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第二十一話 コントラクト
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「──〈契約〉」
俺の切り札、メタトロンの2つある固有能力の1つ【契約】を発動させる。
直後、一瞬で距離を詰めてきたアザカが刀形態になった魔剣カルグラムを振り下ろしてきた。
その一撃を素手で受け止めた
「ッ、グッ!?」
俺に起きた変化に驚愕するアザカを魔剣を受け止めた手とは逆の手で殴り付け、吹き飛ばす。
魔剣を止めた手も殴った手も共に元の手から大きく変化している。
人間の生身の手から機械の手のような見た目になっており、魔剣の斬撃を受け止めても傷一つ付いていない。
もう1つの固有能力【支配】で収集した機械データを、機神粒子にて俺の肉体に直接再現する。
それが固有能力【契約】の能力だ。
集めたデータを自分の肉体に反映することに合意する、という意味での契約なわけだが、その力はまるで機神化のようだ。
メタトロンの適合時にインプットされた情報によれば、【契約】使用後は特殊ナノマシンである機神粒子が元の生身の肉体を再構築してくれるらしいが、ハッキリ言って不安しかない。
そういった不信感もあって今まで1度も使ったことはなかったのだが、生きるか死ぬかの現状では使う以外に助かる道はないと判断した。
せめてもの保険として、万が一戻れない場合に備えて反映するのは両腕のみにしておいた。
「それは、戦闘型機巧腕? 今までは偽装機能を使っていたのね」
生身の腕から機械の腕に一瞬で変貌したのならば、そう思ってしまうのも無理はない。
メタトロンの固有能力を知らなければ、一瞬で機械化したなどと分かるわけがないだろうからな。
[初めての【契約】に成功しました]
[適合者と〈代行者〉の同化が進みます]
[同化率8%→13%]
[現在の〈代行者〉の同化率は13%です]
[同化率が10%を超えました]
[〈代行者〉の第1次制限が解除されます]
[〈代行者〉の基本能力【洞察】が解放されました]
[〈代行者〉の基本能力【亜空庫】が解放されました]
同化率が一気に上がったことによる強烈な立ち眩みに襲われていると、それを隙とみたアザカが再び斬り掛かってくる。
同化率上昇によって【強化】の思考速度の強化倍率も上がっており、先ほどよりもアザカの動きが目で追うことができている。
気分は最悪だが、今は生き残ることだけを考えるとしよう。
「出来ればコレを使わずに勝ちたかったんだがな」
「あら。もう勝った気でいるのねッ!」
強化された今の思考速度ですら目で追うのが困難なほどにアザカのスピードが上がった。
新たに追加された基本能力【洞察】を発動させ、アザカの動きを解析する。
その情報から予測されるアザカの移動先を先読みすると、進路上に向けて握り締めた機巧腕の拳を振り抜いた。
刀形態の魔剣カルグラムを盾にして機巧腕の一撃を防いだアザカだったが、その拳撃は先ほどと同様にアザカの身体を纏う魔力の鎧を破壊し、彼女の身体を吹き飛ばした。
戦闘型機巧腕〈ギガンテスアーム〉。
膂力と頑丈さに主眼を置いた機巧腕であり、生身の腕よりも高性能かつ非常に頑丈な機械式義腕だ。
今回の未発見遺跡の探索依頼の準備のため、コロニーの2等エリアにある機械式義肢専門店で実物に触ってデータを集めておいた。
2等エリアにある機械式義肢専門店屈指の高級品なだけあって、その性能は凄まじいの一言だ。
まぁ、それ以上に凄いのは勿論メタトロンなのだが。
「魔剣もそうだが、身体の方も頑丈なんだな」
ギガンテスアームの一撃を直接受け止めても折れない魔剣を携えたアザカが立ち上がってくる。
身体能力の差が機巧腕1つであっさり覆ったが、未だにアザカの身体は大きなダメージは負っていない。
新人類の鬼人族らしい身体の頑強さだが、魔力に関しては余裕がないらしく、拳撃による2度の吹き飛ばしの度に壊れた魔力鎧が展開されていなかった。
メタトロンは【洞察】で看破して得たアザカの身体情報によれば、彼女の魔力は残り2割を切っている。
俺の残りの魔力も似たようなものだが、【契約】の使用によって大量の機神粒子が消費されているため、カロリー的には余裕がない。
後々のことを考えるとそろそろ決めたいのだが、アザカが中々にしぶとかった。
あの余裕を見るに、まだ切り札がありそうな感じなんだよな。
他の部位も機巧義肢に置き換えて強化し、一気に終わらせるべきだろうか?
「ねぇ、ディアボロ。提案があるんだけど」
「なんだ?」
「このままだとお互いに無駄に潰し合うだけだから、もう終わりにしない?」
「決着をつけようということか?」
「違うわよ。ある意味では決着はつくわ。私の降参という形でね」
「ほう」
アザカからの予想外の提案に驚きつつ、顎を小さく動かして続きを話すよう促した。
「高額の報酬は魅力的だけど、それも命があってこそでしょう? 荒野を抜けてコロニーに戻ることも考慮すると、これ以上の消耗は割に合わないのよね」
「なるほど。だが、このまま逃がした先でリーダーを襲わない保証がないな」
「違う道を通ってから地上に脱出するから大丈夫よ。彼らと合流するつもりなんでしょう? 途中まで一緒に行って、私が道を外れれば問題はないわ」
「ふむ……」
さて、どうしたものかな。
このまま戦闘を続けても損失が大きいのは間違いない。
機巧腕から生身の腕に戻す分の機神粒子はストックしておく必要がある。
機巧腕のままにしておけば関係ないんだろうが、機神化が怖いから出来るだけ早く生身の腕に戻したい。
だが、不安要素を残したままというのが気に掛かり即断できずにいた。
「悩んでいるみたいね」
「そりゃあな。それだけでは決め手に欠けている」
「それなら、この条件はどう?」
そう言ってからアザカが提示した条件に思わず反応しそうになった。
約束を守られないリスクはあるが、ちゃんと守られれば俺にとっては利がある。
この場での口約束なので不安が残る点は変わらないものの、少し悩んだ末にその追加の条件を受け入れ、これ以上のアザカとの戦闘を終了した。
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