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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
二十五話『恒例行事』
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花は涙を流し続けていた。
「私の母も、癌でした。まだ若いから進行が早くて、見つかった時、もう末期で」
ぐす、と洟をすする。
「お母さんが」
「はい、でも・・・ホントは私だけ、小さいから」
涙があふれる。
「すみません、隠したのは」
「分かってます。私が泣くからですよね。私を悲しませたくないから、義孝さんは言えなかったんですよね」
ーーーなんで、言ってくれないの?
母が死んだ時、花は父に言った。何も知らされず、すぐに元気になると信じていた。
騙された気持ちになり、心を閉ざした。
「准将は花さんには、言いたくなかったんだと。住まいも教えなければ、遠くて来れない。そう思えば、淋しくはないでしょう」
「それは、大人の理屈です。黙って居なくなられたら、捨てられた気持ちになります。だから、義孝さん」
「はい」
「黙って、いなくならないで。何の覚悟もないまま、置いて征かないで」
服に縋り、花が言った。
「わかりました、必ずどこへ征くか伝えます」
「はい」
花に笑顔が戻る。
花と義孝は歩き出す。
旅行はあと三日ある、暗い気持ちでは勿体ない。花と二人、案内板の前に来る。
「どこへ行きますか」
「うーん、えっと」
花は一つだけ、行きたい場所があると義孝に頼んだ。
❖❖❖◇◇◇❖❖❖
そこは、古い写真館だった。
「写真撮りますか?」
「え、いいんですか」
「はい」
「ありがとうございます」
花に笑顔が浮かぶ。
「毎年、春に写真を撮りましょう」
写真館で、義孝が提案する。
「え?」
花が目をぱちくりする。
「もう戦争はありません。これまでみたいに、危険に身を曝すことは格段に減るでしょう」
「義孝さん」
「いつか、子供が生まれて、成長して・・・増えたり、減ったり」
目が熱い。
ーーーズルいです。
嗚咽が漏れる。
どうして、この人は分かってしまうのか。
自分が欲しくて、焦がれていたものが・・・義孝にはバレてしまう。
「毎年、一枚。・・・いえ、誰かの誕生日とか、可能なら結婚記念日とか」
「ふ・・えっ」
しゃくり上げる。
「泣いたら、せっかく可愛らしい顔が台無しになりますよ」
ーーーはい。
涙を拭う。
「ずっと、一緒に生きてください」
「・・・はい」
「私があなたに望むは、それだけです」
「はいっ」
ーーーおや、いい顔だね。
写真館の店主が笑う。
「その顔を撮りましょうか」
店主の提案に、「はい」と花と義孝が答える。
十年先、二十年先・・・
命の限り、側にいて。
「ありがとうございます」
素直に伝えなくては
後悔はしたくない
「これからも、傍にいて」
傍らで、愛する人が微笑む。
「ええ、喜んで」
カシャ!
シャッター音が響き、フラッシュが瞬く。
「そのまま、動かずに」
「敵いません、義孝さんには」
ふふ、と花は微笑んだ。
「私が欲しいと思う物、その理由もお見通しですから」
「お見通しなら、苦労はありませんよ。花さんの考えや欲望を手に取るように知れたら、不安は無いですが」
「ぜ、全部?」
ふるっ、と花は怯えに似た、不安にかられる。
「全部、知られたら、私・・・嫌われちゃいます。たまに、破廉恥だと思われるんじゃないかと」
「ほう?」
興味深いとばかりに、義孝は顔を覗き込む。
「どんな妄想ですか?」
「い、いえ、ものの例えばの」
「なるほど、では後でじっくり・・・」
「いえ、ですから」
タジタジになり、涙目の花が可愛くて。義孝はつい、意地悪な質問をしてしまう。
「まあ、とにかく。不安や不満は、我慢せずに話して下さい」
「・・・不満だなんて、義孝さんは素敵な旦那様です!不満なんて」
「なら、不安は?」
「不安は・・・あるとすれば、この先に私と結婚したことを、後悔されないか、という事です」
「しませんよ」
義孝は真面目に答えた。
「花さんこそ、後悔しませんか?こんな年嵩の男を婿に迎えて・・・面倒くさいと」
「思いません!結婚は自分の意思で決めたんです。婚約前に、きちんとお答えしました。私は義孝さんと、幸せになります!って」
涙に潤んだ瞳に、目を細める。
「ならば、私とて後悔はありません。ただ、これからもヤキモチは妬くと思いますが」
「はい!どんどん、焼いてください。すべて、平らげます」
「あはは」
「ふふ」
仕上がりは明日の夕方です、と店主が告げる。
「義孝さんが焼いた餅なら、全部・・・食べます」
「あはは」
モチの種類が違うが、二人の気持ちは通じていた。
「なら、私は・・・花が練った餡を食べましょう」
「餡をですか?胸焼けがしますよ?クスッ」
「大丈夫です。花さんの手製ならば」
「ふふ。じゃあ、二人で丸々と肥えますか?」
「ええ」
それは、なんとも幸せな光景だと、二人は笑い合う。
「だから、傍にいて下さい。私の不安を丸っと包めるのは、義孝さんでないと」
「私の焼いた餅を、余さず食べてもらいましょう」
なんとも奇妙な話。
はたから見れば、意味がわからない。
だが、この二人は幸せなのである。
「私の母も、癌でした。まだ若いから進行が早くて、見つかった時、もう末期で」
ぐす、と洟をすする。
「お母さんが」
「はい、でも・・・ホントは私だけ、小さいから」
涙があふれる。
「すみません、隠したのは」
「分かってます。私が泣くからですよね。私を悲しませたくないから、義孝さんは言えなかったんですよね」
ーーーなんで、言ってくれないの?
