新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第二十話 スキルと特殊技能

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 ◆◇◆◇◆◇


「──このまで使うつもりはなかったんだけどなぁ。やるわねぇ、ディアボロ」


 スキル。
 ダークエルフや鬼人族といった人族とは異なる人間である〈新人類〉にのみ発現する特殊能力の総称だ。
 旧人類である人族の俺にスキルが発現することはない。
 生まれ持った才能や培った技量が〈特殊技能〉として形になることはあるが、特殊技能はスキル未満の性能しかなく、最大のAランクでも同名のスキルの劣化版だ。
 例を挙げれば、特殊技能【索敵:A】は敵の気配の位置や動きを把握することができる。
 一方で、スキル【索敵】は敵の気配の位置と動きを把握できる上に、その対象の体力や魔力の残量などといった詳細な状態までもを、肉眼で直接見ずに把握することが可能だ。

 特殊技能がスキルに勝っているのは、使用する際に魔力を消費しない点だけ。
 そのメリットですら、一部の特殊技能を除いて魔力の代わりに集中力という名の精神力を必要とするというデメリットで殆ど相殺されている。
 まぁ、精神強度次第ではただのメリットになるのだが、やはりスキルに勝るモノはないだろう。

 多くの旧人類人族が求めるスキルは特殊技能と違って多種多様だ。
 アザカの言葉を信じるならば、目の前で彼女の身が鎧のように纏う濃密な魔力の発現は、マジックアイテムの能力ではなく、彼女自身が持つスキルの効果によるものらしい。


「いくわよ?」

「ッ!?」


 一瞬ですぐ目の前に現れたアザカが横薙ぎに魔剣を振るってくる。
 咄嗟に光波シールドを発生させるが、魔剣の斬撃を止めることができたのは数瞬のみ。
 1秒と保たずに光波シールドが破壊されてしまったが、メタトロンの【強化】で思考速度も強化されている俺にとっては充分な時間だ。
 身体を仰け反らせて斬撃を躱し、反撃にガラ空きの脇腹へと拳を振り抜いた。


「チッ!」


 反撃のタイミングは完璧だったが、アザカが纏う濃密な魔力の鎧は高い身体強化を齎すだけでなく、鎧の見た目通り高い防御力まで有していた。
 魔剣を振り抜いた体勢から繰り出されてきた肘打ちを腕でガードする。
 直接受け止めた閃殻闘手が軋み、ビシッという亀裂が入ったような嫌な音が鳴った。
 メタトロンの【支配】で手甲型機巧装備である閃殻闘手の状態を確認する。
 破損率17%ならば、まだ各種機能は使える。
 だが、破損率が30%を超えると使用できなくなる機能が出てくるだろう。
 ならば──。


「リーダーを連れて遺跡を脱出しろ! 邪魔だ!」

「ッ、承知した」


 外部参加組で生き残っている中で唯一の味方である寡黙男──名前は覚えていない──にレイジを連れ出させる。
 寡黙男は片腕を失っているが、両足を斬られているレイジよりかはマシだ。


「あ、困るわ。ソレ、依頼対象なのよ」


 俺がレイジを逃がそうとしているのに気付いたアザカが、本来の依頼のことを思い出し、レイジを殺すべく駆け出した。
 その動きを予測していたので、寡黙男に声を掛けた時点で既にレイジに向かって走っていた。
 予め動いていたおかげでレイジとアザカの間に入り込むことができ、防御が間に合った。


「ねぇ、ディアボロ」

「なんだ」

「ソレの首を持っていくだけで私が幾ら貰えると思う?」

「さてな」

「なんと1000万エィン。凄い金額だと思わない?」

「ッ!?」


 寡黙男が担いでいるレイジへの攻撃を防ぎながら聞かされた金額に、思わず身体の動きが止まりそうになった。
 慌てて気を取り直して、アザカの攻撃を防ぎ続ける。


「私に協力してくれるなら400万エィンあげるわよ。どう? 遺跡探索の依頼報酬の倍の金額よ。オマケで私のことを抱いてもいいわよ」

「……そいつは魅力的だ。だが、断らせてもらう」

「あら、この提案で揺らがないなんて。少しショックだわ」


 いや、メチャクチャ揺らいでますけど?
 金銭欲も性欲も凄く反応してるし、一瞬真面目に悩んでしまった。
 借金を返して余りあるし、最近忙しくて溜まっていた欲求まで解消できる。
 これで揺らがないほど無欲ではないし、枯れてもいない。
 だが、依頼人を裏切るような不義理を働く悪人になったつもりはない。


「この業界は信用が命なんでな。依頼人を裏切ったりはせんよ。彼は依頼人の縁者だろうから尚更な」

「あら、気付いてたのね」

「まぁ、周りの反応から薄々な」


 未発見遺跡の探索隊のリーダーを務めるからには、依頼主の組織の中でそれなりに高い地位にいるに違いない。
 あとは、探索隊が持ち込んだ機器を介して得た情報と合わせて答えを導き出しただけだ。

 レイジと寡黙男が中央管理室から脱出したのを【索敵】で理解する。
 アザカも戦いながら俺の背越しに直接確認したようで、お互い同時に距離を取ってから動きを止めた。


「地上に残っている連中は、今頃時限式の撒き餌で引き寄せたモンスターにやられているわ。逃げ場はないのに無駄な抵抗だこと」

「俺がオマエに勝てば解決する話だ」

「確かにそうね。モンスターに喰われたら殺しの証拠が残らなくなるし、そろそろ終わらせましょうか。起きなさい──カルグラム」


 アザカの呼び掛けに応じて魔剣の形状が長剣から刀へと変化する。
 魔剣の変化と同時にアザカから放たれるプレッシャーも増した。
 このままだと碌な抵抗もできずに負けてしまうのは間違いない。
 同化率が怖いが、死んでは元も子もないので、俺も切り札を切るとしよう。


 
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