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第十二話 強化と支配
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「──チッ。まさか無人兵器とはな。スポンサーはどれだけ投資してやがんだ」
スラム街にあるとは思えないほどに豪華な内装を持つドランクタスクのアジト。
その中にある大広間に入った瞬間、敵集団だけでなく人の操作無しに自律的に動く無人兵器が待ち受けていた。
兵器であるため当然ながら武装されており、空中を飛び交いながら銃弾をばら撒いてくる。
頭上からの攻撃を走って躱しながら構成員達の攻撃も回避し続ける。
メタトロンの基本能力【強化】で跳ね上がった身体能力のおかげで、攻撃を避けること自体はそれほど難しくない。
逆に敵の攻撃を避けながら反撃し、敵の数を減らしている。
だが、空中にいる無人兵器は未だに一機も撃墜していなかった。
「機械的な動き……やはり遠隔操作じゃないな」
無人兵器に向けてベルベットの引き金を引くが、無人兵器は空中に浮かぶ球体の身体を機敏に動かして全て回避した。
銃弾の弾道の軌跡を完全に見抜かれており、その反応の的確さから人が遠隔操作するドローンではないことは間違いない。
構成員へと肉迫して取り付き、敵を盾代わりにして無人兵器に攻撃してみると、無人兵器の攻撃は止むことが分かった。
このことから無人兵器は敵と味方の判別が付いていることと、ドローンではなく無人兵器であることを確信した。
やろうと思えば破壊できるが、今の装備では無力化はできても無傷とはいかないだろう。
無人兵器が空中タイプでなければまだ楽だったんだがな……。
「はぁ。ま、超高価な無人兵器を手に入れられると思えは、身を削る価値はあるか」
遮蔽物に使っていた大広間の柱の陰から飛び出すと、視界の中に全ての無人兵器を映す。
俺の意思に反応した体内の機神粒子が活性化するのを感じながら、固有能力を発動させる。
「〈強化支配〉」
天機使シリーズ共通の基本能力【強化】で強化されるのは身体能力だが、この身体能力には体内の臓器なども含まれている。
体内で生体活動を行う関係上、ナノマシンの分類は臓器に含まれている──勿論、厳密には違うが──ため、【強化】による活性化は特殊ナノマシンである機神粒子にも適用される。
機神粒子を使って機神粒子を強化した場合に適用されるのは固有能力のみであり、今回の強化対象は固有能力【支配】だ。
「よし。成功だ」
構成員達からの攻撃は変わらず続いているが、空中にいる無人兵器の動きは止まった。
機械に直接接触して干渉するか、他の物体を経由することで間接的に機械への干渉を可能にするのが【支配】だ。
だが、【強化】された今の状態ならば、直接接触でも間接接触でもなく、ただ視認するだけで機械を【支配】することが可能だった。
通常時のように光の粒子の形で可視化されていないが、機神粒子の力は無人兵器へと一瞬で到達し、俺の支配下に置いていた。
ただし、これだけ強力なだけあって代償は決して軽くはない。
[〈代行者〉が超過稼働しました]
[適合者と〈代行者〉の同化が進みます]
[同化率1%→3%]
[現在の〈代行者〉の同化率は3%です]
強化された状態だからか、同化率が進んでも立ち眩みはなかった。
代わりに物凄く腹が減った。
おそらくは体内の機神粒子の数が減ったことが原因だろう。
先ほど隠れていた柱とは反対側にある別の柱の陰に隠れて一息つくと、懐から栄養バーを取り出して栄養補給を行う。
「殲滅しろ」
栄養バーを食べながらメタトロン越しに繋がっている無人兵器に指示を出す。
直後、空中の無人兵器が装備する銃火器の銃口が地上へと向けられ、味方であるはずの構成員達へと一斉掃射を開始した。
的確な射撃と不意打ちにより、大広間にいた敵残党は断末魔の悲鳴をあげる間もなく肉塊へと成り果てた。
「あー、全然満たされねーな」
持ってきた栄養バーを次々と食べながら無人兵器に近付く。
地上に降りてきた無人兵器に触れて詳しい情報を読み込む。
【支配】で繋がっている今の状態なら直接触れなくても情報を読み取れるが、これ以上メタトロンを酷使して腹を空かせたくはない。
「……機体情報にスポンサーに繋がるようなデータは無しか。複数の企業産のパーツが使われているが、この中にあるどれか、というわけでもないだろうしな」
顎を掻きながらそう判断すると、全ての無人兵器を停止させる。
無人兵器は成人男性の頭部より一回り大きいぐらいのサイズなので、1機あたりの大きさは大したことはない。
ただ、全部で4機ある無人兵器の全てを持ち帰るには、今使っている亜空間ポーチのサイズでは余裕で収納容量が足りなかった。
「現金や弾薬、重魔導ライフルは残して、それ以外はここに置いていくか」
ターゲットの1人である違法奴隷商キンバットは金持ちだし、きっと亜空間ポーチのような収納アイテムを持っているだろう。
それを使って帰りに回収すればいい。
「残りの数は……30人か。ターゲット共は逃げ出していないようだが、これ以上状況が悪くなれば脱出しそうだな。もう少し急ぐか」
凄惨な有り様の大広間から視線を外して先に進む。
ターゲット共がいる場所までの最短ルートと敵の気配の位置を今一度確認してから、廊下を駆け出した。
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