母が死んだ時、花は父に言った。何も知らされず、すぐに元気になると信じていた。
騙された気持ちになり、心を閉ざした。
「准将は花さんには、言いたくなかったんだと。住まいも教えなければ、遠くて来れない。そう思えば、淋しくはないでしょう」
「それは、大人の理屈です。黙って居なくなられたら、捨てられた気持ちになります。だから、義孝さん」
「はい」
「黙って、いなくならないで。何の覚悟もないまま、置いて征かないで」
服に縋り、花が言った。
「わかりました、必ずどこへ征くか伝えます」
「はい」
花に笑顔が戻る。
花と義孝は歩き出す。
旅行はあと三日ある、暗い気持ちでは勿体ない。花と二人、案内板の前に来る。
「どこへ行きますか」
「うーん、えっと」
花は一つだけ、行きたい場所があると義孝に頼んだ。
❖❖❖◇◇◇❖❖❖
そこは、古い写真館だった。
「写真撮りますか?」
「え、いいんですか」
「はい」
「ありがとうございます」
花に笑顔が浮かぶ。
「毎年、春に写真を撮りましょう」
写真館で、義孝が提案する。
「え?」
花が目をぱちくりする。
「もう戦争はありません。これまでみたいに、危険に身を曝すことは格段に減るでしょう」
「義孝さん」
「いつか、子供が生まれて、成長して・・・増えたり、減ったり」
目が熱い。
ーーーズルいです。
嗚咽が漏れる。
どうして、この人は分かってしまうのか。
自分が欲しくて、焦がれていたものが・・・義孝にはバレてしまう。
「毎年、一枚。・・・いえ、誰かの誕生日とか、可能なら結婚記念日とか」
「ふ・・えっ」
しゃくり上げる。
「泣いたら、せっかく可愛らしい顔が台無しになりますよ」
ーーーはい。
涙を拭う。
「ずっと、一緒に生きてください」
「・・・はい」
「私があなたに望むは、それだけです」
「はいっ」
ーーーおや、いい顔だね。
写真館の店主が笑う。
「その顔を撮りましょうか」
店主の提案に、「はい」と花と義孝が答える。
十年先、二十年先・・・
命の限り、側にいて。
「ありがとうございます」
素直に伝えなくては
後悔はしたくない
「これからも、傍にいて」
傍らで、愛する人が微笑む。
「ええ、喜んで」
カシャ!
シャッター音が響き、フラッシュが瞬く。
「そのまま、動かずに」
「敵いません、義孝さんには」
ふふ、と花は微笑んだ。
「私が欲しいと思う物、その理由もお見通しですから」
「お見通しなら、苦労はありませんよ。花さんの考えや欲望を手に取るように知れたら、不安は無いですが」
「ぜ、全部?」
ふるっ、と花は怯えに似た、不安にかられる。
「全部、知られたら、私・・・嫌われちゃいます。たまに、破廉恥だと思われるんじゃないかと」
「ほう?」
興味深いとばかりに、義孝は顔を覗き込む。
「どんな妄想ですか?」
「い、いえ、ものの例えばの」
「なるほど、では後でじっくり・・・」
「いえ、ですから」
タジタジになり、涙目の花が可愛くて。義孝はつい、意地悪な質問をしてしまう。
「まあ、とにかく。不安や不満は、我慢せずに話して下さい」
「・・・不満だなんて、義孝さんは素敵な旦那様です!不満なんて」
「なら、不安は?」
「不安は・・・あるとすれば、この先に私と結婚したことを、後悔されないか、という事です」
「しませんよ」
義孝は真面目に答えた。
「花さんこそ、後悔しませんか?こんな年嵩の男を婿に迎えて・・・面倒くさいと」
「思いません!結婚は自分の意思で決めたんです。婚約前に、きちんとお答えしました。私は義孝さんと、幸せになります!って」
涙に潤んだ瞳に、目を細める。
「ならば、私とて後悔はありません。ただ、これからもヤキモチは妬くと思いますが」
「はい!どんどん、焼いてください。すべて、平らげます」
「あはは」
「ふふ」
仕上がりは明日の夕方です、と店主が告げる。
「義孝さんが焼いた餅なら、全部・・・食べます」
「あはは」
モチの種類が違うが、二人の気持ちは通じていた。
「なら、私は・・・花が練った餡を食べましょう」
「餡をですか?胸焼けがしますよ?クスッ」
「大丈夫です。花さんの手製ならば」
「ふふ。じゃあ、二人で丸々と肥えますか?」
「ええ」
それは、なんとも幸せな光景だと、二人は笑い合う。
「だから、傍にいて下さい。私の不安を丸っと包めるのは、義孝さんでないと」
「私の焼いた餅を、余さず食べてもらいましょう」
なんとも奇妙な話。
はたから見れば、意味がわからない。
だが、この二人は幸せなのである。
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