身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)

二十一話『一枚の写真』

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 軍艦が次々と解体され、義孝が艦長を務めた疾風も解体されることが決まった。

「え、じゃあ、これからは、陸勤務なんですか?」
「ええ、この休暇が終われば」
 花が黙る。
「花さん?」
「あの、で、いつまで」
「まあ、だいたいは仕上がっていますし、一ヶ月か二か月は軍令部で」

 ーーーー。
 涙が落ちる。本当に、戦争がなくなるのだ。

「花さん?」
「嬉しいです。また、しばらくは、お弁当を作ります」
「ええ、お願いします」
 泣き虫ですね、と義孝は笑った。
「さて、時間が惜しいですから、宿に行きましょうか。今回は招集はありませんよ」
「はい!」
 
「名残惜しくないですか?」
 花の言葉には、いつも驚く。
「無いとは言えません」
 義孝は答える。
「様々な海戦を、共にしてきた軍艦ですものね。淋しいのは当たり前ですね」
 花が微笑んだ。
「花さんは、すごいですね。私が自分で気付かない本音に、いつも気付いてくれます」
「余計なこと、でしたか?」
「いえ、嬉しいですよ。それだけ、花さんが私を愛してくれているという事ですから」
「・・・っ」
 花が頬を染めた。

「新しい艦艇の名前は、何というのですか」
「たしか・・・深雪です」
「みゆき?女の子みたい」
「はい、女の子みたいな名前ですけど・・・」

 ーーー妬かないで?

 囁かれて、ふしゅーっと茹で上がる。吐息が耳にくすぐったいのだ。
「やぁ」
「あ、すみません」
 クスッと、義孝が笑う。
「責任は、あとでたっぷり」
「いぁっ」
 花は耳を押さえた。
「外では、しないでぇっ」
「ふふ」
 愉しげに、義孝が笑った。

 意地悪っ!
 花が、恨めしそうに見つめた。

「はぁ、なんか・・・隠れ家みたい」
「鹿や猿が来るらしいですよ」
「鹿に、猿ぅ?」
 花が目を、きらきらさせる。
「興味ありますか?」
「はい!」
 とこパタと、後ろから追いかけて来る。

「ありがとうございます、義孝さん。いつも、色々と考えて下さって」
 涙でいっぱいの目で、花が笑う。
「気に入りましたか」
「はい!早く鹿に会いたいです」
「はは」
「あ、てことは・・・露天風呂ですか」
「まあ、そうなりますね」
 
 また、露天風呂かぁ。

 秋には絶景だろう。
 二人であれこれ想像しながら、受け付に向かった。

    ✣✣✣✣✢✢✢✢
「こちらが、時東様のお部屋となります。うちの旅館は各部屋が一つの建物ですので」
 女将が部屋の説明をしてくれる。
「こちらが寝室、あちこちの扉はお手洗いと化粧室、そして」
 格子戸をガラガラと開くと。

「このように、お風呂がございます。ちなみに、受け付の奥に大浴場もございます」
「なるほどぉ」
 花はぽぽと、頬を染めていた。
 寝室には寝台があり、ふかふかの寝具が敷かれていたのだ。

(・・何で、旅館って布団が敷いてあるの)

 昼間から意識してしまう自分が恥ずかしくて、花は俯いてしまう。

「食事はお部屋と食堂と、お部屋の二通りが選べますので。例えば今夜はお部屋、朝は食堂と選べますが」

 ーーーーえ?
 
 花は驚く。
 そこまで、してくれるの?

「花さん、どうしますか?今夜は部屋で食べますか」
「ーーーはい」
「では、朝は?」
「うーん、部屋?」
「そうですね、寝坊しても安心ですね」

 ふしゅーっ、朝寝坊。

 花が一人、百面相している。
 前回の旅行が思い出される。

「では、ごゆっくり、お寛ぎ下さいませ」
 女将が一礼して、部屋を出る。

 ぱたんと扉が閉じられ、花は我に返る。

「花さん、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが」
「だ、大丈夫です。日に焼けただけ」
「冷やしますか」

 ブンブンと、首を振る。

 ーー分かってるクセに。

 義孝は賢い大人で、忘れる筈がないのだ。

「義孝さんって、時々ですけど子供っぽいですよね?ヤキモチ焼いたり、意地悪したり」
「そうですか?」 
「お陰で、飽きが来ません」
「あはは。それはいいですね」
 義孝が笑顔になる。
「花さんが愛してくれるなら、私には嬉しいことです」
「意地悪です」
 袖を掴み、花が俯く。
「私ばっかり、こんなに好きで・・・義孝さんは楽しそうで、悔しいです」

 ーーーー私も、ですよ。

 呟く言葉に、花が顔を上げる。

「花さんだけでは、ありません。私も、同じですよ」
「え?」
「居ない間に、花さんに妙な奴が来ないか」
「いる訳ないです。義孝さんの杞憂です、私はモテませんし」

 なぜ、義孝が不安に思うのか。
 花には、さっぱり理解出来ない。

「今でも、花さんの記憶にいる、若い海兵です」
「あ、まさか・・・」
 ふい、と義孝がそっぽを向く。
「ふふ」
 花が笑った。
「やだ、あれは義孝です」

 花はバッグから写真を出した。

「見て」
「え?」

「あ」
 そこには、若い日の義孝がいた。
「義孝さんですよね、あと真ん中は磯崎准将」
 ふるふると、涙のあふれる瞳で、花が見つめている。
「麦わら帽子が、海に落ちる前に掴んでくれました。あの時は分かりませんでしたが、私・・・子供心に海兵さんに恋していました」
「まさか?」

 二人を掻き抱いて、笑う元上官。

「私の初恋は、やっぱり義孝さんだったんです。再会した義孝さんはあの日の優しいままでした」
 花は微笑んだ。

 ーーー私も『ぞっこん』ですよ!
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