか」


 ここまでで獲得した武装を振り返る。
 集団を一掃できそうな爆弾があるが、ターゲットの確認をしなければならないのでアジトを丸ごと爆破する手段は使えない。
 入院する前の装備なら真っ向から挑み勝てただろうが、流石に今の装備であれだけの数とやり合うのは無理だ。


「まぁ、今日中に潰さなきゃいけないわけでもないし、連戦して疲れてるから明日以降でも、っていうタイミングで現れるのかよ」


 アジトの廊下を歩く人影が窓から見える。
 1人は成金のような趣味の悪い格好をした中年人族の男で、その人族を護衛するように付き従う武装した大柄の虎人族の男。
 この虎人族の男が探索者協会で受けた依頼のターゲットだが、もう1人もある意味ではターゲットだった。


「はぁ、運が良いのか悪いのか」


 遠視ゴーグルの視界にターゲットを収めたまま、端末から伸ばしたコードを遠視ゴーグルの横に接続する。
 視界内に端末との接続が完了した通知が出たのを確認すると、記録を開始した。


「えー、依頼目標である探索者ターゲル・トアンラックの姿を確認した。また、賞金首リストに載っているナリク・キンバットの姿も共に確認したので、纏めて狩ることにする。トアンラックの犯罪行為への加担の真偽については、違法奴隷商キンバットと行動していることで確認が取れたものとする。両者の死体を映像に納められるよう努力する。記録終わり」


 端末に証拠映像の記録を撮り終えると、コードを外し、端末に保存した映像を自宅の設置型端末に転送する。
 これで万が一にも端末が壊れても大丈夫だろう。


「さて、後回しにも出来なくなったし、今から動くしかないか……メタトロンに頼るとしよう」


 同化率が進み兼ねないので多用したくはないんだが、現状を打破するにはメタトロンを使った方が確実だ。
 どのみちこの機能のテストもしないといけないと思っていたのでちょうどいい。


「ふう……〈強化エンハンス〉」


 天機使シリーズに共通する基本能力【強化】を発動させた瞬間、体内の機神粒子特殊ナノマシンが一斉に活性化する。
 身体能力の大幅な強化に加えて五感の強化、そして思考速度の強化など、人体が有する凡ゆる機能が強化されたのが分かった。
 包帯を捲ってみると、【強化】を発動したことで皮膚のすぐ下に電子回路に似た光の筋が走るようになっていた。
 一部の高性能サイボーグ義肢にも似た状態のものがあったが、もしかしてアレほどの性能を発揮できるのだろうか?


「おお……コンクリートが作りたての泥団子のようだ」


 近くのコンクリートの壁を指先で抉ってみたところ簡単に穴を空けることができた。
 これなら素手でも鏖殺できそうだ。


「とはいえ、初手で数を減らした方が楽だよな」


 2番目のアジトに停めてあった車に設置されていた重魔導ライフルを亜空間ポーチから取り出す。
 設置型なだけあって一般的な強化服による身体能力強化程度で手に保持して扱えないほどに重いが、今の身体能力ならば扱えるだろう。
 パワーライフルと呼ばれる系統の銃器であり、魔力を用いた特殊機構によって銃弾1発あたりの威力を引き上げられているのが特徴だ。
 実弾でも魔力弾でも使用可能だが、実弾が装填された重魔導ライフル用のドラムマガジンが幾つかあったので実弾を使うことにした。


「出来る限り近付くか」


 【隠密】で気配を殺しながらアジトへと近付いていく。
 移動しながら通常のライフルのように取り回せることの確認を済ませると、物陰に隠れたまま重魔導ライフルを構え、引き金を引く。
 魔力によって機能する特殊機構が銃弾の威力と弾速を強化し、その射線上にある全てを貫いていった。
 強化された銃弾に撃ち抜かれた人間や物体は全て一撃で破砕されており、その威力は人間の胸の中心にマトモに当たれば上半身が丸ごと弾け飛ぶほどに凄まじいものだ。

 発砲時の反動をメタトロンの【強化】で大幅に強化された身体能力で受け止めると、引き金を引きながらアジトの敷地内へと突入する。
 1発撃つ度に射線上にいる敵は全て即死か瀕死の状態になるので、見る見るうちに敵兵が減っていく。
 本来は荒野にいる大型モンスターなどとの戦闘に使う設置型の武器なので、このキル速度は当然の結果だ。

 敵も一方的に狩られるばかりでなく、近接攻撃や銃撃、攻撃魔法などの遠距離攻撃で反撃してきた。
 【強化】によって加速した思考の効果によって、それらの攻撃は本来の動きよりもゆっくりに見えている。
 身体能力も上がっているので、余裕を以て攻撃を躱わすことができていた。


「バッ!?」


 放たれてきた魔法の火の玉が撃ち抜かれ消滅し、その先にいた魔法使いの胴体も消し飛んだ。
 その魔法使いを最後にアジト前で待ち構えていた敵集団の掃討を終えた。


「流石の殲滅力だったが、回収できる物はほぼ無さそうだな。戦利品は今の魔法使いが持っていたマジックアイテムの腕環ぐらいか。後で機能を調べてもらうか」


 屋内での戦闘で使うには明らかに過剰な威力なので、新しいドラムマガジンに交換してから重魔導ライフルを亜空間ポーチに収納した。
 【強化】によって気配感知能力も強化されており、その範囲はアジトの隅々まで網羅していた。
 エントランスで俺を待ち構える敵の気配を感じつつ、扉を蹴り飛ばした。
 蹴り飛ばした扉を敵にぶつけて機先を制してから、ベルベットと実体刀を手にして躍り出た。

 
 
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